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第五話 初めての店で常連に。そして、初の共同作業。


「ヨウマさん。おはようございます」

「おはようリーネ」


8時くらいに起きて朝食をとるためホールに向かうとリーネがすでに準備をしていた。おそらく、俺よりも1,2時間は早く起きて手伝いをしていたのだろう。


「朝食ですよね?少しお待ち下さい」

「あぁ。わかった。そんなに急がなくてもいいからね?」

「はい。ありがとうございます」


丁寧にお辞儀をして厨房に入っていった。しばらくすると、料理をいくつか持って出てきた。


「ザナボアの肉と野菜の和え物と、マイスのスープ、ブリーサレムの炙り焼です」

「ありがとう。いただきます。まずはザナボアから」


(おお、これは)


ザナボアは昨日の狩りで見ていて臭みが強く固さうだなと思っていたが、鳥のささ身のような感じだ。フレーク状になっているため食べやすいし、臭みは刻んで混ぜられたケッソによって消えているようだ。マイスはとうもろこしのようだ。これにもケッソが少量溶かせれていて、とろみがついている。そして、


「次はメインの、おぉ!脂がよくのっていてうまい!」


ブリーサレムとは魚で見た目は鯛だが、食感や味はサーモンだ。表面がしっかりと炙られていて皮はパリッとしているが、身はほ程よく火が通っていてプリっとした食感がきちんと残っている。そして、かかっている醤油ベースの甘辛タレが何とも言えない。

(部屋も綺麗だし何より食事がうまい。この宿を選んで正解だったな)




「ご馳走さま。美味しかったよ」

「そうですか?ありがとうございます」


食べ終わるとリーネは食器を下げていった。


(そう言えば、今日の狩りはリーネも来る予定だけど戦闘服って持ってるのかな?俺は神様がくれたのもあるけど武器を買うついでに皮鎧くらいは買っとこうかな?)


「あのぉ?」

狩りについてあれこれと考えているとリーネに声をかけられた。


「ん?どうしたんだ?」

「狩りってもう行きますか?」

「あぁ、そのつもりだけど。リーネは?」

「はい。もう、手伝いは終わりました。杖や戦闘服に着替えたいので少し待ってもらえませんか?」

「分かった。俺も荷物があるし、店の前で待ってるよ」

「ありがとうございます♪」


やっぱり何か楽しそうだ。久しぶりの狩りだからかな?まぁ、その気持ちは分からなくもない。俺も昨日の狩りの最中はずっとドキドキしていた。


「おっと、俺も準備をしないと」


数分後、店の前で待っているとリーネが出てきた。部屋に行った時とは逆に肩を落として。


「どうしたんだ?」

「戦闘服サイズが合いませんでした」

「そう言えば…」


出てきた姿は非常に可愛らしい格好だったが戦闘には向いてなさそうな服だった。


「丁度、武器交換券を貰ってね。そのついでに皮鎧などを買う予定だったから一緒に行かないか?」

「本当ですか?ありがとうございます。行きます」


俺とリーネは昨日、受付嬢が教えてくれた店と行った。裏道を見つけるのは少し苦労したがそこからは一本道だった。


「ここかな?」


そこにはバルディーレと書かれた看板の掛かった店があった。かなり古びた感じだが、雰囲気的に良さそうなところだとなんとなく思った。


「多分ここですね。入りましょう」

「そうだな。すみませ~ん?」


カランカラン


中も外見と同様古びた感じだが、常連客が好きそうな酒場的何かがあった。

(ここは俺のお気に入りの店になりそうだ)


「いらっしゃい……、って見ない顔だな」

「はい。初めてで、ギルド館の紹介できました」

「なるほどな。それで、どんな武器を探してるんだ?」

「えっと、俺は剣ですね。どんなのがありますか?」

「剣か。お前レベルどれくらいだ?あと、剣を使ったことはあるか?」

「レベルは20で、剣を使ったことはありません」

「それなら、こんなのはどうだ?」


出してきたのはゲームの始めによく見る最初に持っていそうな剣だ。扱いやすそうではあるが、

(ううん、どうせならもっと格好いいのが)


「不満そうだな。試しにどういうのがいいか言ってみな。探してやる」

「本当ですか?それでは刀身が長く刃が片方だけのものってあります?」

「あるにはあるが、変わったものを欲しがるんだな。探してやるがあれは扱いにくいぞ」

「大丈夫です。それでお願いします」


しばらくすると店のおじさんが剣を持って出てきた。


「これは刀っていうらしい。だが、本当にこれでいいのか?」

「はい!これがいいです」

「変わったやつだな」

「それで、これはいくらしますか?」

「金貨1枚だが、払えるのか?」


思っていたよりも高かった。交換券で買えるかなと思っていたが考えが甘かったようだ。


「これと銀貨5枚ってできますか?」

「これは武器交換券か?久しぶりに見たな。これはお前さんが貰ったものだよな?」

「はい、そうですが?どうかされたんですか?」

「いや、レベル20のルーキーが持ってきたことは無かったんでな。……、ん?お前……ヨウマか?」

「そうですけど………、何で知ってるんですか?」

「そりゃあ、半日でランクが上がったやつのことを知らん訳がないだろう。まさか、こんなところに来るとは思わなかったが。そうだな、この店の常連になってくれるってんなら銀貨5枚にまけてやろう。どうする?」


これは嬉しい話だ。元々入ったときに良さそうだと思っていたし、半額にしてくれるなら、


「はい。この店に入ったときに常連になるだろうなと思っていたので」

「ほう。それは嬉しいこった。よし、まけてやる。他に欲しいものはあるか?」

「皮鎧を下さい。あと、この子の分も」

「分かった皮鎧2つで銀貨5枚だ」

「ではこれで」

「えっ?ヨウマさん?自分の分は自分で買いますよ」


今まで静かに俺と店主のやり取りを聞いていたリーネだが俺がお金を出そうとするとそう言った。


「いいって。皮鎧くらいなら俺が出すから」

「ですが……」

「お嬢さん。彼氏ってのは可愛い彼女の前では格好をつけたいものなんですぜ?ここは黙って奢られときゃいいんですよ」

「か、彼氏!?」

「なんだ?違うのか?」

「違いますよ!」


急におじさんに彼氏と言われドキッとし咄嗟に否定した。その後でそのままでも良かったかなと後悔したのは別の話だ。

(多分リーディングとやらでリーネにはばれてるんだろうなぁ)

そう思いながら会計を続けた。


「そうかい。それはすまなかった。で、お金はどうんるだ?」

「俺が払います」

「分かった。交換券1枚と銀貨5枚、確かに受け取った。ほら、商品だ。嬢ちゃんも」

「ありがとうございます」


リーネは戸惑っていたがそれを受け取ってくれた。そして、買い物を終えて外に出ると案の定お金を返すと言ってきた。


「いいって」

「ですが……」


(ううん。すぐには折れてくれそうにないな。………、そうだ!)


「じゃあこうしよう。お金はいらないから、その敬語やめてくれないか。なんだか遠くに感じるから」

「そんなんでいいんですか?」

「あぁ、そんなんでいいんだ」

「わかりま……。うん、わかった!」

「ッッ!あぁ、ありがとう」


不意に見せた笑顔に心臓が跳ねて咄嗟に声が出なかった。


(やっぱり可愛いな。彼女にしたいなって、いかん!考えたら読み取られる。)


「もう、遅いですよ、ヨーマさん?」

「勝手に心読むのやめろよぉ」

「嫌です♪ヨーマさんの考え読むの楽しいですから」


急に雰囲気が変わりいっそう可愛く見えたがそのせいでさらに、心臓に悪そうだった。俺はこれ以上心を読まれないように話を変えた。


「そろそろ、狩りに行こうか?」

「………そうですね。行きましょうか」


なんとか話を反らし?二人でクエストを受注し狩場までいった。今日は昨日のザナボア討伐が無かったので近くにあったグロブディン討伐にした。グロブディンは殻を被った大きなトカゲのようなものだ。殻はかなり硬いと聞いたので斬れるかどうか心配だったがこの刀はなんということなく切り裂いてくれた。


「この刀すごいな」

「グロブディンを真正面から斬ってる人なんて初めて見た」

「そう?まぁ、斬れるからいいけど普通の剣じゃ折れそうだしな」


先ほどバルディーレで買ったこの刀は何の抵抗もなく簡単に魔物を斬っていった。しかも、刃こぼれはしてなさそうだ。


「それで、私は何をしたらいいかな?」

「そうだな?何が使える?」

「レベルが高くないからスキルもほとんどなくてリーディングと念話と小規模の索敵とヒールかな?あと、スロー」


ここは見晴らしの良い草原。しかも、相手は元々動きが遅いため索敵もスローも必要なさそうだ。そして、怪我もしていない。


「攻撃系の魔法を使えたら便利だから練習してみないか?」

「そうですね。ヨーマさんだけに任せるのも悪いし、私もせっかく冒険者になったのでやってみたいです」

「決まりだね。それじゃあ得意な属性って何かある?」

「ううん、光かな?あとは、風が少し」

「風だとあまり効きそうにないから光かな。そうだなぁ、こんなのはどうだ?」


俺はそう言って刀をしまい。空中に光の球や矢をつくって見せた。


「これがライトニングボールとライトアロー。……まんまだな」

「それくらいなら私でも出来るかな?………、えいっ!、、あっ、出来た」

「その調子。それで、それを敵にぶつける」

「うん、それっ!」


バリバリバリ

シュー


矢はスピードが速く当てにくいので外れたがライトニングボールは当たりグロブディンは感電さて倒れた。他の魔物と戦っているときに生きていて襲われたら危ないので一応首を落としておいた。


「えっと、証明部位は……、やっぱり甲羅か。どうやってとるかな?」

「これは尻尾のところを押さえて甲羅を持ち上げると」


ツルン


「おぉ!」


一瞬で甲羅が本体と離れた。甲羅の下にはプニプニとした皮膚が隠れており、はまっているだけのようだった。


「すごいね。俺だと強引に剥がすから、少し疲れるんだよな」

「私、証明部位の取り方はほぼほぼ覚えたので分からなかったら聞いてね?」

「それは助かる。ありがたく頼らせてもらうよ」


その後は、魔物が多いときは俺が前衛で刀を振りリーネが後ろから魔法で攻撃という形で戦い、少ないときは、俺が魔物を倒しリーネは甲羅を剥がしていた。後で俺もすると言ったが


「分担した方が効率がいいしね。魔法を使うと魔力が少なくなってそんなにたくさんは使えないから」


そう言って魔力回復がてら甲羅をせっせと剥がしていた。リーネは覚えが速く辺りが暗くなり帰る頃には矢も当たるようになっていた。


「そろそろ帰るか。そうだ、レベルはどうなったかな?……32か。昨日ほどは上がってないな。リーネはどうだ?」

「私もすごく上がってる!25だからランクは上がらないけどね」


普通の人よりは段違いの速さのようだ。リーネはサポートなので俺ほどは上がってないがそれでも、普通の攻撃系の人と同じくらい上がっている。ある程度甲羅を集めるとギルド館に行きステータスプレートを更新してもらった。ランクはG3+になり、色がさらに少し明るくなった。報奨は刀を買ったばかりだったのでお金にしてもらい、合計銀貨8枚をもらった。クエストも完了し報酬を二人で分けて宿に向かった。


「ヨーマさん、ありがとう」

「ん?どうしたんだ、急に」

「一人だと狩りにもいけないし、レベルも他の人だとこんなにも上がらなかったし、それに魔法の使い方を教えてくれたり。ほかにも、楽しかったから」

「いやいや、大したことじゃないって。まぁ、お礼はありがたく受けとるよ」

「うん」


(どうしたんだろう?なんか、暗い?)


初めは久しぶりの狩りですごく楽しそうにしていたのに今はどちらかというとなんだか辛そうな感じだ。そのまま雰囲気が変わること無く歩き続け宿の前に着くと人混みができていた。何事かと思い、人混みを掻き分けて進むとナタリーさんが倒れていた。


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