妹に押し倒される
久しぶりにやるとなろうわから~ん。
妹は華奢だ。とても、男一人を押し倒せる力などないはずだ。だが、現に僕は押し倒されてベッドの上で僕に悶える妹がいた。なぜか、抵抗する力がわいてこない。しかし、嬉しいわけではない。困惑している。断じて心を許しているわけではない。
なので、力を振り絞って言葉を発しようとした。どうして、こんなにも振り絞る勇気が必要なんだ? 意識しているのか?
「なあ、五百子。どうしてこんなことするんだ? どいて欲しいお願いだから」
妹は聞こえている素振りもなく、一心不乱に興奮している。僕に体の上を摺り寄せる。体中に粘膜のある生物が這いよるがごとく潤滑に蠢く。超えてはならない一線というものがあるだろう。
お互い上半身裸だ。押し倒された後の過程で脱がされている。どうして、こんなことするんだ? 今までそんな素振りがなかったというのに。
「動画が送られてきた。もう、我慢できない」
妹は淡々と言った。感情があまり伝わらない。もともと、意思表示が少ない子だが。今は感情が昂ってみえる。
動画? 尾瀬遙の件のことだろうか? 僕が口移しされたのを見て発情でもしたのか? 俺でいいのか? 他に好きな男はいないのか。
「なあ、いも……」
「兄さんは喋らなくていい。遥の宣戦布告は受け取った」
この二人は知り合いだったのか。なぜ、告げてくれなかったのだろうか? 二人に因縁でもあるのだろうか。
「僕は、いや、俺はどうなる?」
「兄さんに選択肢は存在しない。兄さんは私のもの。それは、芋生いもう家に養子に来た時からの決まっていたこと」
「僕は承諾していないよ! ……痛!」
こんな時にいつもの頭痛か。魔法の実験薬の投与による後遺症があらわれる。毎度のことだが。しかし、こんな時に痛がっている場合ではない。妹に関係を持つ方が心痛が強い。
僕の部屋にはこんな時のために水差しとグラスが用意されている。妹は薬はあらかじめ用意していたのか薬をとりだし水と薬を口に含ませる。
「お前、まさか……」
衰弱しているかわからないが、先ほどから抵抗する力が出ない僕はされるがままに口移しで薬を飲む。いつもの常備薬と違うのか、即効性があり次第に体の自由がきいてくる。
「これで、兄さんは私から逃れられない」
「お前、これは感情を操作する薬だな」
「どうかしら。被験体経験のある兄さんならわかるでしょ」
おそらく、鎮痛だけが目的の薬ではないだろう。体はどうにかできても心まではどしようもないと考えてのことだろうか。
「これを、扱えるのは、私と遙だけ。ああ、兄さん、自分で服用しないで他人からの口移しというプロセスがないとあまり効果がないから」
そんな、薬あってたまるか! などと、僕は怒りを覚えつつも次第に眠くなりベットに横たわった。まったく無防備だが睡魔が強すぎた。
そして、悪夢をみた。僕が芋生家の養子にはいった。中学一年生の頃の夢だ。
僕は隠し子というより、先の大戦の実験台の一族として孤児院という名の施設でくらしていた。身寄りがないのは嘘で悪魔の魔法という兵器を生み出す薬を体に適合できるかの実験だ。僕はこの施設以外に世界をしらない。こやって薬を飲まされる以外は平穏な世界で一生を終えるんだろうなと思っていた。
不満はなかった。なのに……。
ある日、僕の前に厳格そうな中年男性と僕と年が近い美少女が近づいた。実は、僕は芋生家に隠された子供であり、期間がきたから連れ戻しに来たとのこと。
そこから、僕は平凡ながら裕福な家庭に育ち、そして、凡庸な学生生活へと変わる。外界の人間とはコミュニケーションがうまくとれないが幸せだったと思う。思うことにした。
そして、実の父がある日、言った台詞が『妹、五百子を抱きなさい』という言葉だった。世間上は養子になっているから問題ないという滅茶苦茶な言い分だった。だけど、実際は五百子は血のつながった妹だろ? 僕はそれがショッキングでたまにこの光景を夢にでてきてしまう。全く、とんでもない悪夢だ。
この後、強制的に五百子と関係を持たされることはなかった。それどころか、その台詞が全くなかったかのように時は進んでいく。僕は安堵した。五百子とは普通に接していた。
僕は、昨日の出来事を引きずりながら家族と朝食をとる。家族は素知らぬ様子で五百子は顔を合わせずじまいで僕だけが気を使って消耗する。こんな、不味い食事は久々だ。
家をでる。尾瀬遙の件で正直、学校など行きたくはないが、休む言い訳などなく、事実を言って相談するなんてもってのほかだ。それに、新垣君に申し訳ない。
僕は仕方がなくトボトボ歩く。体が重い。そんな中僕は関わりたくない人物に声をかけられる。
「おーい、隼人君」
尾瀬遙だ。しかし、彼氏の新垣君がいない。昨日の事で修羅場になるとか想像したのに。最悪なことばかり考えてしまう。なのに、彼女は気にもかけずにいつものように明るい。
「どうしたの? 元気ないね」
誰のせいだ! 誰の。君が新垣君という彼氏がいながら僕に迫るからだろう。で、新垣君はどうなったんだ?
「新垣君、今日はいないの?」
それでも、やんわりと問う自分が情けない。もう、彼女とは友人ではなく、敵意があるというのに。
「無双はね。他の女の子といちゃついているよ。言っておくけど彼女公認」
なにを、言っているんだ? この女は。今まで三人仲良くしていたというのに。今日、尾瀬さんと二人きりだ。いや、僕を一人にしてくれ。
「そんな、嫌そうな顔をしないで。そうそう、今日も投薬ね」
そういうと、彼女がもっていたペットボトルから水を出す。口に含みながら僕に口移ししようとする。僕は避けたが逃れなかった。女子に対して抵抗するとうことができなかった。それは、僕の心の弱さと経験不足だからだろう。
「ん。ん~。ん?」
またもや、いやらしい声をだしながら薬を僕ののどに流し込む。なにを考えているんだ。
「では、私も……」
「うわっ!」
いつの間にか傍らにいた五百子が僕に尾瀬さんと同様に口移しをしようとする。
これも、また逃れられない。妹にすら遠慮している僕。情けない。
「うん。う~ん。ん」
再度、いやらしい声をだされながら薬を口移しされる。それを、やめてくれ。
「なにを考えているんだ!」
おそらく、二人とも昨日の魔法薬を飲ませたのだろうが公衆の面前で破廉恥なことをしてくれる。周りの通行者ことギャラリーも僕たちに釘付けだ。僕の学校の生徒もいる。このことは拡散して伝わるだろう。
僕は、これからはどう振る舞いすればいい? これからの難行に混乱する僕がいた。
そして、この二人。顔を向けるときにどちらに視線を送ればいい。友人の彼女か妹か。二人は屈託もなく僕を見つめている。その、正直に魔性と呼べる女たちに逃れる術を考える僕がいた。
マネーの事情で挿絵が増えるかもしれません。いま、金欠ですけど(^_^;)