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安全はどこにあるんだ?

 インドミルの首都は人間にはしられないように特殊な結界にまもられているらしい。僕たちはいつどこで見張られているとも限らないので気配無き獣同様に認識阻害の魔法をかけて侵入する。それでも油断はできない。


 粗末な街ではあるがインドミルが多数住む住居が立ち並ぶ。そして、街の奥地中央には神殿のようなものがあった。古代文明そんな感じもしてしまった。決して見くびっているわけではないのだが。


 僕たちは会議の間で数人のインドミルとであった。正直、白い毛むくじゃらの獣というぐらいで、個々の見分けができなかった。ただし、首長と呼ばれているインドミルは装飾品の装備で違いがわかる。それに、どのインドミルより年老いて見えた。威厳も感じるがそれは、会議が始まる前だけだった。


「長よ、これでわかったはず、座して待てば我々は滅びるだけ」


 カイラーサーは力強く長を説得する。


「むぅぅぅ、しかし、おとなしく様子をみていればいらぬ損害もないはず」


 だが、賛同せずに困惑する声だけが漏れてくる。大丈夫なのか?


「だとしても、犠牲者には見て見ぬふりをしろと言うのですか? 我らに誇りはないのですか?」


 カイラーサーはさらに激する。


「あるとも、その誇りを名目にして戦いで犬死をさせるのを危惧しているのだ」


 熱意で返すが言葉の内容は消極的だ。


 長とカイラーサーは激しく口論している。誰も、割って入ることもなかったのだが……。


 しかし、(はるか)は凄みのある声で話す。女傑にすら見える。とんでもない女を好きになったもんだ。きっかけは向こうから迫ったけどね。


「首長さん。ハッキリいうわ。貴方たちが自衛をしっかりしてもらわないと気配無き獣がいくらでも増産するわ。それを、命をかけて戦うのは私達自爆人間なの。私達自爆人間も貴方たちと同じ被害者なのだから協力には惜しまないわ」


 わかっているが……。だが、しかしというかんじだ。だが、しかしのやりとりが繰り返す。


「とても信じられぬ。人はだれしも属したものに命を懸けるもの」


 そもそも、僕らは何に属しているのだろう? そこから、平和や幸せが脅かされているのかもしれない。


「いいえ、キ国、コ国を滅ぼす者たちよ。同士は集まりつつあるわ。少なくとも、私と隼人(はやと)は上級の自爆人間でありながらキ国を捨てた者よ」


 同士があつまるのはブラフなのか事実なのかわからない。だけど、遙の語気の強さに長は押されている。


 それでも、インドミルの長は悩んでいる。自分の命だけなら捧げてもよいかもしれないが、どんな状況でも人は生きて言いたい。平和の為に一緒に死んでくれなどとはごめんかもしれない。大義として今まで命を失った仲間を供養する。その為に戦うという生贄になる。そうなって欲しいとお願いされている様に聞こえるかもしれない。良い言葉も悪い言葉も負担がかかるのだ。しかし、安全を願って労を惜しむのは平和ボケ以下であると僕は思う。


 僕が長だったら、どうしていただろう。決断力というものはしっかりもっていたい。今後、僕がキ国とコ国の抵抗勢力の象徴となったら僕が指導していかなければならないとおうことになる。遙に頼ってばかりではいけない。彼女に捨てる気も捨てられる気もない。


「わかりました。首長さん。僕らは三日ここに滞在します。その間に決断してください。ただし、同盟が成立しないのであれば、我ら、人間はあなた方インドミルが窮地に陥っても優先的には助けません」


 だから、ぼくが無理矢理でも決めなくてはならない。


「むうぅぅ」


 長は唸るばかりだった。気持ちはわかる。以前のぼくであったら。きっかけがないと勇気はでてこないのかもしれない。


 僕たちは会議の間をでて渡り廊下を歩く。


「カイラーサーさん、ラベルドさんすみません。勝手に結論を提示して」


「かまわぬ、長に何度言っても頷かなければ我らは我らの信じる者たちで動く。インドミルを捨てても君たちに協力するぞ」


「我々も同じだよ。利害があわなければいくら話し合ってもかわらない。私も同様に独断で君たちに協力するよ」


「いいんですか?」


 僕はよそよそしく言う。僕には遠慮が残っているようだ。


「君には遙殿ように意思を貫き通す力をもたなくてはな」


「強引さもね」


 どうやら、カイラーサーもラベルドさんも僕より、遙を認めているように感じる。


「なんだか、私、褒められているようで、けなされていない?」


 遙は機嫌悪く言うが皆はあわてて否定する。僕より、遙が中心になればいいのに。でも、五百子(いもこ)は奪われたけど、遙は守ると決めたもんな。彼女の尻を追っているわけにはいかない。


 僕達は、インドミルの街をみてまわった。


 どこか、身開国の原住民の集落に感じるが活気があって楽しい。ここには、キ国もコ国の脅威もないはず。そう思うだけで僕は気持ちが楽になった。長の傍観していたい気持ちもわからなくない。


 だけど、平和は永遠には続かない。立ち向かわなければならない。


 僕は宿舎で寝ることにした。夢を見た。初めて五百子に押し倒された時の夢だったが、今では不快にならず、むしろ嬉しい幸福な夢だ。


 そんな、ちいさな幸せに包まれながらいる。しかし、夢は壊れて朝が始まる瞬間に爆発音で目が覚めるのだった。


 いったい、なんなんだ? 


 キ国かコ国にここを嗅ぎ付けられたとでもいうのだろうか?


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