姉妹
僕は星を見た。祖国であるキ国ではあまり夜空は綺麗でないので感動した。そして、妹である五百子は場所が違っても同じ星々をみているのだろうか。俺を想い続けるのだろうか? 新垣君と気配無き獣の襲撃、今日は二度も戦いがおきた。そして、僕は人と戦うのをやめたい身だけど、さけることはできない。攫われた五百子の奪回を考えていた。
僕のレベルなら場所さえ記憶していれば何処へでもテレポートできる。それ以上のテレポートは心に思えばどこにもいける。だが、補助型の魔法薬の投与が必要となり、体の負担も大きい。寿命も縮まるだろう。下手をすれば死ぬ。
その、危険を冒してでも五百子に会いたい。だからこそ、深夜にある人物に頼んでみることにした。アルマーというエルマーの妹だ。エルマーは攻撃型なので薬の投与は効果ないだろうが補助型であるアルマーなら効果はあるだろう。金髪のアルマーは美人だが、どちらかというと銀髪の姉、エルマーの方が好みだ。だが、色情が目的ではない。それでも、アルマーにも邪な感情はある。
同じ、補助型である遙に頼めばいいだろうが彼女は無謀だと言い協力しないだろう。彼女も好きだ。困らせることはしたくない。僕という奴はどこまでも多情でどうしようもない人間だ。クズだろう。
だからといって自分を卑下しても前には進まない。僕は半壊した砦の宿舎にいる。宿舎はいくつかにわかれているが女子たちは一つに集まっている。僕はこっそり忍び込んだ。皆はすっかり寝ている。僕は安全策として気配無き獣と同様に気配立ちの魔法を唱えてアルマーのベッドに近づく。念のために音を消す魔法や僕が触れても感覚を感じない魔法も唱えた。僕はこれが夜這いではないと自分に言い聞かせながらそっと彼女を抱いて運ぶ。彼女は気付かないどころか僕を抱き枕かなにかと勘違いしえ寝ぼけて抱き着いてくる。少々緊張した。
「ここまでこればいいか」
僕は侵入の為にかけていた魔法を全て解除する。あたりは森の中にある湖だ。もし、彼女が拒んで逃げたときに捕らえる為に罠の魔法を張り巡らせている。これでは変態と思われても仕方ないだろう。だけど、目的のために手段は選ばない。
アルマーをそっと起こした。彼女はゆっくり目を開けた。
「うん? え? キャー!」
森中に木霊する。金髪の美女アルマーは悲鳴をあげる。
「姉さん、姉さんは何処? 助けて」
「君の姉さんはいないよ。君に用があって連れてきた」
「用事? まさか情事?」
アルマーは僕を避けようとお尻を地につきながら後ずさりする。
「うん、それで君が満足するなら、いくらでもするよ」
「貴方のような不貞な人間に体を許すわけがないでしょ!」
「ああ不潔だ。僕はろくでもない人間だ。だからこそ君にお願いがある」
「どうして、私に?」
「君が補助型であるからだ。最大級のテレポートの薬を投与してほしい」
「私がなんで? 貴方の連れの女に頼めばいいでしょ」
「遙は応じないよ。僕を逃さない」
「ふん、お熱いことで。それで私に頼むと」
「頼むよ、僕は五百子を取り戻したいだけなんだ」
僕はアルマーの体を突きつけようとする。彼女は少し怯えているようだ。
「嫌」
アルマーは体を起こして脚をガクガクと震わせながら僕から逃げる。しかし、どこに逃げても無駄なのも気づかないとは。彼女はあれでも手練れのはずだ。僕の罠などすぐに感知できるはず。見えない魔力の糸が彼女の足に絡み逆さつりに持ち上げる。
「え? どういうこと。キャー」
「なんだか、君はお姉さんより可愛いな」
その、言葉だけでアルマーは照れてしまいそっぽを向かう。僕みたいなつい最近まで異性に大人しかった人間の言葉に反応するなんてな。初々しいな。
「これで、拒むこともないだろう? それとも、僕に悪戯されたい?」
「どっちも嫌よ。あんた、妹を取り戻すって正気なの? 向こうがどうなっているかわからないけど、確実に罠を張ってあるわよ。貴方も捉まるわよ」
「心配してくれるんだね。いいんだよ、連続テレポートするから」
テレポートは一度行うと一定の時間休まなければならない。頭や体が魔力の力に押されて爆発してしまう可能性が大きい。
「あんた? 馬鹿なの? 死ぬよ」
「死に方を選びたいだけだよ。このまま受け身でいたら死に方まで選べない。君たちだって、ただの道具だろ? 自由に生きたいだろ? 僕の気持ちわかるよね?」
「わたしは道具じゃない人間だ」
「じゃあ、練習しよう」
僕はアルマーがうまく動きがとれないことをいいことに強引に口づけをして舌をいれて蹂躙する。しかし、嫌がっていたアルマーもまんざらでもない様子だ。
これは、魔法薬を口移しするときの前練習なんだ。彼女には言って聞かせずに自分に言い聞かせる。
「ん、んん~んぅ」
いやらしい甘美な声だけが森に再度木霊する。
「そこまでだ!」
姉のエルマーと遙は異変に気付いてかこちらに現れる。しかし、罠を張りまぐらしていることに気づき、一定の間合いから近づいてこない。
「ハヤト! アルマーを放せ! それは私の、私の……」
妹を想う気持ちは伝わるが、エルマーの視線はどちらに向いている? 僕にだ。
「姉さん? 姉さーん!」
アルマーは姉が僕に心が移りつつあることに絶望し、そして、愛する姉より先に僕との関係が生まれてしまっているのではないのだろうかと恐れている。そして、自信さえ、僕に心を許してしまわないようにあがき続けることが出来るのだろうか不安になっている。そして、姉の名前を呼ぶことでこの乱れた関係を消しさってくれることをお願いしているのだ。
「姉さーん」
僕は、少し興奮と高揚が全身を支配したが、今一番に思うことは妹、五百子を傍におくことだった。
また、ファンタジー路線から脱線のような……。いや、これがファンタジーなんだよ( ´艸`)