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生きていたいからこそ

 夜は深まっていく。森の湖の近くでのこと。男の前に逆さつりで迫られている女が一人、遠くから見守る女が二人とそれなりにそそる絵図になったなと僕は思った。しかし、目的は情事ではない。妹、五百子(いもこ)の奪還するためにテレポートの薬を投与して欲しいだけだ。


「ハヤト、貴様これ以上アルマーに手を出したらただじゃすまないぞ!」


 僕とアルマーのやりとりを感じ入りうらやましいという思いをひたすら隠してエルマーは僕に噛みつく。しかし、彼女からだす気は殺気ではなく怯えと不安だ。僕はほくそ笑んだ。


「じゃあ、君もおいで。可愛がってやるからさ」


「な!」


 エルマーは固まってしまっている。反撃の言葉もでてこないらしい。こんなやりとりも面白いが僕には目的がある。五百子奪還の為にアルマーを利用すること。その為には卑劣だろうと下卑たることだろうと迷わない。その為に他の人間が傷つくことも厭わない。


「隼人君わかっている? 今日の戦闘でこの姉妹は私達より力が下なの」


 (はるか)は僕を諭そうとするが、そんなことは僕でもわかる。問題はない。 


「テレポートだけが目的だ。それ以外にこいつらに求めるのは体くらいしかないだろ」


 遙は僕の強気の態度に呆れながら手を振る。でも、彼女に負けてはいられない。僕は五百子と同様に遙も奪った。奪ったのなら守らなければならない。彼女より頼りないようではだめだ。


「隼人君も元気になってお盛んになったね。私はおどおどしていた君の方が好きだったな。あっ、でも嫌いになったわけじゃないのよ。他の女も奪おうとするからますます君から目を離したくない。とられたくない」


 挑発か? 僕をどういう感情にさせたいのだろう。私から離れないでか?


「だから、五百子は諦めなさいか?」


 ピクリとも表情を変えない。彼女の意志という力を内に秘めて堂々としているように感じた。隙がなくて怖い。


「いいえ、テレポートブロックがあるから」


「テレポートブロック?」


 聞いたこともなかった。その場でつくった言葉でもなさそうだ。


「君は自爆するためにいるから私ほど戦闘教育されていないからね」


 しらないのも無理はないと言いたいのか。僕を甘く見ているより、遙は泣きそうな目で視線を送る。そこに哀れみはなかった。儚い者を見ているようだ。そして、口にする言葉が突き刺さる。


「テレポートしたら死ぬよ」


 まだ、僕を儚い者としてみている。それが、二人を遠ざけるどころか二人を近づいているような錯覚を覚えた。どう、反応したらいい。


「なに、死ぬ?」


「キ国が力ある者を簡単に入国させるわけないじゃい。魔法が切り札の国で魔法による防御は当然ね。ここ、ヘイムハイロウに逃亡できたのはテレポートブロックがなかったおかげ。だけど、貴方の逃亡で出入りが両方できなくなったと思うわ」


「そうか」


 俺のやることは裏目にでたのか。しかし、思えば、遙も五百子も新垣(あらがき)君もキ国の呪縛から解放するために僕を脱走させたように思える。思い込みだけど。


「ごめん、五百子ちゃんは私が面白がって無双(むそう)にさらわされたんじゃないの。無双は新垣家の最大の力を有する者の名前。彼はそれを襲名している。強化人間三強の一人」


「僕でも勝てないのか?」


「自爆しない限りね」


「彼はずっと様子をみている。反撃の狼煙をあげるために。だから任務を半端に遂行している。君がキ国を逃れてどう有志を募るか期待しているはず」


 よく、そこまでわかるな。もともとの二人の計画だったとでもいうのか?


「元、彼氏を高く評価するんだね。未練でもある?」


「隼人君、そういう意地悪いうと、明日の夜から容赦しないからね」


「楽しみだな」


 落ち着いて夜を休めないのに強がりで応えてしまう。まだまだ、女性は苦手だ。


「だからね。今回のラベルドさん達との任務とインドミルのカイラーサーさん達の接触も意味があるのよね。自爆人間、気配無き獣の存在なんて認めたくないじゃない。道を外した殺戮行為に黙っているの? 世界はすでに半壊しているのよ」


「そうか、僕らはレジスタンスの象徴にならなければならないんだな。自分らと世界を守るために」


「そう、だから、今は我慢している。私たちは決して無駄な血を流さない」


 僕は頷くとアルマーにしかけた罠をはずす。空中に宙吊りされた彼女は防御も出来ずに落ちてしまう。


「きゃ」


 さほど、重たくもなさそうな音が地面から響く。


「とういうことで、君を楽しむことはやめることにしたよ」


 アルマーは間の抜けた表情をした。


「え?」


 なぜか、半分は残念がっているようにみえる。なんだか、可愛いな。


「魔法の罠は外すから姉さんのところに戻りな」


 アルマー懸命に姉、エルマーのもとに走る。


「姉さん」


「アルマー、無事か? すぐに気づかなかった私を許してほしい」


「姉さんを恨むなんて、ただ……」


 僕の方にチラッと見つめるアルマーがいる。だが、僕は興味を示さないふりをする。これで、僕は最後になると思ったから悪ふざけも過ぎたが、彼女らを想ってもいずれ別れが来る。苦しい想いはしたくない。


「さて、宿舎にもどって休むか」


「騒動を起こした本人が私達をまとめるとは大した度胸だな。わがままな男そのものだ」


 エルマーが毒づくが、彼女は彼女で照れている。


 僕たちは砦の宿舎に戻った。今日はこれ以上悪いことはおきないだろう。せめて、寝ている時は安心していたい。


 未来には希望があると信じて。

ここで終了です。


違いますよ。続きますよ。序盤なので先がどうしたものか(^_^;)

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