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第五話

 

 暫くして風呂から上がったレンは翌日、どう行動するかをラトと話していた。


「ラト、明日は近くの都市まで向かいたいと思うんだが、ここら辺の事は分かるか?」


 レンはこの世界が【RoE】と酷似しているとしたら近くに都市、又はそこまで行かなくても最悪でも街はあると思っていた。


「多分大丈夫なのです。奴隷商の人が話していたのを聞いたのですが、【ゴブリンの森】を抜けてウォルター王国の首都でもある、王都【シュトレン】を目指していたみたいなのです。」


 ラトに聞いてみるとどうやら王都がこの森を抜けた先にあるとのことだ。


(ウォルター王国・・・ねえ、やっぱり【RoE】の世界とも名前が似てんだな。)


 とそんな事を考えていたらラトは自分の近くに立て掛けてあった木の板を拾い簡単な地図を描き始めていた。


「まずコレがゴブリンの森なのです。」

「え〜と?ラト?この落書きの様なのはなんだ?」

「絵が下手なのは放っておいて欲しいのです!・・・それでこの森から出てこの辺りに王都があるはずなのです。ただ、今私達が森のどの辺りにいるかが分からないのです。」


 とラトは顔を赤くしながら、狐耳をぴょこんとさせて言っていたので、レンは思わず狐耳をもふもふと撫でる。


「そうか、じゃあそろそろ寝て、明日この森を抜けて街道を探す事から始めようか。」


 ラトの頭(正しくは狐耳)から手を離すと、気持ちよさそうに目を細めていたラトは『なんで止めちゃうのです?』と言わんばかりにレンを見ていたが、それを無視してベッドへと入ろうとする。だがベッドが一つしかないことに気付いたレンはインベントリから寝袋を取り出し、床に敷いた。


「ご主人様?ラトはそちらで眠れば良いのです?」


 レンが床に敷いた寝袋に指を差す。


「女の子を床に寝かす訳にはいかないだろ?この寝袋は俺用だ。」


 そう言ってレンが寝袋に入ろうとしたらラトに肩をガシッと掴まれたので振り向きラトと目が合う、するとラトは首をふるふると降っていた。


「あり得ないのです。ラトは奴隷なのです、奴隷がベッドを使って、ご主人様が床に寝るとか無いのです。なのでラトがソレを使うのです。」


 と言ってラトはレンが持っている寝袋をバッと奪い取ろうとする。

 レンは躱しつつラトの頭に手をやり、握る。つまりアイアンクローである。


「女の子を床に寝かすとか鬼畜じゃないんだから、素直にベッドを使え。」


 レンはそんな事を言っているがアイアンクローである。傍から見れば鬼畜以外、何者でもない。


「痛いのです、痛いのです、痛いのです‼︎分かったのです‼︎ラトはベッドで寝るのです‼︎あ!そうだ‼︎ご主人様も一緒に寝るのです!それなら誰も床で寝る事ないのです。」


 手をバタバタさせながらラトはベッドを使うと言っていたが、何を思ったのか急に"一緒に寝ればいい"等と言ってきた。ここでダメと言っても『ならやっぱりラトが寝袋で寝るのです』って言うのはここまでのやり取りでレンにも予想がついていた。


「はぁ・・・、分かった。とりあえずさっさと寝よう。明日、朝早くから動けば街道位なら見つかるだろうし。」


 レンがそう言ってベッドへと横たわると、ラトは『ご主人様がデレた』とか言ってた。レンはデレじゃないと思いつつも早く寝てしまおうと目を閉じた。


 翌朝、目が覚めるとベッドにラトの姿が無かった。何処へ行ったのかと、起き上がり小屋の外へ出て見ると、ラトが木の棒に弦を張り弓らしきものを作っていた。


「あ、おはようございますなのです、ご主人様。」


 扉の閉じる音で気付いたのか、手を止めてレンに挨拶をする。


「あぁ、おはよう、ラト。ソレは何をしているんだ?」


 レンは弓らしきものを指差し、ラトに質問をする。


「あぁ、コレです?ラトは弓が使えるのです。なので朝食を作る為に、獲物を採ろうと思ったのです。」


 弦の張りを確認するように、二、三回、弦を弾きながらラトは答えてくれた。


「へぇ、中々良く出来てるじゃないか。街道までの道中、ラトの装備品はどうするかと思っていたんだが、弓が使えるなら後ろで援護を頼むよ。」


 ラトが持っている弓を借りてレンも弦を弾き構えて放すと、ビュンと中々良い風切り音を出していた。


「でも、コレは即席品なのです。とても魔物と戦う事は出来ないのです。」


 ラトが作った弓は、戦闘で魔物に攻撃するには威力が足りる様には見えなかった。


「あぁ、違うよ。その弓を使ってじゃないよ。え〜と・・・お?コレならちょうど良いんじゃないか?」


 インベントリから前に雫が使っていた【風読みの弓】を取り出す。初期の弓を使わなくなった雫から何故か渡された物がインベントリの倉庫にあった為だ。


「わぁ!コレ、使って良いのです?ありがとうございますなのです。ラトはコレでご主人様を援護して見せるのです。」


 レンから弓を渡されたラトは嬉しそうに受け取った。レンは更にインベントリから矢の入った矢筒も取り出して、ラトへ手渡した。


(そういや、ラトのステータスって見れるのかな?ちょっと確認して見るか。)


 そう思ってレンはラトに聞いてみる。


「なぁ、ラトのステータスって見せてもらって良いかな?」


 するとラトはまた不思議そうな顔をして


「ふぇ?ギルドの鑑定士さんの所に行くのです?」


 どうやら普通はギルドの鑑定士の所で見てもらうとの事だった。ただ、レンは【鑑定】のスキルを持っている、鑑定士と言う位だからおおよそステータスも【鑑定】で見ることができるのだろうとレンは予想していた。


「いや、俺自身【鑑定】のスキルがあるからそれで見てみよう。」


 そう言ってレンは【鑑定】を使ってみる。


 -----------------------------------------


 名前【ラト】

 職業【レンの奴隷】

 種族【獣人(狐)】【女】

 年齢【15】


 LV  1


 HP46

 MP60


 STR 24 VIT  18

 INT  31 MND 43

 AGL 65 DEX  10

 LUK 11


 SKILL

【魔術LV1】【弓術LV2】【魔法適正(水、風)LV1】【生活魔法】【調理】


 -----------------------------------------


「ふわぁ、ご主人様は何でも出来るのです。凄いのです。」


 ラトは目を輝かせていたが、レンはそれ以上に気になるものを見ていた、ラトのステータスのスキル欄に【魔術】があったのだ。


「ラト、お前、魔法が使えたのか?」


 するとラトはまたしても首を傾げていた。


「ふぇ?魔法なんて使えないのですよ?」

 どうやらラトは自身のステータスを見た事が無かったようで、魔法が使える事は知らなかったみたいだった。


「ラト、コレを指に嵌めてみてくれ。」


 レンがインベントリからもう一つ【ウィザードリング】を取り出してラトの前に差し出す。


「はわわ・・・、いきなりプロポーズなのです?・・・ご主人様、そんな冷たい目をしないで欲しいのです。」


 ラトがおかしな事を言い出したので、レンは指輪を持ったまま冷やかな目でラトを見ていた。


「それが魔法媒体になるんだ。後は詠唱なんだが、何だったかな?詠唱なんて、ここ最近唱えてなかったからなぁ。」


 顎に手を当ててレンは思い出そうと、考え込んでいた。そんなレンの横で邪魔をしない様にラトは静かに待っていた。


「・・・確か『風よ、その力を矢と変えて、我が敵を穿て』だったかな?」


 暫く考え込んでいたレンがウィンドアローの詠唱をラトに教えた。


「出来るとは思えないのですが、やって見るのです。『風よ、その力を矢と変えて、我が敵を穿て、ウィンドアロー』」


 ラトは半信半疑にも指輪を嵌めて、少し離れた位置にある木に向かって魔法を使ってみる。

 するとラトの周りから魔力の風が手に集まり目に見えない矢となって木を破砕した。


「はわわ・・・、本当に出来たのです。凄いのです。」


 破砕された木を見てラトは呆然としながら呟いていた。


「まぁ、まだ魔力もそんなにないし、弓と合わせて使って行けば、魔力切れを起こす事も少ないはずだ。」


 ラトの頭を優しく撫でたレンは直ぐに出発の準備を始める。


「さぁ、今日は森を抜けるのを目標に動くとしようか。援護は頼むぞ?」


 暫くして準備を終えたレンは剣を腰に下げ、立ち上がった。


「はいなのです。ご主人様の為にもラトは頑張るのです!」


 ラトは弓を片手に、レンの後を追って歩き始めた。

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