抵抗運動
「カイラーサーさん、ラベルドさん、すみませんでした」
昨日のキ国の部隊襲来について僕は謝った。目的は僕たちにいる五百子だ。その為に半分の命が失った。百人もみたない。戦争ならもって多くの命が失うからこれしきの数なんて言えない。僕はどういう言葉を浴びるか恐れていた。
「確かに君たちの関りで私たちは被害を受けた。同士も死んだ。君たちは疫病神のようだ。しかしな」
カイラーサーが淡々と言った。怒りや悲しみは感じない。それが、逆に怖い何を考えているのだろう。
しかしと言っているのにラベルドさんが先に言葉を発する。
「しかし、我々調査団はインドミルがどうなっているかを知ること。インドミルも人間と同等の武力がある。加えて……」
ラベルドさんが言うが残りを遮ってカイラーサーが話し出す。二人とも主張が激しいな。
「簡単に言おう。気配無き獣はコ国の者が我々を攫って改造した兵器なのだ。当然、コ国には敵対している。だからといってコ国が敵対しているキ国との連中と共同にくんでいるわけでもない」
おそらく、カイラーサーは腹の探り合いはうんざりしているかもしれない。
「我々が住むヘイムハイロウは中立国家だ。われら、インドミル獣も人間にたいして中立だ。だがら人間たちの何処にも組はしない。しかし、我らは同族を含めて人間に注意をはらっていなければならいがね」
少し間を置く。数秒たってから言葉を出す。
「今回、私はラベルド殿を長に連れて行きヘイムハイロウの人間には敵対しないと約束させる。しかし、キ国とコ国は別だ。戦闘を決意するように誘導する」
「カイラーサー殿、それが上官との密命だったのです。助かります」
「最初から気づいていたよ。だが、我らでは戦力及ばず」
悔しがっているのか様子がわからない。獣にも誇りというものはあるはず……。
「わかっているわ、カイラーサーさん。ここからは私が話にはいります」
遙は僕より先手で話にはいる。
「もともと、私達、改造人間は自国のやり口に反感をもっているの。だから、自爆人間補助型として最強の隼人をここに来るように仕向けた」
「遙……」
僕は少し複雑な気持ちになった。僕の力だけが目的だったのか?
「ごめんなさい。私はただの駆け落ちで隼人君を誘惑したわけでもないの」
「そうだよね、僕なんて兵器としてか魅力ないからね」
「あら、昨日の強気はどうしたの。遙は俺の物って言えばいいじゃない」
「強気な態度をしたのはこの姉妹だけ」
昨日、襲撃した自爆人間の姉妹をさす。銀髪のエルマーと金髪のアルマーには強行的な態度をとった。
「この姉妹とはなんだ! 苗字はある。ムジャ・アイモ―だ」
「アイモ―? キ国人じゃなくヘイムハイロウの人間だったの」
アイモ―はヘイムハイロウの人間の全員がもつ苗字。聖人イモーコ・アイモ―からとってある。
「正確にはコ国人だ。キ国人化してからヘイムハイロウに潜入している形だ」
スパイ活動か。だけど、変だな、スパイが勝手にしゃべっているぞ。吹っ切れてしまったのか?
「君たちはこんなこと言うと帰国できなくなるよ」
僕は心配していう。
「見限ったよ。私はアルマーといっしょにこの国の奥地で逃げて暮らすよ」
「ならば、我らの仲間になってほしい」
カイラーサーが即座に言う。駆け引きは一切なしだ。
「率直に言おう。我々、インドミルは我らを害する者たちを排除はする。だが、人間と同盟を求める穏健派とキ国とコ国に反する人間たちと同盟して戦う武闘派にわかれる」
そんな、武闘派がもとめる人間なんているわけがないと僕は思った。
「わたしはね。その武闘派に用があるのよ」
遙が言う。昨日の深夜僕に言ったレジスタンス活動をカイラーサーとラベルドさんに説明した。
「なるほど、戦うにしても戦力分に問題があったがヘイムハイロウにかなりの自爆人間がいるのだな」
「ええ、先の大戦からヘイムハイロウの以外は大陸が半壊した。居住区域が少なくなりました。そして、世界人口激減からの再び人口の莫大な激増。知っている? キ国人もコ国人も大半が密入してヘイムハイロウの人間に化けているわ。いい? 間違いなく次の大戦はここでおきるわ。」
「むぅ、渦中に逃れることはできぬということか」
「そうよ。そうなる前に人間爆弾と気配無き獣を作る組織の壊滅が私の目的でその中心となる人間が隼人君なのよ」
「僕が?」
「貴方が最強のポテンシャルを有するわ。抵抗運動のシンボルになってもらう」
遙はここまで考えて僕に関係を迫ったのか、女は怖いな。
「くわえて、この大陸にいる自爆人間の協力要請と無双が魔法薬の横流しをするわ」
「うまくできた、話だな」
「カイラーサーさん。これだけの大掛かりな事が成功するとは思えないわ。策はいくらでも生み出していく。これ以上は極秘だけどね。まずは、キ国とコ国に抵抗する人間とインドミルが同盟を組むのが目的なのよ」
「わかった。上に案内し同盟の件は手助けをする」
「ありがとう」
「私は国家関係なく君たちの味方になろう。君たちの為ではなく。我らの為に」
ラベルドさん率いる生き残りの使節団の皆も頷き快諾する。
僕たちはインドミルの首都にむかった。
僕は遥を見て思った。運命は嘆いているのではなく、解決策を考え実行していくこと。僕は無理矢理迫られて心を許したのではなく、今は心から彼女を好きになった。いや、もう好きだったんだけど、改めて惚れてしまった。
そんな、彼女に認めてもらいたい。僕は彼女の力になりたいと心の底から思った。