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途轍もない魔力

「ちっ、自爆人間の本能を計算しておくべきだったか。カナタが色恋沙汰に揺さぶられるとは」


 父は、らしくもなく舌打ちをする。


「……」


 それに対してカナタは反論できないでいる。小刻みに震えて感じ入っている。惚けているようにも見える


 僕は相乗魔法で魔力がみなぎっていた。その効果は与えてくれたのは(はるか)と敵であるカナタの舌の舐め合いによる魔法薬の口移し。淫らな行為で魔力が高まるとは毎度僕は驚きを隠せない。


 父も魔法薬を飲み対抗する。しかし、僕より効果は少ないはずだ。僕は父に徒手空拳の猛攻を浴びせる。苦しそうに攻撃をさばく父がいる。いけるのか?


「隊長加勢するっス」


 軽薄な男千斗(せんと)は割って入る。以前と違い必死だったが助太刀することが場違いというものだった。力の差が違いすぎる。


「邪魔だ」


「ブヘ!」


 父は千斗を退き僕の方に吹っ飛ばしぶつけ様とする。僕に隙をつくる目的もあるだろう。


「くっ」


 僕は止むを得ずに千斗をはたきどかす。最小限の魔力を込めた。


「え?」


 思わぬことだった。相手は粉々に砕け散る。どかす程度の力だというのに実際の威力はここまでとは。





 僕は初めて人を殺した。



 言い訳はできない。僕は人を殺した。今更ながら事の重大さに衝撃が走った。


「感傷に浸っている暇はないぞ」


 わざわざ、忠告してくれる。今度は父が猛攻してくる。しかし、超獣とまで呼ばれる恐れられる攻撃をなんとか防ぎきる。いや、本当は余裕なのかもしれない。先ほどの後味の悪い気分が支配し力を弱める。


 それでも僕はなんとかカウンターあたえるころ合いを待つ。父が繰り出す攻撃のリズムがよめた。攻勢に転じて画面に拳を打ち込む。そして、フルパワーでみぞおちを打ち抜く。


「グハッ」


 内臓までダメージをおったのだろうか吐血を始めた。正直にいって人を痛めつけるのは快感ではなかった。いやな、感触だ。だが、これからこういうことが続くと覚悟しなければならない。


 そして、敵とはいえ、同情もしない相手とはいえ、殺す気ではないとはいえ、僕は人を殺めた。僕は心に誓った。もう被害者面はできない。戒めである。でも戦うことは放棄できないのであろう。


 その証拠に父が獣の目で僕を見る。死にそうなのに殺気がみなぎっていた。戦うということの気迫を教わった気がした。


「もう、お前を親として与えるものはなくなった。残念だがお前が私を超えていることがわかった。次から、お前を始末することのみに全力を尽くす」


 父はそういうと苦しそうに魔法薬を飲みテレポートで戦前を離脱した。今回は殺さずにすんだが次はどうなる? 父の本気というものに次回も退けることができるのだろうか。


「隊長!」


 カナタは叫ぶ。置いてきぼりというやつか。可哀想だな。でも、なんだか喜んでしまう僕がいる。


「姉さん、慌てないで私たちの仲間にはいって」


 遙は懇願する。熱意はないが優しく抱擁的だ。本気でカナタを引き入れる気だろう。その、決定を僕は彼女に委ねた。


「馬鹿な! 本国を捨てた末路はわかるだろう?」


「でも、隼人(はやと)がいる」


「あっ」


 その、『あっ』が理解したのか、感じ入ってしまったのかわからない。だが、僕は勘違いとは思えず喘ぎ声に聞こえて感じてしまう。僕は高揚して魔力をたぎらせてしまう。その姿をじっとみつめるカナタがいた。それが、更にたまらなく感じさせた。


「ところで、気配無き獣もまだ二体いる。向かうよ、一人で始末できる。二人はラベルドさん達の様子をみて」


「わかった」


「はい」


 遙は協力するにきまっているが、カナタは物凄く従順だと思える返事をくれる。無機質な印象とえらい違いだ。でも、なんとなく、僕はそうさせてみたかった邪な感情がある。否定はしない。僕は不純な男だ。


 僕は気配無き獣に向かう。感知できない獣も僕には感知できる。そして、そこには二人の女の子が奮戦している。


 僕と同じ自爆人間である姉妹のエルマーとアルマーだ。僕がさきにいった隠し玉というやつだ。


「ありがとう。共闘してくれて」


「ふん、いまさら居場所がないのだから、藁でもすがるさ」


「姉さん、檻人(おりと)様を退ける人間がいるなんて、藁どころじゃないよ」


「わかっているさ。しかし、貴様、また淫らな行為をした匂いがするな」


 僕を非難する目が向かう。いや、そうでもない。逆に僕を求めようと乞う視線が二人から感じる。


「無事に終わったらね」


 それを聞いただけで熱い衝動にあがなえずに悶える二人がいた。チョロすぎないか?


 だが、情事にかまけている場合ではない。まずは気配無き獣を始末する。ちょうど二体だ。ぼくは両腕を左右広げてそれぞれに目標を定める。掌を開きほどほどに魔力を放出する。


 爆発音が木霊する。たった一撃の魔力で二体は崩壊する。こんな弱い生物ではない。僕自身が驚いてしまう。元を考えれば遙が相乗魔法してくれたからだ。彼女に深い感謝の念を送った。実際に顔を合わせて感謝しないとね。だけど、ふと、こんな時に僕は思う。


五百子(いもこ)はどうしているだろうか」


 空を見上げる。妹の五百子はどうしている? 今はお互いが違う地にいれど同じ空を見て僕を想っていてくれているのだろうか。


 刺客でもいいから、僕に近づいてくれないかと甘ったるい願望を夢想してしまった。

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