始まりの終わり
なれない、お題を挑戦します。遅筆ですがどうか読んでみてください。
静かな朝が騒がしくなろうとしている。
「よう! 隼人!」
背中をバン!
「おはよう、隼人君」
肩をバン!
いつも僕を叩いてあいさつをする衝撃がなんとも心地が良い。
この二人はどうして僕にチョッカイをかけてくれるのかな? 二人の男女が一人で登校する僕にハグをしてくる。それは傍から見て痛いほどに。
僕の名前は芋生隼人。冴えないし引っ込み思案で目立たない高校生。今年で二年になる。
僕に声をかける二人は僕のクラスメイト。二人は付き合っているカップルだ。いつも、二人でいちゃついていればいいのにいつも僕を仲間にいれたがる。まあ、僕はそれに救われているんだけどね。
「や、やあ、新垣君、尾瀬さん。おはよう」
僕はぎこちなく返す。それが二人は気に入らないようだ。
「はや~と! よそよそしいぜ」
「元気よくしてね。この、無双と遙がつるんでいるんだよ。最強だよ」
どうでも、いいけど、上目線な感じは否めない。不快ではないけどね。
この二人のカップルはなぜか僕の友人である。二人は新垣無双と尾瀬遙だ。二人とも誰にでも好かれる人間だ。地味な奴は嫌いだ、笑えるよねとかディスることもなく、なぜか路傍で行き倒れしている貧民のような僕を構ってくる。人生とは不思議だね。でも、三人で無敵とかわけのわからない選民思想は僕には理解できない。
「あれ? お前、妹さんいなかったけ? 同じ高校に入ったんだろ? なんで別行動なんだ?」
「無双、都合とか気恥ずかしいとかあるじゃない。詮索しない」
全くもって尾瀬さんの言う通りの理由で妹は一緒には登校しない。兄妹の仲が悪いとかではないんだけどね。
「隼人の妹って、結構、美人さんだろ? 楽しみにしていたんだけどな」
「無双、浮気しない」
尾瀬さんはからかい半分で新垣君を責める。頼むから、そのイチャイチャを僕抜きでやってくれないかな? 中にいる僕としては反応しづらい。
「浮気? 勧誘だな! お前に隼人と隼人の妹が組むんだぜ?」
「さらに、無敵ってことね」
尾瀬さんが生き生きと拳を振るう。
「あの~。その戦闘でもするような考えは何?」
「戦闘ではないな。注目される集団だな」
僕は深く息を吐く。なんだか幼稚な考えで聞くに堪えない。
「隼人! 呆れるな! 重大なことだぜ。俺たちはモテる。モテるからこその人を近づけさせない抑止力として仲間が必要なんだ」
「なに、その考え? 君らは付きあっていると知っていてもいいよる男女はいるよ。でも、僕はなんの役割? というか、これが友情?」
「ま、まあ変わった友情ね」
尾瀬さんが戸惑った態度をとる。でしょ、新垣君の言動おかしいよね。
「でも、わかってないの? 君、結構な優男だよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
「まあ、隼人の奴は自信がないからな。そういうキャラづくりか? 女子に俺一人だからかまってアピールか?」
「新垣君、僕は地でこういう性格だよ。そもそも、人生で女子にモテたことないしね」
「卑屈な話だな~。でも、高校では一番に俺らがお前をとっちゃったからな。皆の妬みが怖いわ~。な? 遙」
「そうね、隼人君のファン多いからね。私達で君のブログつくって人気上々だしね」
なに? その恥ずかしいのは、この二人は僕にここまで固執するのが少々怖い。だけど、この二人がいなければ孤独な学校生活で終わっただろうと思うとありがたい大切な友達なんだよね。
三人、仲良く笑いながら通学路を歩く。それが、これからの破局の道へとは知らずに……。
学校の授業では聞いていれば平均的にいれる。寝てしまえば、自宅で復習すれば問題なしだった。特に優等生になるつもりもなく日々、ゆるく時が過ぎさえすればいい。学生生活が終われば、僕らに兵役というものが、待っている。
僕には夢がないので、普通に働いて日々平和に生きて行くことが、まあ、望みではあった。戦争の悲惨さは映像上の話でしかわからない。正直、あまりよくわからない。世界大戦で人間の人口が激減と教われれば、今は人口の大激増の時代である。そのうえ、AIに仕事が判断される時代になり、僕にはどう人生を歩むかがわからない。
しかし、機械より厄介気回りないのがある。人間以上に悪意を受け継いだもの、それは太古から存在し、インチキな占い師に相談する者もいれば、国家政治の判断にまかせられて暗躍する予言者もいる歴史。特に傷病を救えば神と称えられて、たどり着いた矢先は医療の発展から始まり果ては夢や妄想を超えてしまったと厄災という存在。
――魔法だ――
僕たちはこんなものに左右されながら日々平和面を装って生きている。
魔法の使用ができるプロセスは簡単だ。薬を飲むこと。魔法の魔は、本来では麻薬の魔である。薬学に精通している人間が本来人間の精神状態を強化するために生まれた。しかし、人間爆弾のような特攻するための特効薬などという、つまらないジョークが先の対戦の最終局面を制覇した。
僕の知っている英雄だが嫌いだから名は伏せておく。たった一人で犠牲になって、たった一人の為にとある国の首都を壊滅した英雄にして唾棄するべき人物。
今は、悪の象徴として存在し、敗戦者の償いという名の押し売りで霊廟に眠っている。遺体はないけどね。
ふざけた話だ。結局は殺戮の果てに母国は負けてしまったのだ。
壊滅した敵国首都の人間も先導者という聖人がいて、その人間が予言して首都脱出がおこり全滅は避けられたのだ。
その聖人の名は イモーコー・アイモー。覚えられなければ忘れてくれていい。
罪人の名は芋生酩酊、僕の曽祖父だ。忘れて欲しい。
「そんな、暗い話はやめようぜ」
「まあ、そうなんだけどね」
放課後のことである。教室で僕ら三人はだべっている。
ついつい、新垣君に僕の素性を話してしまっている。近代史の時間が終わってから。
「そうだよ、昔のことなんだから、隼人君が芋生酩酊というおじいさんだなんて皆知らないでしょ?」
尾瀬さんも気を使ってもらう。基本的に僕はネガティブなんだから、過去の事はほじらないで欲しい。近代史は嫌いだ。でも、こうやって気を使ってくれる仲間がいることがうれしい。
「だけどさ。芋生という苗字でだいたい、僕に感づかれるんじゃないかな?」
「お前は人気者の有名人だぞ。幼少の時は孤児院育ちで芋生家に養子入りしたことなんか皆知っているぜ」
「ちょっと、新垣君。僕のプライバシーとか考えていないの?」
「まあ、生い立ちも魅力の一つに繋がるんだぜ? 俺たちは隼人とくらべて凡人だよな」
「無双、これだと、不幸自慢させているみたいじゃない。やめなさい」
「そうか? ごめんな! 隼人」
対して悪気もなく謝る新垣君。僕としても友達に言われたぐらいでは傷つかない。いや、そうでもないけど、耐えられる。
しかし、芋生家に養子になったことで重大な秘密がある。それを考えると頭が痛くなる。
「どうしたの? 隼人君」
「いや、いつもの頭痛がね」
「そうだったね。私も頭痛もちでさ、薬分ける?」
「いや、自分で服用しているものじゃなきゃ危ないよ」
「心配性だね、ただの市販の薬なのに」
尾瀬さんと僕との間を挟んで電話がなる。新垣君の携帯からだ。
「もしもーし。ああ、ああ、ああ? ああ、わかったよ。しょうがねえな。そっちに行くよ」
こちらとしては、新垣君の「あ」しか内容がわからないが詮索するほど気になることでもない。彼女の尾瀬さんですらどうという反応はしていない。
しかし、ここからが起爆の始まりであった。
「わりい、二人とも。ちょっと身内の用で先に帰るわ」
「気を使わなくても僕らもすぐ帰るよ」
「いーや、隼人は遥に薬わけてもらって少し安静していろよ」
? なんだか、不自然なやさしさだな。
しかし、僕も常備薬をわすれてしまい、頭痛が気になっていることは確かなので甘えることにする。
「じゃーぁな、お先に」
そう、言って新垣君は先に教室から退散する。思えば、放課後のこの教室は僕ら三人だ。今は尾瀬さんと二人だ。静かな佇まいに緊張が走る。
「えっと……」
「ちょっと、水汲んでくるね」
「じゃあ、僕も」
僕も、尾瀬さんも、よく頭痛薬は飲むから専用に校内にコップは持ち合わせている。
「私のだけでいいでしょ?」
「いや、だって……」
「いいの!」
そう言って尾瀬さんが強引に廊下の水道に水を汲みにいく。さほど、時間はかからない。
「おまたせ」
待つほど時間は立っていない。尾瀬さんの唇を見つめてしまう。なんだか色っぽい。しかし、僕は邪な考えを拭い去り彼女が薬を飲み終えるのを待つ。待つ必要なんてなかったんだ。
え?
尾瀬さんは水と薬を含んだまま、僕に口移しをした。そして、嫌らしい声を立てながらしばらく時が流れた。
「ん~。ん! ん~ん?」
それだけで会話は成り立った。認めたくないがこういうことだろう。口に出したくない。
「ここまでして、理解できないなんていわないよね?」
「できないよ! 新垣君はどうなるの?」
「彼も同じことをしているわよ。今頃ね。この薬は頭痛薬じゃないわ。魔法薬、そう、恋の魔法ね」
「散々、薬は飲まされてね。薬の味は知っているよ! 僕の過去知っているようでしょ? 魔法薬の被験体だって」
「君が自爆特攻してくれる一族なら、私達は君たちを利用していた一族なのよ。だけどね、無双も私もそれが嫌で一族から抜けた身でね。だから、彼も私も君には好意をもてたし、見守れた」
「彼との関係は?」
「同志よ。だけど、大戦がまた近づくにつれて逃げられなくなっちゃってね。それを覚悟した時には君を愛してしまったの。どうしてかしら?」
僕を弄ぶかのように彼女は言ってくる。状況を楽しんでいるようだ。
「知るかよ! 君の心でしょ?」
「どうかしら、君の心の中に入ってしまったわ。あなたで感じてみては?」
無茶苦茶ないいぶりだな。だけど、体内に溶け込んだ薬の効用があらわれる。そして、彼女が盲目的なまでに僕が好きでどうしてくれようかと伝わってくる。やめてくれ!
「隼人君、君が私を愛し続けてくれるのなら、いえ、所有されているだけでいい、誓うのなら、君は絶対に殺させない自爆人間になんかさせない」
「そ、そんなこと答えられるかよ」
僕は、呪われた一族から救いを差し伸べられているのはわかるが、こんな関係は嫌だ。
「あと、もう一人邪魔な存在がいるけど。その子には今のやり取りを動画で送っちゃったから」
「誰?」
「さてね」
そう言って、一女子高生がとれない動きと速さで彼女は教室の窓を跳躍して去っていった。
僕は不快なまま帰宅をして、家族の間でぎこちなく食事をとり、直ぐ様に寝室にはいった。
そこには、妹がいた。なぜ、いるのかは僕にはわけがわからないが話があるのだろうと決めつけた。
甘かった。
妹に押し倒される僕がいる。どういうことだ? 身動き一つとれずに硬直する僕に愛撫する妹がいる。
甘かった。
ただ、女の考えがわからないでいる僕がいた。妹は一言も喋らなかった。
愛でも恋でもない。しかし、向こうは違うようにみえた。
できれば、自由に指摘や感想お願いします。
なろう、久しぶりに使います。しばらくは執筆します。