戦い方のそれぞれ
僕達はヘイムハイロウの国籍がなかった。そもそも、今更ながら中立国家ヘイムハイロウとはどんな国かというとだ。君主や国家主席はおらず、それぞれ地域都市が独立して自治をしている集まりだ。国ではないといえばそうだけど、それを連邦国家として名乗って各都市の指導者が集まり相談し合い全体の運営をしている。
遙に教えてもらったことだがキ国とコ国が中立国家ヘイムハイロウと武力抗争に手を出さないのは、最後に利用するために残しているだけ。世界の大半が半壊しているなか無事に大陸が維持されているのは残しておきたいだけ。両国が泥仕合で対立でしているが裏では演技にすぎない。生き残った有力者達の新天地にする予定としても残してあるのだ。
しかし、今度は両国の戦場の場としてシナリオになっている。しかも、兵器として僕を奪取することもいれての計画だ。僕には世界を8割がた破壊する自爆魔法ができるとされている。自分ではそれが可能なのかはわからない。
厳密に言うと少なくしておきたい人口は僕がすべて消す手筈として計画の一つに置いてあるのだ。
ここまで説明すればわかると思うが、キ国とコ国はグルである。厳密に言うと上に立つ者だけだが。ようするに全体の二割になった世界で選ばれた人間だけで繁栄すればいいという考えだ。それを、誰にも覚られないように戦争をしているにすぎない。
しかし、準備がいるし、別の手段がないわけでもない。戦争をおこす前に僕を手元におこうと刺客がくる可能性もある。
「だけどね。上層部も馬鹿じゃないから、君に対して意味のない消耗は避けるわ。それに自爆人間や科学兵器そのものもストックしているから」
「でも、まだ、争いは始まらないんだね」
「前にも言ったけど二年が目安よ。それまでに私達がどれだけ反撃の準備をできるかにかかっている。それに対して、無双が裏で動いているわ。本当は君に対して刺客を送る名目で逆に私たちが刺客を吸収するのも作戦の一つだったわ。エルマーやアルマーの様にね」
遙は熱心に説明するが褐色の美人姉妹のエルマー、アルマーは怒る。
「なんだ、私達は私達の意志で隼人の仲間になったんだぞ」
「そうね。ありがとう」
「お前が言うな! 隼人の台詞をとるな」
僕もそう思う。しかし、遙は至って本気だ。
「まあ、無双の部隊にいた貴方たちをわざと置いてきぼりにしたんだけどね」
「なっ」
エルマー、アルマーは驚く。本人たちには失礼だが結果としてはそうなる。僕も驚きはするが。
「でも、その結果が上層部に警戒されて無双は本国から抜け出せないようにされているわ。そこに、白羽の矢が立ったのが隼人君のお父さん。超獣と恐れられている人物で組織に従順で冷徹な人間」
「父さんは本当に僕を取り戻すか始末する姿勢だった思うよ」
「そうよ。だから、いらない部下は捨てて単独を望んだわ。だけど、無双の推薦で足手まといの人員を編成させたわ」
遙は至って大まじめだ。
「失礼な!」
今度は遙の従姉にあたる姉であるカナタが激怒した。
「私が邪魔者扱い。それに隼人と同行するのも仲間だと思ってだぞ!」
「ありがとう。姉さん。でも、ごめん。これも計画の内」
「ななな」
そりゃ、言葉がでないよね。僕もどうなっているの? と思う。
「これによって、隼人君のお父さんも上層部で疑念がかかり君に対して送り込まない姿勢になったわ」
死力を尽くした戦いだけど、遙と新垣君の絵図にはまるものだとは思う。
「次の新垣君の行動は?」
「案こそあるけど、わからないわ。三強といわれた無双と隼人君のお父さんが退かれたいま、都合よく最後の一強が出向いてくると考えにくいわ」
「なんで? 強い人間が出向くのは当然では」
「甘いわね。隼人君もしっているでしょ。三強の一人、芋生十六」
「あっ」
僕はかつて父に連れて行かれた曽祖父を祀る酩酊神社で彼女と会っている。芋生家のトップで僕と関係を持とうとした女の子。
「あの時、隼人君、君は貞操を守れたね」
「なんで、知っているんだよ!」
「君のことはなんでも知っているわ」
なんだよ。怖いな。愛を少し緩めて欲しい。
「前にもいったけど、自爆人間で君と関係を持つのは女性全員に言われているわ。特に補助型で能力が高い者にはね」
そういえば、カナタ、エルマー、アルマーも同じ自爆人間の女性だ。気にも留めなかったけど僕と関係を持つことを命じられてもいたのかな? 三人を見つめる。
各々が照れてそっぽを向いてしまう。
「これが、答えよ」
「言いたくないけど、気付いたよ。女性の自爆人間が僕に刺客として送り込むと意識しちゃうんだね」
「そう、十六が君に加担するとも考えてしまうわけ」
「だからといって。誰もが僕を意識したりしないでしょ」
「境遇ってものがわかる?」
「まあ、僕達はどうしようもない呪われた運命を背負っているけど」
「君のお父さんが自爆人間の本能を計算してなかたって言葉だけど。私たちはねお互いを慰め合いたいのよ。境遇が同じだから自然と意識し合えるの」
「じゃあ、僕達って最初から手を組んで国の上層に背くこともできたのでは?」
「無理よ。今はね。でもね、重大なのは逆に君を篭絡して本国に連れ戻そうという部隊が出来つつあること」
「ああ、五百子が部隊長になろうとしている部隊ね」
僕は恐ろしく感じる。男を手玉に取る部隊ってなんだよ。正直、そんな、ハーレム部隊が来たらどうしたものかと思う。
「隼人君、貞操を守れる自信がある?」
「無理矢理じゃなければどうにか拒絶できると思うけど」
手段は選ばないだろうな。死ぬために消耗を繰り返す僕たちが今更に羞恥心とか持ち合わせないだろう。そんな、邪な話を市街地堂々と話している僕らがいる。新しくついた街だ。ここは、よそ者にあまり警戒しないので潜伏しやすいということで案内された場所だ。
僕にも意志がある、なんでも振り回されたくはない。僕に思いつく策がない現状だけど誘惑を振り払って戦いぬかなければならない。真の敵とはなんなのかわからない気持ちには陥った。
先は長そうだ。