私のコレクション
敵はアンデッドらしいが、僕は見たことは今までない。B級映画のゾンビくらいだろう。それでも、アンデッドと言えば伝わるのが不思議だ。生ける屍。シュロサーが言うには兵器の再利用が目的だということだが命をなんだと思っているんだ?
そもそも、祖国を暗躍している組織に人間味があるなんて僕には既に感じてはいない。ゲスなのか利己的なのか、計り知れない器があるのかわからない。ただ、僕達は僕という小さな器を通して反旗を翻しているにすぎない。全ては自由を手に入れる為。
その、自由を完全に失ったとされる使役された屍を見ることになる。敵は前衛が自爆人間で後衛は気配無き獣で展開されていた。無秩序に散開されている軍団は実は僕達を取り囲むように展開されている。だが、僕達は敵の各個撃破を望む姿勢は変わりはない。
「甘いのよ、兄さんは」
その声は屍を統率している人間。声の主は十分に知っている。
五百子だ。
「どう? 私のコレクションは? 腐った死体が動いているとでも思った? 人と呼べない異形を想像した? 残念、一度死んだという事実以外は普通の自爆人間ね」
確かに、男女入り混じった部隊は正常な姿をしている。気になるのは感情や気迫がかんじないところだった。シュロサー達はあの人間達のどの部分でアンデッドと判別したのだろうか。
「五百子……お前はこんな事まで関わっていたのか」
「そうよ。わたしは何だったってやる。なんだったって出来る。兄さんも私好みに手に入れることも」
「僕はお前の所有物じゃない」
「その通りよ。だからこそ屈服させるのが楽しみなの」
「二度も相対すると思わなかった。お願いだからこんなことはやめてくれないか」
「おねだりしても無理よ。でも、別のおねだりはすることになるんでしょうね」
五百子は何かを想像してから自分の世界にはいり、気持ちよがってクネクネ体を揺らす。
「それにしても、この陣形は下策ね。兄さんの部隊は少数精鋭であればこそ効果があるの。その陣形はね。でも、わたしはわざと分散したのは犠牲があっても確実に部隊全体を疲れさせる方法をとったわ。兄さんのこれまでの戦いは一気に相叩きする戦い方よ。兄さん自体のスペックが高すぎるからね。でも、散開したらいちいち一人ずつ何度でも本気で潰さなければならない。あの娘達に期待するのは無理よ。忘れたのかしら? あの娘達を編成したのは私よ。この部隊の実力は数ではなくて総合的な戦力で計算したわ。私達が50であれば兄さんたちは1ね」
「よく喋るな。それで僕が絶望したとでも?」
五百子はクスクスと笑う。その笑みが妖艶とも言えなくはないが。
「自覚がないの? 兄さんがいることで私達は勢力が1で兄さんだけの戦力で1000~10000。いえ、図り切れない差になる」
「それが、おかしいことなのか?」
「だって、兄さんは甘いもの。そこがたまらなくいいんだけどね。兄さんのとるべき戦いの一つとして。兄さんが全面で戦い抜いて残りは守られつつサポートすることね。兄さんは戦略とか思っているでしょうけど。生真面目に逐一全員に仕事を与えたこと。団結して弱いところを集中して潰す。そして、四散させて潰していくつもりでしょうが、それは逆に私達がやろうとしていること」
「……」
僕は言葉がでなかった。しかし、やってみなければわからない。などという駆け引きで戦闘はおこなえない。命がかかっているからだ。命を預かっているんだ。
「皆、退け。僕だけで戦う」
「フフフ。あっさりと認めている。論戦や士気力だけでも私の勝ちね」
「兄さんを一つ屈服させた気分だわ。最高!」
五百子は輝かしい表情している。僕は思いだした。かつて五百子が言ったことを。
『初めて出会った時から私は狂っています』
僕は、静かでおしとやかな優しい妹だと思いこんでいた。だから、この変貌はたまらなく辛い。しかし、なんだ? このたまらなく抑えきれない気持ちは。僕は震えている。
「芽生えてきたようね。腹違いとはいえ兄妹かしら。そうだ! 私のお気に入りのコレクションを見せなきゃ」
五百子はアンデッド兵に指示をだす。すると。六人の男女がでてくる。男一人に女が五人だ。問題なのは姿形が僕と五百子に似ていることだ。
「なんだ、これは」
僕は唖然とした。僕の似た男が五百子に似た女性に押し倒されていいように愛撫されている。
僕の似た男に五百子に女性たちが体を舐めたり触ったりするどころか、男の顔に女性の股間を埋めてこすったり、男の股間の方に顔を埋めたりとか、残りは手足に胸をおしつけたりなどした。
もう、やめてくれ。
しかし、この変態ショーに僕を含めて皆が心と体がたまらなく揺れ動いていた。
「ね、素敵でしょ?」
「快楽に身を委ねて、また覚醒するなんてことはないぞ」
「残念! 兄さんにいるフォートにもこの前のあいさつをしたかったのにね」
フォートならこの場を制することが出来るかもしれない。しかし、僕はフォートを都合よく呼び出したくない。あくまでも僕の力でどうにかするべきだ。
『甘いぜ! 相棒』
心の深淵から声がする。そして、僕の体は変異してくる。以前のような化け物ではないだろうが、別人へと。
僕はどうなってしまうのだろうか?
なんとか、続き書いた。時間を気にしなければ書くこと自体はできるんですが、意識すると手がとまります(^_^;)
近いうちに続きは書きますので読んでくださいね。




