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国外逃亡

「別に第三国にいけば安全というわけではないでしょ」


 僕は新垣(あらがき)君に食って掛かる。しかし、彼は平然としている。


「俺と(はるか)の故郷はそこだ。ここにいるよりかは何かがかわるだろう」


 憶測しかないことをいわれる。しかし、この二人は第三国家出身とはね。第三国は自国、隣国にとって蔑称の言葉でもある。戦うことをやめた劣等国家だと軽蔑される。


 この際、僕の住む世界を説明するとしよう。


 第二次魔法対戦により、五大陸と呼ばれる大陸のうち二つは壊滅、残りの大陸も何割かは消滅している。僕の住む世界は海水面積の方が多い。


 我が国は禽獣国(きんじゅうこく)と呼ばれ、隣国は虎狼国(ころうこく)と呼ばれる。そして、第三国はヘイムハイロウと名乗っている。


 第三国だけ横文字だが中立国家は卑下を受け入れない。本当は堕落国(だらくこく)などと呼ばれるが本当は軍事以外で一番繁栄されている。


 自国の禽獣国にもちゃんとした国名があったが、隣国の虎狼国といっしょに最大クラスの魔法の力を放って全ての記憶を抹消してしまったのである。記憶にも文字にもでてこない。お互いに侮蔑した結果がこれだ。自国の名前を誇れなくなったのである。自分たちの国は本当はなんていう名の国かわからないのだ。滑稽だよ。


しかし、禽獣国、虎狼国では呼びづらいし、名乗りづらいのでキ国とコ国でとおっている。あらたに国名を作ることもできない、そういう呪いの魔法だ。僕たちの先祖たちは誇りすら奪い合っていたのだ。どうしようもなさすぎる。


「たしかにヘイムハイロウに溶け込めば幸せになるかもしれない」


「ああ、あそこは平和だ。だが、あそこはな、キ国とコ国との争いを傍観することで平和が成り立っている」


「うん、わかっている。だから堕落国と蔑称されている」


「だけどな、馬鹿にされたって平和のほうがいい。誇りをかけて戦うのは存亡をかけるときでいい」


「だけど、第三国に君たちがいたの?」


「ヘイムハイロウも一概にクリーンな国ではない。俺たちと同じ自爆人間を横流ししているんだよ。気配無き獣さえな」


 争いを好まない中立国家が武器商人のようなことをしているのか。


「俺と遙はキ国から逃亡した人間の子孫だ。補助型だが資質を見込まれてこちらに連れてこられたというわけだ。ある程度は逃げてこられたけどな」


「僕だって、逃げてもどうせ捉まるでしょ?」


「2年でお前は死ぬ予定になっているって言っただろう。それを変えたいんだよ」


「2年間は生き続けろと?」


「そうだ。そこで世界がかわる」


「どうして?」


「今は教えられない。だが、同士に遙とお前をヘイムハイロウに連れて行くように手はずになっている」


「新垣君は逃げないの?」


「俺はお前たちの人質のようなものだ。逃げるとしたらお前たちは国に対して背反だろ? お前が自爆攻撃するとも限らななくもないと考えられる。こちらに攻撃しかけると俺が死ぬ。その為に残る。人質として価値はあると思いたい」


「僕はそんなことしないよ。君には、なにか、別目的があるんじゃないかな? 君は別の犠牲になろうとしているように思える」


「勘ぐるなよ。俺が決めたことだ自由にさせてくれ」


 自由か? 僕は尾瀬(おぜ)さんと第三国に逃げて自由といえるだろうか。


「もしかして、妹さんが心配か?」


「それを、考えてなかった。でも、可哀想だけど、僕と五百子(いもこ)の関係はよくない。置いていくよ。できる範囲でいいから妹をお願いね」


「わかったぜ!」


 ふと、なぜ、そう感じたかはわからないが新垣君から不穏な空気が漏れた気がした。頼っておいて、疑う感情はよくないと思い思慮の外にする。


「新垣君、新垣君の友達で僕はよかったよ」


「礼なんていいぜ。この紙に地図が載っている。✕印が集合場所だ」


 なんだか、都合よく手はずが整っているな。少し不安だが紙を受け取る。


 そして、新垣君とは別れて自宅へと向かう。五百子に最後の挨拶をするためだ。

 



 甘かった。


 またもや、僕は五百子に押し倒された。体中を一通り触られてから妖艶にほほ笑んでは話しかけられる。


「国外逃亡なんてお見通し。兄さんはどこにも行かせない。私のもの」


 その、言葉に恐れも走ったが情も感じてしまった。だから、五百子はつれて行きたくはなかったんだ。認めたくないが意識してしまっている。だから、連れて行きたくない。だが、それより阻止されてしまっている。


 そして、逃亡が無理だと思ったら、頭に浮かんだのはもう一人の女性。


 尾瀬遙(おぜ はるか)さんだ。


 僕って奴は新垣君に託されとはいえ、どうして同時に二人の女の子を想ってしまうんだ? そして、僕の中の悪魔が囁いた。


 これなら、通用するだろう。


「五百子」


「なに、兄さん」


「お前も一緒に逃げよう」


 僕という人間はどうしよもなく最低だ。二択を一択に選べない。女の子を二人連れての逃避行とは。


 しかし、尾瀬さんが僕と逃げるとは限らない。新垣君と約束とは別になるが僕はそれにかけた。


 どうしよもなく最低だ。


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