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悪役は誰?

「くっ、離せ」


 森の奥、銀髪の女の子は抱きしめられている僕からもがく。僕は優しく体の全てを触る。


「ああっ。このカスがこんな程度で私が篭絡するとでも?」


「思わないよ。でもね、僕は気分がいい」


 それは、男として当然なのだろうか。それとも、色情に身を委ねたかっただけだろうか。


「気分がいいだと? 貴様のような下郎に心奪われるものか。私が貴様に心許さないのに楽しめることができるとはありえまい」


「君、物凄くあせっている。面白い。それに君は美人だからね。それだけで気分がいいよ」


「な、なんだと!」


 この姉妹は姉と妹以外にこういう風に絡んだことがないのだろう。嫌がる素振りしながら喜びを感じているようにみえる。かつての僕が(はるか)五百子(いもこ)に関係をせまられたように。


 興奮する。


「姉さん、こんな男などすぐに排除しますわ」


 妹も妹の方で姉を蹂躙されるのを恐れながらも半ばその様を興奮していうかのように見える。


「無理だよ。えっと君の名はアルマーかな?」


「下郎に名前など教えたつもりはない」


「まあ、僕も聞こえただけだからね」


「アルマー逃げろ! 先ほどの突撃で力の差がわかった。私達では勝てない。私はここで自爆する」


 姉も姉でこういう変態行為を僕の仕業にして健気にも妹にアピールして興奮しているのではないだろうか?


「できないよ」


 僕はほくそ笑む。


「なぜ、そう言える!」


 姉のエルマー焦りながら噛みつく。


「僕が君をとめられるから。僕は君より上位の自爆人間。本来の突撃型は補助型しか操作できないが突撃型同士なら力が上の持つ方が相手を好きにできる。だから、思った通りに僕から抗えないでしょ?」


 そういいながら、姉の耳をなめる。こんな程度で感じ入っているようだ。妹の方は泣きそうに困惑している。


 なぜ、僕がこんな悪役のようなことをする。それは……。


 本能だ。自爆人間として生まれた本能でそうさせる。僕もこの高揚感に抗えないのだ。おそらくは新垣(あらがき)君がいたずらをまじえて僕にわからせるために動員したんだろう。この姉妹は。でなければ、師団クラス部隊を指揮する人間が相手の力量の見積を間違えるはずがない。


 自爆人間は好色で身勝手に命を捨てて大量殺戮する。


 新垣君はそうわからせたいのだろう。


「姉さんを放せ! 私が代わりになる」


「いやだね。こっちの娘がいい。君が僕の感心をとれるように誘ってみたらどうかな?」


「くっ。ゲスが」


 そう言いながらも妹は服を脱ぎだす。ヌードでもするのだろうか?


 ズガーン! 


 ?


 砦のほうで爆発の音がする。新垣君がいるとはいえ、あっちには遙と五百子という手練れがいる。さほど、気にすることもないと思ったが嫌な気がする。


 僕はエルマーを抱き寄せたまま砦の方へと戻る。妹のアルマーも追いかけてくる。


「よう! 隼人(はやと)。二人は手籠めにしたか?」


「新垣、貴様という奴は!」


 アルマーが新垣君に怒りをあらわにする。しかし、本当に怒りを向けるべきは僕である。


「ことが終わればそうするよ」


 僕は静かに笑って見せた。


「できないくせにな」


「できない?」


 まあ、以前の僕ならそうであるだろうな。


「お前は最上級の自爆人間だが、まだ、理性に束縛されている」


「祖国から女の子をつれて逃げ出して、今もこうやって女の子に現をぬかした僕に理性があるだと」


「だが、お前は誰とも一線はこえていない。紳士のつもりか」


「それは僕の勝手だ。僕をどうしたいというんだ?」


「お前を楽しませてやろうと思っただけさ」


「僕に執着していては使命を果せな……」


 ふと、目につく。


 五百子……。


 五百子が新垣君の肩に背負わされていた。こんなにたやすくできるはずが……。


「最初からお前がいなければ任務は楽勝だったんだよ。痛み分けとしてその姉妹はくれてやる。好きにしろよ」


「そんな、新垣! 私達を助けろ! 本国に返させてくれ」


「知るか! 百合姉妹。もとから、お前たちは力不足だったんだよ。この地で死んでいたことにしてやるから、隼人の物になるか二人で愛の逃避行でもするんだな」


 そう言うと、稲垣君らの部隊は撤退していった。


「くっ、下郎よ。私だけ好きにしろ! 妹は自由にさせてくれ」


「姉さん、私が代わりになる」


「いらないよ、君たちの自由にしたら? 僕には確認することがある」


 結果的に僕の決め方次第でこの姉妹は自由になれた。これは、新垣君がそう仕込んだのか? そんなことより、僕はもっと大事なものを失った。問い詰めることがある。


「遙! 五百子と遙がいれば新垣君なんてどうにでもなっただろ?」


 遙は慌てることなく、むしろゆっくりとほほ笑みながら答える。


「邪魔だったから」


「邪魔?」


「君を独占するには邪魔でしょ?」


「本心か?」


「ええ」


「殴る」


 遙は僕にとってすでにかけがえのないものであるが五百子の件とは別だ。五百子と遙は二人で僕を愛しているのだとおもっていたのに甘かった。素振りを見せつけられただけか。


 僕は拳を遙にむける。しかし、邪魔立てがはいる。


「お前が強いのはわかる。私を殺すことで溜飲を下げてくれ。女を殴るものじゃない」


 なぜ、姉妹の姉、エルマーが遙をかばい立てする。そして、妹のアルマーもわってはいる。


「貴様も外道だが、本国の連中はもっと唾棄に値する。恫喝交渉されたのだろう」


「なぜ、そうといえる」


 質問しながらも思い当たることはある。考えたくなかっただけかもしれない。


「新垣と私たちは派遣されるまえに上の連中に言われたんだ。お前がどうにもならないとわかったら自動自爆をすると通告するように脅せとね」


 自動自爆。


 突撃型の意志も補助型の薬のサポートもなく起爆させられる装置。手綱をとっている人間たちの切り札。


「もういい、僕は自決する」


 僕はうなだれる。どうでもよくなった。


 しかし、自爆用の薬を取り出そうとすると、二人の女の子から絡まれるのだった。なぜ。止める? お互い運命から抗えないのを涙して、三人で抱き合うのだった。

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