隼人かフォートか
深夜森の中で狂乱の宴は続いた。色欲の果てに得た物はなんだろうか?
「卑屈すぎだぜ! 隼人。お前は魔物の力とフォートを手に入れた。それ以上に何がある? それだけで十分だろ」
『君を生み出した償いはある。隼人は消える。フォート、君は自由に生きてくれ。僕が出来なかったことを君にしてほしい』
「はっ。嫌だね。俺はお前の最大の理解者だ。そして、俺は卑怯者だ。ちゃんとヒーローとして出番だけをとる非常にズルいやつだ。俺の出る幕でないところはお前が好きにやっていけよ」
そんな、都合のいいことがあっていいのだろうか。僕は利用される為に生まれてきた。価値は他人が決めること、僕はそれにあがいて逃げて出来たことといえば、遙を頼ること。エルマー、アルマーの姉妹を頼ること。カナタを頼ること。そして、フォートに委ねること。結局、なにも出来ちゃいない。高スペックだけの消耗品にその場だけの値打ちがあっても失えば未練なんて生まれてはこないだろう。僕はいなくていいんだ。
「いいか! 自分を諦めるな!」
『フォート……』
「なにがあってもだ。俺はフォートであることに絶望しない。隼人は隼人であればいい。そんなこともわからないのか? 隼人には隼人がやりたいようにしろ。俺は全て好きにやっていることなんだぜ。わかったか」
フォートの言うことが納得したわけではない。しかし、僕の肉体は涙した。体から流れる物は全て汚物だと思った。しかし、共有している肉体はフォートなのか僕の感情なのかわからないが熱いものが流れるのをとめられない。
僕は愚に劣る感情の一撃にさえ支配されているのか? それが悪いように思えない。
「フォート様!」
フォートにお仕置きされた女の子達さえ僕をみて泣き出している。なぜ、悲しいんだ?
「わからない? これだけ破廉恥な茶番をしたけどね。皆、境遇は同じよ。自由になりたい。フォートは下品だけど、なにか感情が移ったのよ。魂かしらね」
魂……。遙の言っていることがわからない。でも、言葉が違えども指を指す先は同じように一つの想いが重なっている様に思える。
「俺的には道だな。隼人なら自由。言葉の意味は全く違うが求める物は同じだ。自分を見失わない道標だ」
「この、下品なフォートにわかったような口をされるなんてね。でも、同感よ」
「なんだ? この女は! お前もお仕置きするぞ」
「残念。お仕置きしていいのは、フォートではなく隼人君ならいいよ」
お尻叩きなんて恥ずかしくてできないよ。今、確実に空気が変わっているしね。
「そりゃ、残念だな。隼人に譲るぜ。俺は深淵に戻るとする」
そういうと、フォートと僕は入れ代わった。ついでにというレベルじゃないが形容しがたい魔獣に変わった僕は人に戻っていく。こんな、都合のいいことがあるなんて。
「ふん、品がないくせにやることは優しくて親切なようね。隼人君の別人格は」
「別人格じゃないよ。フォートはフォートだよ」
「そう、そうね。フォートはフォートよね。私の好きな隼人君とは別ね」
「そこまで、言わなくていい」
しかし、僕を篭絡する為に結成された女の子達をどうするべきか。これも、遙が裏で稲垣君と戦力増強の為に送られてきたともいえる。だが、彼女達は僕ではなくフォートに心が動いたのだ。だけど、僕は僕の為に決断をする。自由を得るために。全ては僕の意思だと示すために。
「君たち、こんな僕だけど付いてきてくれる? キ国とコ国を操る人間を倒すために」
彼女たちは黙ってうなずいた。一人を抜かしては……。
「こんなの納得がいかない! 確かにフォートになった兄さんはたまらなく良かったわ。服従されたくもなった。だけどね、主導権は私にあるの。兄さんは私の物なのだから」
「五百子……」
お前は変わらないのか? それが、お前の真実の姿なのか。
「好きにしなさいよ!」
遙は激怒した。しかし、五百子はたじろぐこともなく、悪女の様にクスクスと笑う。
「好きにするわ。まだ打つ手はあるしね」
「本来なら部隊ごと逃げられることも可能にしてあるんでしょ?」
「できるわ。でも、この娘たちは無用だし。それに兄さんたちになついちゃったしね。私だけ帰国するわ」
そういうと、五百子はパンツの中から何の石かわからないが小さな宝石がでてきた。なんか粘っていて濡れているような。あの軽装なら隠しながら所持するにはそこしかないのか? 穴だろうけどそれ以上は伏せておく。
「もう、たまんない兄さんの時は隠しておくのに必死で快感だったけど」
五百子はうっとりと語っている。腹違いとはいえ、実の妹であることが複雑だ。好きであった時もあるが。本人が告白したように始めから狂っていたのだろうか。たまらなく、苦しい。
「五百子、いい子になってくれないか?」
五百子は興ざめして冷たい視線を送る。
「今の、兄さんはつまらないわ」
五百子は言い放つと魔法の石なのだろうか。光り輝くと瞬時消えていなくなる。テレポート関係の効果なのだろうか。
部隊長である五百子がいなくなると女の子達はホッとしたのかパンツから五百子と同じ宝石をお股から取り出す。頼むから僕が見ていないところでやってほしい。
「これは、大収穫ね」
遙は遙で策士の性質がぬけないようで50くらいの魔法石を手にして喜んでいた。
なにはともあれ、一時的にしろ、惨事は過ぎ去った。それも、一時の間でしかないのだろうが。
僕はフォートが言った。『自分を諦めるな』を強く心に叩きこんだ。それが、苦難に立ち向かう力となると信じているからだ。
一か月休んでしまいました(^_^;)
ブックマークされている方、申し訳ないです。
今後、ペースをあげていく。つもりです。
やることが一つだけじゃないと集中できない性格でどうしようもないです。
久しぶりで苦労しました。
感想をいただけると幸いです。