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ナイトメア

 僕は保健室から逃げた。どうやら追って来る者もいない。そもそも、何から逃げているのかがわからない。わからないことにしてほしい。肉を引き裂く音など保健室で聞きたくない。しかも、その行為が愛撫しているような声が漏れているなどと……。


 もともと僕は気分が悪いから授業は一時間サボろうとしていた。だから、教室に戻ることはない。保健室の惨状では落ち着かないので僕は気分を晴らしに屋上へと向かった。屋上も安全だといえるのかはわからない。


 屋上は見知らぬ女の子が先取りしている。どこか遠くを見つめている。こんな時間にいるのも妙だが、人の事は言えない。僕は声をかけることもなく、隣の金網に手をかけてグランドで体育をしている連中をながめた。特にみたい景観ではなかったが。


 スポーツをみるのは好きでも嫌いでもいない。よって運動も得意なわけではない。でも、まあ、気を落ち着かせるには見学も悪くなかった。地獄をみるよりかはいい。


 どうやら男子と女子とわかれて陸上をしているらしい。だいたいはかったるそうに適当に体を動かしているが中には真面目に授業を取り込んでいる人間もいる。いずれにしても平和だ。


「楽しい?」


「は?」


 問いかける女の子は幸が薄そうで儚い美貌だった。刹那的でもいうだろうか。そして、涙を流している。どういうことだろうか?


「なにか、悲しいことでもあったの?」


 対人が苦手な僕は勇気を振り絞って聞いた。しかし、しまったとも思ったなにかトラブルでもおきるのではと思ったからだ。


「もうすぐ、死が訪れてくる」


「病気にでもなっているの?」


「病気じゃないわ、それに私だけではない」


「どういうこと……」


 女の子はそっとゆっくりと指を指す。その方向には大きな黒い影がこちらへと近づいてきた。時は遅かりしと、警報が鳴り響き非難の注意がおきる。などということがおきない。なぜ? 空を飛ぶ鳥たちは必死にこちらへと羽ばたき逃げる。ということもおきない。どうしてだろう?


 黒い影は人型に似ているが浮遊しているのだろうか地響きが聞こえない。


「もしかして、君! あの生物が? なにかするとおもって屋上に逃げたの? 皆に知らせなきゃ!」


「誰も信じるわけがないでしょ」


 女の子は至って冷静だった。涙を流すくらいなら感情的な人間だと思うのに。


「そういう問題じゃないでしょ!」


 僕は急いでグランドまで走り、受け持ちの先生に知らせる。そして、職員室に行くまでに大声で叫び各教室に教える。


 しかし、誰も反応がない。まるで僕の言葉が聞こえないかのようだ。それでも僕は懸命に叫んでしらせた。


 だれも、反応しない。そして、グランドにたどり着いた黒い影は毛むくじゃらで姿がまるでわからないが口だけはむき出しになっている。


 目の前に怪物がいるというのに誰も気づかず食われていく。なのに、だれも反応がない。どういうことだ。僕はおかしくなってしまったのだろうか?


 どうしようもなくなった僕は、せめて自分だけでも逃げようと校門へと走る。


 しかし、校門には人が阻んでいた。


 新垣(あらがき)君と尾瀬(おぜ)さん、そして屋上にいた女の子だ。知り合いなのだろうか。


「おいおい、みんながひどい目にあっているのにお前だけが逃げるなんてなしだぜ?」


 その通りだ。だけど、皆は気付いてくれない。


「新垣君、君たちは見えるんだね」


「さてね、俺たちには幻視はみえないな。だけど、知っている」


「幻視?」


「ああ、最新の兵器で人に知覚さない生物らしいぜ。って新しい彼女に聞いた」


 彼女? 新垣君は屋上にいた女の子を抱き寄せた。そして、尾瀬さんという彼女がいながらキスをしている。性格には口移しだ。魔法薬だろうがいままで口移するのはなぜ。僕も昨日から尾瀬さん、五百子(いもこ)にされたが意味があるのか?


「俺達にはこれしか方法がないからな。頼むぜ、自爆人間」


「自爆人間って名前もしらないのかよ!」


「知ったとして、悪名しか残らない」


 僕の祖父が悪霊としてい祭られるように、自爆人間という存在自体が人には受け入れられていない。


「だからといって、人として扱っていいじゃないか! 新垣君はこんな人じゃないでしょ! ねえ? 尾瀬さん」


 僕は、尾瀬さんに救いを求めた。その気はなかったが新垣君に内緒のままで浮気してしまった尾瀬さんにだ。


無双(むそう)はこういう男よ。私もね。それより、引き留めたいなら私達を構っている場合じゃないでしょ」


 その通りだ。名も知らない女の子でだが、自己犠牲でことをすませるなんてしたくない。


 自爆人間とは言葉の通り魔法の力で目的物を破壊する爆弾。ただの特攻。そして、目的が達成するまで不死身(イモータル)で超人的な力を発する。僕は彼女の腕をつかもうとするが振り払われて吹っ飛ばされる。


「うわっ! イテテ」


 僕は大地にぶつかり少し気を失いそうになったが気合で起き上がり彼女を見つけようとする。しかし、すべて遅かった。突撃をするさいに怪物に両手でふさがれるが跳躍して腕に乗り、そして怪物の口の中にはいる。



 ゴゴゴゴゴゴ!




 激震が走る。そして大爆発がおきた。爆風で僕は吹っ飛ばされる。そして怪物が霧散し塵と化して空を覆いつくす。そこには少し放電もおきた。



 しかし、誰も気づかない。僕は愕然とした。疲れ果ててしまった。


 僕は、憤りをなんとか保つことで歩くことができた。僕にはやるべきことがわからない。どうして、そう思ったかわからないが帰宅してある人間を待つ。


 自室で気が狂うほどまっただろうか。アイツはやってくる。薬を投与しに。


 その間、ニュースや学校からの悲報をまった。親にも聞いたが怪物に食われるどころか、そこ人間がいることすら知られていない。最初から食べられた人間は存在もしていないようだ。因果すら消滅されるのだろうか。悲しみさえ誰も存在しない。僕と一部の人間以外は……。憎しみ、悲しみさえ、生まれない戦争が始まるのだろう。父さんに言われた。この件にはまだ、かかわるなと。酷い話だ。


 俺は被験体として生きていたほうがまだ、幸せだったのでは? 俺は惚けたアイツが来るまでは。


 ノックする音。五百子が訪れる。僕はのぞんでいるのか? 僕はそのまま五百子にベッドに押し倒される。きっと身近な人間に慰めて欲しいだけなんだ? そうだ。そうだよね。


 兄を無理矢理押し倒す妹との間に生まれるのは恋の始まり? 断じて違う。しかし、俺は抵抗することもなく薬を口移しされるのだった。


 今夜のみた夢は昼の続きで悪夢だった。妹の関係もそうだ。しかし、そんな世界に安住してしまっている自分がいる。


 最悪だ。

今は、ちょっと貯めていますが、遅筆にならないように頑張ります。


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