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アンデッドの本懐

 (はるか)が出かけて一週間ほどたった。彼女は計画性と実行性が凄く、僕は彼女に頼ってばかりだなと思った。だからこそ、彼女の留守をしっかりと果すことに血を巡らせた。しかし、僕は迂闊だ。遙、彼女が僕以上に仲間の役割の重要性を担っている。その彼女が道中に狙われたらどうするんだ? 僕より先に削りに来たらどうするんだ? 迂闊だった。護衛を何人か連れて行けばよかった。しかし、彼女も考えるはずだ。なにか、安全面があるのだろうか。


「なあ、カナタ」


 僕は遙の従姉であるカナタに言った。


「遙が心配だ。今からでも追跡して遙を守ってくれないか?」


「む、構わない」


 カナタは少し考えてから承諾してくれる。この間はなんだったのだろうか? そうか。


「ごめん、それだと君を危険に晒すことになる。遙に合流すればいくらかは安全だけど、僕達は分散を極力避けたい」


「わかったようだな。そもそも、遙は決死の覚悟で単独で動いているのだ。それより恐ろしいのが、遙と連絡をとりあっている新垣(あらがき)だな」


「新垣君は凄いよ。敵地から動かずにして戦いの誘導しようとしている」


「あまり、動けないとは思うがな。それでも、私達が無事なのもこの二人がいるおかげだな。無論、お前の存在が大きいが」


「僕は、ただ、なりゆきに動いているだけ」


「そうでもあるまい。お前ほどの戦闘力を持つものなど普通はいない。だから、こうやって生き延びているし、敵もお前に目を向けている」


「僕だけが本当の利用目的なんだ。いっそのこと皆はぼくから離れれば安全かもよ」


 つい、僕は癖の様に卑屈に言ってしまった。どうしようもない性分だ。


「馬鹿を言え! 今更だ。私達は粛清対象だ。それに、皆はお前が好きなのだ。言わせるな」


 カナタは怒ってその場を去った。しかし、心配でしょうがない。僕は大将とかの器ではない。もう少し肝が大きい人間でいたかった。


 そんな、ことを嘆いても騒ぎは起こった。


隼人(はやと)! 大変だ。敵襲だ。その数は千を超える」


 僕達は精鋭といえる存在だが。数上は百もみたない小さな集まりだ。


「せ、千だと。魔法兵か? それとも普通に軍か自爆人間? 自爆人間は流石にそんなにいないはずだ」


「落ち着くんだ、隼人」


 伝令してきたのは僕達のなかで一番年長のシュロサーだ。分隊長を任せているお姉さんなんだが……この人にもフォートの件でお尻叩いたんだよな……。って。今はそんなことを思い出している場合ではない。


「奴ら、倉庫を開けた」


「倉庫?」


「知らないのか? 今まで遺体が残った自爆人間が眠る場所だ。アンデッドにかえて襲撃しようと進軍してきている」


「知らなかった。遺体すら武力兵器としてつかうのか。ゲスも極まったな」


「感情的になるな」


 シュロサーは僕を抑える。そして、話は続く。


「自爆人間だけじゃない。気配無き獣も当然襲撃している。それらもアンデッドのようだ。キ国もコ国も考えることは同じようだ」


「距離は? いま、どこまでいる?」


「人間にして半日の距離だな。アンデッドといっても色々だが伝言では意識はないらしい。アンデッド部隊を操作する者がいなければ街ごと無差別攻撃するだろうな」


 なんてことだ。この街の人達には迷惑をかけたくない。僕は打って出ることにきめた。


「アンデッドは分散して動いているそうだ。どうする?」


「一対多はだめだ。僕中心の撃破部隊と牽制部隊それに二軍を繋ぐ中軍を設ける。これは想定したはずなのですぐに編成できるよな」


「よし、斥候を数人残して全員を終結させよう」


 シュロサーは慌てずにきびきび動いた。この人も実務的で頼りになるなと思った。



 そして、街の郊外にある森に集まる。僕達は54人いる。それらが、隊列して密集できる場所をすでにつくってある。そこで、僕は皆の前に号令をすることになる。


 部隊は斥候隊が3人 左翼で前衛攻撃部隊が20人でリーダーは僕。右翼牽制部隊は20人でリーダーはカナタとシュロサー。そして、状況に応じて攻撃と牽制2部隊をサポートする中軍が残り11名でリーダーはエルマーとアルマーだ。


「皆、敵の数は途方もないが死力を尽くすより粘りが大事だと思う。生き残ること、無茶をせず確実に敵を削っていく。僕の頼りない士気で激を飛ばすこともできないが頑張ってほしい」


 と、僕はあまり隊長らしからぬ言葉を発したが皆は頷いてくれた。一人、シュロサーが手を挙げたので発言を許した。


「皆、わかっているとは思うが自爆人間の最後の本懐は無論爆発することだ。アンデッドがしようとすることは目標物と一緒に爆発することだ。その対象が隼人隊長かもしれないし、べつにあるかもしれない。その見極めを十分に注意することだ。わからなければ必ず距離をおけ、犬死だけは許さない」


 なんだか、遙に代わり、シュロサーが戦局を動かしている感じだが、頼もしいから安心する。僕は、いつでも出来ることを精一杯やるだけ。今回の戦いも無事にすむとよいのだが。


 それだけは、わからない。僕達は敵の方へと向かった。



スローペースですみません。頑張ります。

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