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エルマーとアルマー

 僕は帰宅すると、ふと、一室でイチャイチャしているカップルをみかけた。褐色の肌で銀髪のエルマーと金髪のアルマーだ。美人で妖艶でエルマーが姉とする姉妹だ。二人がどうして姉妹で愛し合っているのかはわからないがいつも熱烈に絡んでいる。そもそも、エルマーが突撃型でアルマーは防御型だ。それはいい、防御型が口移しで突撃型に薬を口移しすると爆発的に力が向上する。しかし、エルマーとアルマーは同性だ。何故だ?


 疑問に思う余裕がなかったのかもしれない。僕はじっくりと彼女らを観察した。しかし、二人の絡みはいつみたって興奮する。なにか、こちらを挑発して見せているのではないかと勘違いさせるほどに。


「何をみている。この色情狂が」


 エルマーが妹をかばう様に抱き寄せて僕に噛みついてくる。色情狂って、そっちのほうじゃないかな。今はだけどね。僕もこの二人を手籠めにしようとしたことはある。だとすると、僕は色情狂かもしれない。今だって、ふたりのやり取りを視姦していたのだ。


 だけど、誤魔化す。


「いや、君たちは強いなと思って」


「嫌味か? 貴様の方が圧倒的に強いだろう」


 二人はますます怒ってしまう。気にさわったのだろうか。確かに潜在能力は僕が上なのは事実だ。でも、僕より強いではなく、単純に二人そのものが強いと思って言ったのだが。


「僕は実戦と知識が不足している。だけど、異性同士じゃないと自爆人間同士の力って発揮しないだろ?」


 そうじゃなかったのか? 


「私達は実験体なのよ。いちいち異性を組ませないと薬の効果が最大に発動しないのが問題だったから」


 アルマーが言う。どうしても説明したいという感じだった。気持ちはわかる。僕も実験体だったから、それが、最高傑作の自爆人間と値打ちされている。こんな人生の苦しみを誰かに言えるのなら、言いたい。


「で、私達は戦力としては認められたが、問題について結果は得られなかった。異性同士でなければ魔法薬の最大の力は得られない」


 エルマーが残念そうに言う。でも、よかった。成功しないで。たとえば、僕が他の男と薬の口移しなんてしたくない。結果的に僕はそれでいいと思う。しかし、彼女らは愛し合っているから、姉妹同志で愛撫したいのだろう。なんとか戦力として認められることで二人を引き離すことを避けられたのだろう。だけど、二人との初の遭遇で関係性を壊したいと僕は邪な感情を抱いた。二人は魅力的なのだ。


「でも、これからの戦闘は駄目だ。突撃型で男である僕と補助型で女であるアルマーとで連携する」


 僕は、エルマーの妹のアルマーを強引奪い去り強引にも愛撫しながら口づけする。アルマーは抵抗するふりをして嫌がっていない。僕を叩いてくれても良かったのだけど。


「あっ、あっ、姉さん」


 姉に助けを求めようとしているのがなぜか姉に見せつけているようにも感じる。それを見せつけられて感じ入るところがあるのかうらやましそうに指を口に加えるエルマーがいる。しかし、彼女は雑念を捨てようとする。


「この、外道が!」


 その、言葉が聞きたかった。


「そうか、僕は少しでもクズに見えたんだね」


「当たり前だ!」


「そう」


 僕は満足するとアルマーを引き離す。アルマーはなにか物足りなさそうに僕を挑発するように視線を送る。


 僕は、この姉妹を巻き込んだ。行動をともにすると約束しても。だから、僕は強引な人間であろうと思う。僕以外にストレスを感じさせないようにしたい。これから、熾烈な戦いが始まろうとするのだから。祖国とも相手をする戦争にストレスと不安を感じさせないために。


「エルマー、君もどうだい? 同じ、突撃型でも絡むだけなら問題ないんだよ」


「貴様! どこまでも……」


 激高したかに思えたエルマーは軽く僕の頬に口づけをする。


「嫌なのに悪態をさらそうとしてどうする」


 本音を言いたくないが止まらなかった。


「君たちも守りたいから」


 エルマーは嘆息して僕に言う。


「不器用をこえて意味不明だな。その涙をぬぐっておけ」


 僕は何故に泣いてしまったのかわからないが一筋の涙が頬をつたわっていく。反射でそれをふく。


「悲しいのはどうしてだ?」


 エルマーは呆れた表情で僕を憐れむ。僕を馬鹿にした憐みではないようだ。


「儚く感じたからだ」


「そうか」


 エルマーは納得したかどうかわからないが端的に言葉を返す。


 僕は部屋から去ろうとする。後ろを向けた背にエルマーは僕に抱き着く。


「怖いのだろう? 束の間の平和が。だからこそ、いま、この時を大事にしろ。災いがおきても私はお前を捨てたりはしない」


隼人(はやと)、私もよ」


 アルマーも優しく同調する。僕は大粒がこぼれた。不安で仕方がない。その想いでため込んだダムが決壊したのだ。あふれ出す涙。


「やれやれ、頼りないリーダーだな」


「でも、力及ばずとも私達がいることも忘れないで」


 二人の言葉に勇気づけられた。こんな、クズで愚図でしょうがない僕に。



 大きな、争いは一刻、一刻近づいてくる。そう遠くない未来に一年半後に。僕は後ろ向きの自分を捨てようとした。しかし、まとわりつく、そんな弱い心をともにして立ち向かうしかなかった。

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