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遥かなる時の中で

 フォートは渾身の一撃で放つ魔力を02(ゼロツー)に直撃した。相手は避けることもなく、防ぐこともない。黒檀の女性は反撃とばかりにフォートと同様の魔力を応酬してくる。フォートは素早く魔力の無効化にする魔法を展開する。


 魔力を感じ取れるものだけは恐慌を起こすほどの力のやりとりを感じるはずだ。しかし、ふもとの人間達は僕達が大戦争をするだけのことが起きていることが感じ取れないだろう。あまりに魔力が巨大すぎてわからないのかもしれない。大津波の前触れとでも言おうか。


 僕達にとっては、高度どころか大災害に匹敵する攻防のやりとりなのに静かな戦いで単調にさえ見えた。


「これだけですか?」


 敵である02(ゼロツー)にさえも、生ぬるく感じているようだ。


「けっ、そっちのほうこそな」


 でも、フォートは内心は必死だ。僕には伝わっている。


 話は変わり、お互いに出方を伺っているようだ。単純な攻撃はどちらも通用しないといことか。単調ながら、お互いの出方次第で戦局が変わる。


「では、どのような死に方がいいですか? リクエストに応えますよ」


 02は切りだしてくる。そろそろ、流れを変えたいようだ。しかし、焦っている様子はない。あるいは、それをみせていないだけだろうか。


「死は自然に任せる。俺は死なんぞ意識しない」


「では、そうしましょう。大地の棺にお眠りなさい」


 大きな魔力が一瞬にして紡ぎだされる。


 カッと大地が光り輝くと地面が割れてフォート達を飲みこむ。


「まずいな……」


 フォートはそう言うと僕とフォートは分裂した。僕の心から生まれたフォートだが別物扱いで僕に肉体をあたえる。フォートの肉体大地に埋められていく。仲間たちもだ。僕は弾き飛ばされて取り残される。


「なっ」


 僕は唖然とする。あっけなくて絶望する間もあたえられない。でも、衝撃だった。


 僕だけが生き残ってもしかたがないのに。だが、僕は諦めたりはしない。02に対峙する。


「それが、本来のあなたの姿ですか」


「別人ではないだろ。姿も変わっていない」


 フォートと僕は精神が違うだけだ。見た目が変わるわけもない。


 そうとも、いえないこともある。精神が肉体を及ぼす。僕は貧弱に思われたのだろうか。


「明らかに弱体化しましたね」


「ああ、僕は弱い。だけどな、フォートや皆から力を受け継いたんだ」


「どこにあるのです?」


「心さ」


 精神は肉体を及ぼす。魔力だってね。ぼくは、それを信じている。


 02は動揺も馬鹿にもせずに落ち着いている。それ自体はどうでもいい。しかし、皆は埋められただけだと信じる。それを、助けるのは僕の役目だ。でも、早く助け出さなければならない。


「心は思えばなんだってできる。お前にだって勝つことはできる」


「それは、夢想というものですよ。試してごらんなさい」


 僕はありたっけの魔力を拳にこめて02に殴りかかる。実際にフォートと負けず劣らずの魔力を放つ。


 決め手は勝つビジョンだ。イメージをありったけ魔力に影響させるようにする。そして、02に具現するように最大の力をこめる。


「食らえ!」


 魔力が四散する。肉塊が破裂する。どちらが?


 僕の右腕が吹き飛ぶ。痛みさえしないが、一瞬でも動揺が走った。でも、諦めるわけにはいかないんだ!


「勝つ、勝つ、勝ってやる。絶対に勝ってやるんだ」


「哀れですね。でも、悪くないですよ。私が相手でなければ、貴方は役不足ではない」


――隼人(はやと)! 友を呼べ! お前の力はそんなものか――


 誰の声だ? 僕の頭の中に響いてくる。


――お前の弱点は諦め癖だ。一人で解決しようとすること――


 そうかも、しれない。こんな、頼りない僕に皆はついてきてくれた。それに応えなければならない。そうではない、皆を信じてあげなくてはいけない。分かり合ってなければならい。


 心はなんだってできる!


「うおおおお!」


 僕はありたっけの魔力を開放する。すると、地から魔力が噴出する。そこから埋められた仲間たちが地上へと飛び出してくる。


「フォート! 皆!」


 僕は歓喜に溢れた。心はなんでもできる。それは、兵器としてではなく、魔法薬の力だけではなく、僕本来の力を示したかったからだ。思いは遂げられた。いや、まだ戦いが終わっていない。結果で証明してみせる!


「少しはマシになりましたね」


 02は涼しげに動揺もせずに傍観している。だが、僕にとっては大きな前進になる。


――父としては息子にしてあげるのはここまでだな。さあ、――


「さあ、かかってきなさい。引導を渡すのはどちらでしょうね」


「わからない。でも、僕はまけない。いくぞ! おう! 相棒」


 僕とフォートは02に突撃した。遥かな時のなかで、僕はこの時ほど充実したことはないと思った。


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