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灰色の宝石  作者: taxi
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「ごめん、待った?」


ユリカは、校門に座り込むユウキに声をかけた。



「いや、俺も終わったところ。」



ユウキは腰を上げ、尻についた砂埃を払い

そのまま立ち上がった。



「ユウ君も武道を初めて、もう2年が経つね。

 最初は意外だったけど、ちゃんと続いてるね。」



ユリカは笑いながらも関心している様子だった。



「うるさいな、うちの学校は体育会系の部活が

 ほとんどだから、友達も多い武道部が

 ちょうど良かったんだよ。

 実際なんでもロボットがやっちゃう時代に、

 格闘技なんて習ったって仕方ないかも

 しれないけどな。」



そう言いながらも、ユウキはまんざら嫌いでは

なさそうだった。



ユウキは足を上げ、靴の側面のボタンを押すと

緑色の電磁界が現れ、足をつくと少し浮き上がった。

歩道も少しだけ緑色に光り、靴と歩道が磁界で

繋がりあっている様子だった。

ポケットからスマートフォンを取り出し、

操作し、「自宅」と話しかけると、

自動的に体が進み、流れるように自宅の方角へ

向かっていった。



「ちょっと待ってよ!」



ユリカも急いで、靴のスイッチを入れ、

スケート靴で滑るように追いかけてきた。



ユリカは、ユウキの横に並ぶと

同じようにスマートフォンに「自宅」と伝えると、

自動運転に切り替わり、足を止めて移動を始めた。



周りは同じように、人が立ったまま移動し、

ほとんどの人は、スマートフォンで何かを見ながら

移動していた。人間、障害物、自動車でさえ、

プログラムのおかげで、ぶつかることなく

避け合いながら進行することができている。

電磁界には緑色と赤色があり、緑色は動作、赤色は停止を

表しており、自動車の下にも電磁界があった。

周りの動作物の足元と道路は、動作に合わせて、

緑色、赤色に発色していた。




「そういえば、あの子はどうだった?」



ユウキはずっと気になって様子で、

ユリカのほうを向いて問いかけた。



「春原さん?すごく良い子だったよ。

 テニスもやってみたいって言ってた。

 今までほとんど家にいたからいろんなことを

 やってみたいんだってさ。

 ただ、家にいる時間が長かったから、

 急に体を動かしちゃダメって親から

 言われてるんだって。

 ずっと楽しそうに見学してたよ。

 でもどうしてずっと家にいたんだろうね。

 病気だったのかな。」



ユリカは、笑顔だったが少し寂しそうだった。



「護衛の人になにか言われなかった?」



「うん、大丈夫だったよ。

 話は聞いてたみたいだけど、ピクリとも動かなかった。

 ロボットのほうはわかるけど、スーツ着てた人も

 表情がなかったな。」



ユウキが「そっか」と言うと、

ユリカはニヤっとして話を続けた。



「でも春原さんが、登校し始めたら大変だと思うよ。

 近くでみたら、すっごく美人だったからね。

 男子生徒の質問攻めにあっちゃうんじゃないかな。

 だから、ユウ君も気になってるんでしょ、

 春原さんのことを?」



ユウキは目を見開くと

少し動揺した様子だった。


「馬鹿違うよ、春原って、あれだろ、

 機械メーカーの「HARUBARA」って会社の

 関係だろ?うちの親戚もそっち系だから

 気になっただけだよ。」



ユウキの動揺している様子に、

ユリカは「あやしいなー」と笑いながら

ユウキの顔を覗いた。



「ほら、もう家につくぞ!」



ユリカは、「はいはい」と笑いながら、

空を見上げた。



「もう夕方でも明るくなってきたね。

 暖かくなってきたし。春はいいなー。」



ユリカがそういうと、確かに

日の入りが少し遅くなってきたと思う。



「それじゃ、ユウ君、また明日ね!」



ユリカがそう言うと、白い2階建ての一軒屋の前で、

ユリカが停まった。



「おう!」とユウキが返事をし、そのまま

家に向かっていった。ユウキの家はそこから

100mも離れておらず、2人は幼馴染で育っていた。



ユウキは家に到着すると、靴のスイッチを切り、

ドアの横のモニターに暗証番号を打ち込み、

指紋を読み込ませた。するとピピッと電子音が鳴り、

ドアロックが外れた。



ただいまと言いながらドアを開けると、



「おかえり」



と母親が腕を組み、怒りの形相で

待ち構えていた。



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