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同種の人間

 僕は城壁を登った。城壁外周辺にいるのは人間が50人はいるだろうか。僕は戦いの経験がない、この後どうしたらいいかと迷った。


「我らの陣営ではないのだぞ。指揮はカイラーサーどのに従い、準じて私の命令にしたがってももらわないとな」


 ラベルドさんが言う。たいして慌てていないが語気が強かった。僕は反省した。僕個人の問題ではないのだから。


「すまない、カイラーサー殿進めてください」


 謝るラベルドさんに対して怒りもなくゆったりと返す白毛むくじゃらの魔獣。


「かまわんよ。君らを制御しない我らに問題がある。君らの命を守る約束もしていなしな」


「御冗談を貴方たちは無責任な生き物ではない」


 カイラーサーは『ふむ』と言った後、ゆっくりと返す。場慣れした猛者という感じだ。


「責任か……。相手の交渉しだいだな。まずは状況だ」


 カイラーサーが近辺の部下を呼び出す。


「被害は?」


「城壁が少し破壊されただけです」


 先ほどの爆音をぬかせばあたりは静寂なままである。


「その程度の威嚇なら態態(わざわざ)せずとも交渉の使者を送ればよかろうに相手の指導者も若いのだろうな」


 カイラーサーは僕のほうに視線を向ける。何かをしっているような感じにも思えてくる。


「あの軍装はキ国の者ですね」


 僕は出身国の軍の制服はしらない。特に特徴というものはない。二人の女性を抜かして。女性というよりかは女の子だ。二人とも姉妹なのか似たような雰囲気をもちながらも、一人はキリっとした印象でもう一人はおっとりとした印象だ。軍装というよりコスプレみたいな感じだ。戦いの場に身を置くにしては上半身はだけているし。


 その女の子の間から一人の男が現れてくる。よく知っている顔だ。僕は条件的に隠れてしまう。


「あいさつにしては思慮もないし元気もたりないな」


「これが私としての初任務であってどう近づけばわからないのです。少々いたずらをしてしまいました。恥知らずで失礼しました」


「そうか、キ国の者よ。名前をおしえてはくれないか」


「はい、新垣無双(あらがき むそう)と申します」


 やはり、新垣君か……。僕を逃がそうとした彼がまた僕の前にあらわれるとは。


「では、新垣殿、わたしはインドミルの一砦を預かる。カイラーサーだ。早速だがここにきた用件は? 今宵は客人がいてな。いそがしいので迅速に話していただきたい」


「その、客人ですよ。芋生五百子(いもう いもこ)の奪還ですよ」


 なぜ、五百子が(はるか)や僕も含まれていれば理解できるが。この事情をカイラーサーが知っているわけがない。


「芋生という名の客人はおらんが」


「名前ぐらい変えているでしょうね」


「わかりきった腹の探り合いか」


「そうでもないのでは」


「私がみるかぎり、貴殿たちが欲しがる貴重な客が三人いる。にも、関わらず一人の小娘にこだわる。情事か?」


「まあ、そんなところですよ。実のところ、爆弾人間と補助型人間二人をつれて帰る為に手段はとわれていない。しかし、私は五百子という人間しか頭にないのですよ」


 僕はそれを聞いて必死に慌てた。


「駄目だ! 新垣くん五百子を連れて行くなんて僕たちを逃がそうとした君が何を考えているんだ!」


「久しぶり、でもないかな隼人(はやと)。俺は遙とお前を逃がそうとしたんだよ」


「どうして?」


「交換条件だよ。俺は遙には飽きていた。だから、隼人、お前には遙をつけて俺は五百子を手にする。そういう計画だったんだ」


「そんな、勝手なことを」


「これは、遙も五百子にも打ち合わせていたこと。だが、俺は五百子に嫌われていたんだな。いや、お前のことに頭がいっぱいだったんだろう。どんな手をつかって意中を手にする考えは俺の性質と似ている。そう思った時は笑えたよ。同種の人間を屈服させたいとな」


「五百子はそんなんじゃない」


「隠すなよ。何度も、兄のお前を押し倒したろうが」


「くっ」


「自爆人間は突撃型も補助型も愛が歪んでいるんだよ」


 そんなことはない。僕らは普通の人間だと思っている。


「特に同族想いなんだ。見ろ、この二人を」


 さきほどいた女の子二人だ。悶えながら舌を絡み合っている。


「人前でこれだぜ。この二人は愛し合っている姉妹でだ」


 あまり似てないが姉妹であっていたんだな。そして、僕はとめられない高揚感に縛られている。不純しか僕には残されていないのだろうか。


「このふたりを手に入れたいんだろ? その為の手土産だ。お返しは俺たちの命のやりとり」


「そんな……」


 殺し合って、人を奪いたいなんて僕が思うはずがない。新垣くんは僕をどうさせたい?


「俺たち友人だろ? 分かち合いたいだけだ。泥沼の気分にな。腐りきった世界にあるものは腐ったものだけだ。だから、気付けよ。俺もお前も腐っている。だから、それがなんだというんだ? あるがままに生きているだけだろう。それが、俺の自由」


 そういうと、新垣君が従えている50人は砦へと攻撃を仕掛けてきた。


「やれやれ、とんだとばっちりだな。だが、関係ないといっても殺し合いを見届けてもな。主体が子供だけに」


「カイラーサー殿、我々を砦から追い出してもよろしいのですよ」


「ラベルド殿、遅いというものだ。貴殿らはどうする」


「皆、すまない。私はハヤト君に助太刀しようと思う。不満な者は離脱してくれ難儀だとは思うが」


 誰もが戦う姿勢をみせてくれる。多分、優しさからではなく巻き込まれたらだ。僕の事情に争いが起こることがもどかしかった。


 やるべきことは死力を尽くすこと。


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