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次の戦いまでの幕間

 僕達は祭りをみてまわった。(はるか)は外出中なので誘えない。僕とカナタ、エルマーとアルマーの組にわかれて催しや出店を見て回る。べつに四人で行動しても良かったと思うけど、僕がハーレムのような状態だからな……。それに……。


「遙も誘いたかったな」


 彼女が好きと言うのもあるが、彼女が一番頑張っている。僕は機会があれば少しでもお礼をしたかった。


「私という女がいながら別の女の事をいうな」


 わかりにくい表情だが、カナタがご機嫌が悪く見える。


「いいじゃん。皆、一緒で。それより、カナタは僕を独占したいという気持ちがあるの?」


 僕は、少し意地悪く言う。彼女は動じていないようにみえるがすこしは揺れ動いているのがわかる。付き合って、少しはたったのでわかるようになった。彼女は照れ隠しと言うのをする。まあ、僕もするけどね。


「どうだろうな。しかしな、私と同様に遙、エルマー、アルマーもお前に想いを寄せている。だが、それを分かち合うなどと不自然きわまりないだろ」


 分かち合ったら四等分に引き裂かれかねない。地獄絵図だ。


「なんだか、怖いね」


 カナタは頷く。僕の想像がわかっているのだろうか? 冗談ではすまされないぞ。


「私たちは友達ぐらいの関係でよかったんだ。しかし、惚れてしまった手前、私も我慢できない」


 カナタは照れながら僕に身を寄せる。気持ちは嬉しい。有頂天なはずだ。しかし、他の女の子との手前があるので馬鹿丸出しに喜べない。


「複雑だな。みんな、一線引いてくれないかな」


「お前も初めて私と出会ったときにすぐに手を出しただろ。スケベが!」


 言葉攻めか? 罵っているようで意地悪して楽しんでいるようだ。


「あれは、戦闘上しかたないでしょ」


 僕は、それでも、弁解する。無駄だろうが……。


「責任は取ってもらうからな」


 責任って……。責任ってどういう形ですればいんだか。僕はしかたなくカナタを路地裏に連れ込もうとする。


「ま、ま、まて、気が早すぎる」


 基本的に冷静で動揺など表さないカナタが大慌てをする。なんだか可愛い。


「だって、君から誘ったんでしょ。責任とれって」


「そうだが、お前は見かけによらず大胆だな」


 カナタは掻いてもいない額の汗を拭う仕草をする。よっぽど驚いたようだ。やりすぎたようだ。ごめんなさい。


「結構、勇気をだしたんだけどね」


 それは、本当なので言う。そういうとカナタは真っ赤になり顔を下に向ける。


 僕達二人は気まずくなる。


「あ、あれだ、今は仲良くっついているだけでいい」


 向こうから持ち掛けてくれた。助かるよ。


「そうなの? それだけで物足りる?」


 だけど、自然に意地悪なのか重い矢理なのかわからないが言葉が出てしまう。


「い、いいから黙れ!」


 カナタはデレデレしながら怒る。面倒なことだ。


「お祭り」


「あ?」


 僕の端的な言葉にぶきっらぼうに応えるカナタ。


「僕はお祭りに参加するなんて初めてかもしれない。それにしても、祖国ではみかけない食べ物ばかりだね」


「む、私もお祭りは初めてだ。なんならデートするのも初めてだ。って、言わせるな」


 またもや、怒られる。僕にどうしろと。


 途中、この町の名物だという肉料理の盛り合わせを二人でわけあって食する。これが、とても美味しかったので、いつ帰ってくるのかわからないが遙の土産に持ち帰ることにする。


「ねえ、カナタって遙の従姉のお姉さんなんでしょ? 付き合いとかあったの?」


「子供のころはな、年下のくせにリーダーシップとかうまかったな」


「今と変わらなさそうだね」


「そうだな。で、目の前にいる女の話はふれないのか?」


 またもや、不機嫌そうになる。


「ごめん、カナタって子供のころからむっつり照れやさんだと思いこんでいるから」


「むっつり照れ屋さんってなんだ! 貴様なんぞはむっつりスケベだろ」


「オープンスケベよりましでしょ」


「どっちも、どっちだな」


 僕達は軽く笑う。話の内容はともかく、ちいさな幸せにいるような感じがした。次の激戦がはじまるインターバルに感じた。しかし、その待ち時間はなぜか高揚して緊張も走ったりするのだが。出かけるまえに(きざし)だと思われる生物をみてしまった。不吉を予告する兆。一年半後におこる戦争の前になにかがおきるかもしれない。


 僕達を迎え入れた街の人たちは小さな幸せをかみしめて生きている。まきこんではいけない。


「また、お前は考え込んでいるな。悪い癖だ」


「そうだね。無意味だね」


「そうでもないさ。私だって悩む。だけどな、お前と苦楽をともにすることが楽しみでもあるんだ」


「楽しみ?」


「お前は刺激的だ。そんなときに私は生きていると感じる。無用な恐怖もともに歩める。それどころか味方になるとさえ感じる」


「僕には理解できない感覚だな」


「そうだな」


「……」


 少し沈黙が走るがカナタが唾を飲み僕に告白する。


「もし、それが理解できた時、一番にお前と分かち合えるのは私だ。その時は全てを捨てて優先するのは私にしてほしい。愛している」


 わかりにく告白だが嬉しかった。だが、問題は山積みされている。


 遙との想いと五百子(いもこ)との問題がある。僕は素直に喜びを表現出来なかった。


「わかっている。お前の立場はな。応えるのはいつでもいい。今日は今日で楽しもう」


「ごめん」


 僕とカナタは手を握りながら、祭りを見て回るのを楽しんだ。幸せが破壊されるその時まで。

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