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二人をさらって逃げてしまえ

五百子(いもこ)一緒に逃げよう」


「それは、尾瀬(おぜ)さんに言おうとした言葉じゃないの?」


「そうだけど、違うんだ」


「違う?」


 五百子は疑いの視線をだすが、ふっと笑い寛容的な態度をみせる。


「いいよ。兄さんと二人だけなら」


「うっ」


 新垣君との約束も守らなければならない。本当に連れて逃げるのは尾瀬さんの方だ。しかし、五百子もどうにかしなければならない。五百子は大人しそうな女の子と思った。しかし、実は大胆な行動をする人間だということがわかった。


 兄を寝取ったのだから。


 その愛が一瞬の迷いか、病的なほど意中にあるのかはわからない。認めたくないが僕も意識してしまっている。女なら誰でも手をだす色情か兄妹としてではなく一人の女性として好きになってしまったのかわからない。


 尾瀬さんの場合はどうだろうか。五百子と同じで一方的に向こうから関係をもってしまった。新垣君の彼女なのに。しかし、向こうは僕をどこまで思っているかはわからないが、五百子と同じくらい僕は尾瀬さんを意識してしまっている。


 おそらく、新垣君はそれを知っていながら僕に尾瀬さんを託そうとしている。


 この、人間関係はなんなのだ?


 僕は、人生の中で最速にして最低な判断を決意する。

 


 ――二人をさらって逃げてしまう――

 


 僕はこのクズ的な判断を決行するために机の引き出しをあける。


「兄さん、なにをしようとしているの?」


 気付かれたのか五百子の声に少し焦りを感じるが気にしている場合ではない。引き出しをあけると隠しておいた小さな薬箱があらわれる。僕は箱をあけてとっておきの秘薬をとりだす。


「兄さん、なにをしようとしているの? 薬の投与は私の役目」


 それは、突撃型と補助型での間でする薬のことだ。突撃型は補助型に抗えない。しかし、僕の飲もうしているのはその必要としない薬だ。ただし、副作用はある。人格の一時的な崩壊。僕は僕でいられなくなる。そのかわりに自爆魔法ほどではないが圧倒的な魔力を身に着けることができる。


「おい、五百子、俺を愛しているんだよな?」


「うん、戦争で全てが無くなっても兄さんだけがいればいい。私のすべて」


「そうか、だかな、お前の気持ちなど関係ない。お前は俺を所有しているつもりだろうが、逆だ。俺が所有する」


「うん、それでもいい」


 そして、人格が変わった僕は五百子を軽く愛撫してから抱きしめながら五百子を抱き上げる。


「はあ、はあ、兄さん、兄さん、兄さん」


 そして、次の目的である。尾瀬遙(おぜ はるか)をさがす。どこにいるかはわからないが、今の僕には出会った人間の場所にテレポーテーションできる力がある。


「そこか」


 僕は自宅から消えた。そして、尾瀬さんのいる場所へと出現する。


 港から少し、離れた海岸だった。彼女は新垣君と話あったのだろうか逃亡するためにあるていど荷物をまとめた格好をしていた。


「やあ、突然だね。君を待っていたよ」


「遙! 突然だがお前は俺のものだ」


 彼女は驚きも恐れもせずに静かに悟った。


「そうなんだ。そうなんだよね。わかったよ」


 なんで、そんなに簡単に受け入れる。僕は妹を抱いたまま、お前を奪おうとしているんだぞ。


「強引に口説いた君が驚くことじゃないない」


 察していられたのか言葉をもらう。


「けっ、無双(むそう)という男がいながらあっさりだな」


「無双は好きだよ。でもね、君も好きなんだよ」


「ふん、多情だな」


「そうだね、君と一緒で多情だよ。でも、君は私を見捨てられない」


「ふん」


 相手のペースになんか乗るつもりはない。僕は五百子を降ろして、新垣さんに近づく。


「いいよ。しよ」


 そして、僕と新垣さんの愛撫がしばらく続いた。迷い後悔もなかった。


 しばらくして彼女は言った。


「本当はね、無双は君の妹、五百子さんを狙っていたんだ。僕を捨てて五百子さんに乗り移った。本当の計画は五百子さんと私とのいれかわり。五百子さんは置き去りしたあと、無双が告白することになっていたんだ。まさか、君が二人を選ぶとはおもっていなかったしね。彼、そうとう怒るよ」


「しるか! これが俺の精一杯の行動だ」


「うん、それが私もいいと思うんだ」


 いいわけがない。いいことなど一つもない。本能のまま動いているだけだ。僕が自己嫌悪に陥っていると、尾瀬さんは唇を近づけてくる。口移しの薬の投与だろう。本来は突撃型の僕は補助型の彼女に抗うことはできない。しかし、先ほど飲んだ薬は限りなく無敵だった。退くことはできる。しかし、僕は彼女の口移しに身を許すことにした。なにか、ねらいがあるのだろう。


「ん。ん。ん」


 舌が絡みながら飲む薬は喉へと押し込んだ。そして、僕の頭の中から一つの世界がみることができた。


「この薬は情報を与えてくれる。見えるでしょ? 平和に染まった楽園ヘイムハイロウが」


「第三国か……」


 確かに見える。少々レトロな世界だが緑豊かで露店が立ち並び人々が活気満ちている風景が見える。


「もう、場所がわかったでしょ? 五百子さんと私をつれて逃げて。言っておくけど無双の手はずに乗ると五百子さんが引き離されるだけだよ」


「お前は、五百子の味方なんだな」


「違うよ、君、隼人(はやと)君の味方だよ」


 こんな、クズな僕に。だけど、迷うことはなかった。五百子と尾瀬さんを抱いてテレポーテーションをおこなった。


そして、広々とした草原に出現する。一目もあるからここを選んだ。おそらくはここが第三国、堕落国(だらくこく)、ヘイムハイロウについたのだろう。


 ここで、俺たち三人は平和で幸福に生きて行けるのだろうか? 流石に大量の魔力を使い果たし僕はここで疲れ切って倒れて眠ってしまった。


この、サブタイトルはとある漫画コミックのあまけあとがきに書いてあったのを真似しました。印象的だったので。こういう選択ありだよね? 

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