魔獣の関
時は夜に近い夕暮れだった。
「住宅というよりなにか砦のようにかんじますね」
僕はインドミルの巣がこことばかり思いこんでいたようだ。城壁に囲まれて先へと侵入を阻んでいる。城壁にあがって警戒しているインドミルという魔獣と目が合う。たしかに説明通りで白い毛むくじゃらの動物だ。しかし、情報外は二足立ちで武器を構えて防具着こんでいるところだ。
「僕たち人間と似ていますね。獣というより亜人という言葉が似あう」
「そうだな。だけど、彼らにとっては獣の方によっている意識があるようだ」
「人間と獣と比べると獣のほうにみられたほうがいいんですかね」
「そういうことではないだろうが、連中は人間より獣に近いと思っているんだろう」
人間には動物を神聖視することもあるが、祖国、禽獣国や虎狼国のように動物を邪悪でねじ曲がっているように表現することがある。魔獣は人間が侮蔑する生物の方がいいと思っているのだろうか。
そんなことを考えていると、ラベルドさんは一人黙々とで門衛に向かい始めた。そして、交渉をし始める。
「許可がおりるまでこの砦に待機することになった。皆、それぞれに面談もあるので心するように」
「警戒されているんですね」
「それは、とうぜんだろう。仮に君らがインドミルより戦闘力が高いとおもっても武力行使はさけるようにな」
ラベルドさんが注意を払っていると一人のインドミルが現れてきて案内される。
「付いて来るがいい」
砦内を歩く。中世の時代劇でもやるような古風な内観だった。松明が明かりを灯しているが薄暗い。それでも、不便な気持ちにはならなかった。
「ここだ」
木造建で一室しかないが広めの建物。外交使節用の宿舎なのだろうか。
「着替えは隣の部屋をつかうように」
まあ、遙と五百子がいなければ気を使うところでもないがインドミルという種族は人間側の気遣いがあるようだ。
いざとなれば僕が彼女たちをまもらなければならい。男としてそう思った。
宿舎では食事が用意されていて人間以外の生物が身の回りの世話をしてくれるのが不思議な感じがしたけど、悪い気持ちにはならなかった。
インドミルは食材を調理して食べる習慣があまりないそうだけど、人間にあわせてつくった食べ物はなかなかに美味しかった。他の種族にでも気を使ってもてなすことができる優しい種族なんだなと僕は思った。浅ましい人間とは大違いだ。
食事も終わり、僕たちは一人ずつ砦の指揮官に面談にはいった。僕たちの全員の素性を把握しておくというのは慎重だな。当然なんだろうけど。
僕が最後に面談にはいった。そこが気にかかった。なにか裏でもあるのだろうか。僕は少し臆しながらもインドミルの指揮官に面談した。
指揮官といっても質素な部屋で執務に必要なものしかおいてないそんな趣だった。インドミルは人間の言葉でゆっくり話しかけてくる。
「まずは私の名前をいう。カイラーサーという。名前など必要性が種族的にはないが、君たちに合わしている」
「ハヤト=オゼ=アイモ―です。あなた方には名前がなくとも不自由しないということですか?」
「いや、不自由はするがね。名前を持つということは自分が特別という意識に支配されると我らは考えるのだ。そういう考えはよろしくないということだ。ところで、君のほかにオゼという性がいるな。家族か?」
「そうですね……。家族です」
「なるほど、半分は嘘とだということを」
「いえ、本当に家族です。いや、すみません。半分は嘘です」
「謝ることはない。偽ることも選択肢の中で必要なこと。私は君たちがどう言おうが私で判断して処理をするだけのこと」
「信用されてないんですね」
「仕事柄の問題だ。私は君たちを嫌っているわけではない」
「複雑ですね」
「ところで、私にとって不思議に思うのが君たち調査団のリーダーが君ではないことだ」
「僕は子供ですし、ラベルドさんは立派な方ですよ」
「判断力、指導力はそうであるだろうが。ハヤト君、君は隠すことはない自爆人間なんだろう? 力を持つものがリーダーになるべきだと私は思うがな」
僕は少し背中が凍りつく。自爆人間を知っていて歓迎するのは人間以外でもいないだろう。
「みるところ、脱走、職務を捨てたというところだろう」
「わかるのですか?」
「先の大戦にもあったことだ。予想はできる。だが、君には警戒しないとな、君自信が災いを呼び寄せるのだよ。わからないことではないだろう?」
「そうですね。いつまで、逃げていられるのか」
「もう遅いよ」
カイラーサーという指揮官が慌てた素振りもなくいう。その瞬間に砦の正面が爆発する音がした
「いつの時代も争いか。生物とは悲しいものだな」
「そんなのんびりとしていいんですか」
「事前に対抗策はうってある。実をいうと君たちが訪れるのも予測していた。君たちが私達を調べようとしたように、私は君を仲間に引き付けたくてな。おそらく、敵は共通している。我らと手を組めば君は生き永らえようというもの」
この、カイラーサーという魔獣はどこまで僕たちをしっているのだろうか? だけど、この魔獣は僕を試している。打って出ろと。僕の成果次第で状況が変わる。僕は砦の城壁まで走っていった。
予定としては2、3話後に挿絵ができます。楽しみです。うまく、話にはまるかわからないけど(^_^;)