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束の間の平和

 腰を落ちつかせた街はポイントノンいう名前だ。由来や意味はわからない。このポイントノンという街は住民登録をしなくても住むことができる。僕達のような訳ありの流れ者には丁度良かった。他に訳ありの人間が住んでいるのかは知らないが。


 乱暴で武張る者もおらず、平和そのもの。人々は優しいが生真面目な人間が多かった。その中で僕達は成人もしていない少年が少女を四人も連れている形は異質にも見えただろう。まあ、カナタは成人したばかりみたいだ。だけど、特にそういうことで意地悪をするような人たちでもなかった。


 とにかく、田舎で広大だった。街の北側には大森林がある。もし、僕達が戦闘に巻き込まれたら、そこまで刺客たちを誘導して決戦することにきめた。街の人間に迷惑はかけられない。せめてものの配慮だった。


 僕達は戦いもあるが普通に生活もしなければならない。街の人たちに仕事と住まいをもらおうとしたが、好意で使われていない一軒家と食料も分け与えてくれた。そこまで、人が好いと裏があるかと思ってしまう。でも、そのかわりに街の自警を頼まれた。朝と夕に僕が街を見て回る程度だった。(はるか)、カナタ、エルマー、アルマーはたまに畑仕事の手伝いを誰かしらに頼まれて手伝うこともある。女の子たちに力仕事もどうかと思ったが、農業は力仕事だけでもないようだ。その所は、農業を一切やったことのない僕にはわからない。


 ポイントノンは数か月定着してすんだ街なので暮らしは落ち着いたが、コ国とキ国に反抗する戦略と人員は整っていない。僕としては全くすすんでいない。ここは、住み心地は良いが人物や同士を探すには向いていない。たまに、別の街にいって人物を探しに行こうとするが遙にとめられる。その代わりに遙はどういう方法でやっているのかわからないが、祖国のキ国に残っている、新垣(あらがき)君と連絡を取り合っている。行動の全てを握っているのは遙なのだ。


 それに、街の有力者達にも裏でコンタクトしているようだ。僕も付き添うとすると拒否される。正直心配だ。


「僕にできることはないだろうか?」


隼人(はやと)君には戦いが残されているわ。正直、私に動かされて不満なの?」


「そうじゃないけどさ。不甲斐ないと思って」


「あなたにしか出来ないことで私たちは助かっているんだよ」


 そうなのか。皆、僕についてくると誓った。その僕が約束を守り切れるのだろうか?


 刺客が来なかったとしても、あと一年半で本格的に戦争が始まる。僕はあせっているのかもしれない。彼女たちを守れるのか? それに、僕としても自爆人間という兵器なので捕まって利用されるわけにはいかない。そう、思いながら僕は夕方の街で巡回をしている。僕以外にも数人大人がいて共に同行する場所、それぞれが別々に別れて区分けしてみる場所と街に異常はないか見て回る。


「やあ、今日も平和だね」


 いつもの街の誰もが言う台詞である。悪くは感じないが飽きてはくる。


「そもそも、この街で事件とか起きたことがありますか?」


 僕は興味本位でこの中で年長の人に聞いてみる。


「ははは、ないな」


「ここは、いいところですね」


 寡黙で真面目そうな、人だが表情が緩んだようにも見える。


「こんな、何にもない田舎を君のような若者に気に入ってもらえるのは嬉しいな」


「何もないというのが一番ですよ。人は欲望に走りがちですから」


 緩んだと思われる表情が引き締まる。なんだか、隙が少ない。


「君は、その年で達観したことを言うな」


 褒め言葉かどうかはわからないが、そのまま言葉を受け止めておく。僕は本当に思ったことを言った。キ国とコ国の裏を操る連中を考えれば利害をまったく求めないのは人が平和に生きるためには理想のように思えた。


 僕は、少しうれしく思い帰路に丁度出くわしたカナタにこの事を話した。


「馬鹿か? 全て真に受けるのはよくないぞ。言いたくなかったが街の住人がお前に仕事を与えているのは監視するためだ。お前は出来る限り友好的な態度をとれ」


 流石は遙の従姉だ。思慮が深いんだな。僕はまた不甲斐なく思ってしまう。


「あとは、お前を評価して利用しているのかもしれない。私たちは少し異質だ。子供でも腕が立つかと推測しているのだろうよ。だから、友好的にしているかもしれない」


「ちょっと、ひねくれていない?」


 僕はそういいながらも、確かにそれも考えるべき視野なんだと思った。


「よくも、こんな頼りない男に惚れたものだ」


「え?」


 カナタは照れながらもじもじしている。行く場がないから僕といるというのは照れ隠しなのはわかっていたが、今初めて、彼女が好意の本音を見せたようにも思える。


「こんな、隙だらけの男にいいようにされたのだ。責任は取ってもらうぞ」


 カナタは僕の頬にキスをする。そして、気恥ずかしさからか、彼女は先に走って帰宅方向へと去った。僕は悪い気はしなかった。他の女の子たちが見たらどう思うかわからないが、これが平和なんだなと思う。柄にもなく夕日を背に物思いにふける。


「責任か……」


 それが迫る時が刻々と訪れるのだろう。僕はその時までの緊張感を身に委ねて味わおうとするが吐き出してしまった。でも、逃げない。


黄昏るの意味を勘違いしていることが今日わかりました(^_^;)

なので、物思いふけるにしました。

勘違いして言葉を覚えるのは恐ろしいですが、大半の人が勘違いしているなら、言葉が通用するからいいじゃんとも思う、駄目思考の自分( ´艸`)

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