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第四話

 

 コテンと可愛らしく首を傾げた少女にレンは問いかける。


「いやいや、そもそも俺の奴隷になる事に思うことは無いのか?」

「奴隷紋があるので、ご主人様がいないとダメなのです。でも、優しいご主人様は大歓迎なのです。」


 どうやら、奴隷紋というものがあって主人が死んだりして、いなくなってしまった場合、奴隷も共にする様に、死を待つだけになる様だった。例外として、前の主人が死んだ時、奴隷自身が次の主人と認めた場合、権利が移るらしい。


「はぁ・・・まぁいい、とりあえず飯を食おうか。後、俺は奴隷だろうが君と一緒に飯を食うのも気にしないし、何より飯は可愛い女の子と食った方が美味いだろ?だからそこに座って飯を食べてくれ。」


 とレンはとりあえず座る様に再度促す。すると少女は顔を赤くしながら恐縮していた。


「か、かか、可愛いって私の事なのです?はわわ・・・初めて言われたのです、ご主人様は変わり者なのです?」


 さりげなくレンの事をディスってくる少女。


「変わり者って酷いな・・・、可愛いものは可愛いって言ってもおかしくないだろ?」


 レンはそう少女に言いながら、焼け上がった肉を皿に乗せて少女の前に差し出す。


「さぁ、遅くなったけど自己紹介でもしとこうか。って、そう言ってもここで目覚めるまでの記憶が無くて俺の名が〔レン〕って事位、しか無いんだがな?とりあえず俺は君の事はなんて呼べばいいのかな?」


 レンは自分が別の世界から転生した事を伏せ、記憶喪失という事にして自己紹介をする。


「私はラトって言うのです。ご主人様はもしかして【迷い人】なのです?」


 少女〔ラト〕は皿に乗った肉を見つめながらも自身の名前を名乗り、更に気になる言葉を伝えてきた。が涎を垂らしながら言われても色々台無しである。


「あぁ、喰いながらでいいよ、それで【迷い人】って何だ?」


 レンも皿に乗った肉を食べながらラトに対して、食べる事を勧めて話を続ける。


「は、はい、では頂きますのです。あむ・・・ッ‼︎お、美味しいのです、とてもとても美味しいのです‼︎」


 ラトは一口、肉を口に運ぶと驚愕の表情に変わり、直ぐに恍惚の表情へと変わり、狐耳をピョコピョコさせている。


「・・・ハッ!申し訳ないのです。あまりの美味しさに我を忘れてしまったのです。それで【迷い人】というのは、お伽話なのですが何処からかこの世界に迷い込んできた人らしいのです。その人は、自分の事以外、何も覚えてなかったのです。ですがその【迷い人】はとても素晴らしい力を持っていたと言われているのです。なので、もしかしたらご主人様も【迷い人】なのかもしれないと思ったのです。」

 そうラトはレンに教えてくれた。


(もしかしたら、【迷い人】ってのは何処かの世界、又は俺達の世界から、この世界に迷い込んで来た人物なのかも知れないな。)


 レンは一口大に切った肉を口に運びながらラトから聞いた【お伽話】について考えていたが、ふと気になることがありラトに尋ねてみる。


「なぁラト?例えばの話なんだが、もし本当に俺がその【迷い人】って奴だった場合、なんか不味い事とかってあるのか?」


 アニメや小説等では、異世界の人間と言えば強力な戦力としてか、はたまた新たなる知識の宝庫の様な物として利用されたりすることがあったりする為だ。


「不味い事です?う〜ん、何も無いのです。まず【迷い人】というのは記憶が無いので知識を頼る事も無いですし、素晴らしい力を持っている為、お伽話等では自身の力として取り込もうとする方もいたにはいたらしいのですが、領主の方や【迷い人】自身から手酷くやられたりしていたりするので厄介事は少ないのです。まぁ、そもそもの話が【迷い人】自体信じる方自体が少ないので不味い事は何も無いのです・・・多分。」


 と、ラトは顎に人差し指を立てつつ再びコテンと可愛らしく首を傾げて教えてくれた。最後の言葉に不安を残しているが。


「そ、そうか、まぁ俺としては厄介事に巻き込まれなければいいんだがな・・・。あぁ、肉もっと食うか?まだ焼いてるぞ?」


 とレンは頭を掻きながら考え込むも、ラトが持っている皿の肉が無くなっているのに気付いたレンは尋ねる。


「え〜〜っと〜・・・はい、頂くのです。・・・うぅ・・・本来、ラトはここまで食い意地は、はって無いのです、本当なのです。」


 そう言ってレンから肉を皿に乗せて貰い、食べながら自己弁護する様に話していた。



 食事を終えたレンとラトは元いた小屋の中へと戻っていた。ちなみにレンが食べた肉の量が二枚程度に対して、ラトはなんと倍の四枚程の量を食べていた。ラトはレンに「美味し過ぎるのがいけないのです。」と赤くなって言い訳しながらも食べる事をやめなかった。


「さて、俺は風呂を用意してくるから少し待っててくれ。」


 レンはそう言って部屋から出ようとする。


「駄目なのです。ラトが用意するのです。でも場所がわからないので案内だけお願いするのです。」


 ラトがレンに向かってそう言うと、すくっと立ち上がりレンについて行く。


「あ、あぁ、そうか。それならその部屋に用意するから頼むよ。」


 そうレンは言って部屋の扉を開ける。しかし、その部屋には風呂の様な物は見当たらなかった。


「??お風呂なんて無いのですよ?お部屋間違えたのです?」


 ラトはレンが開けた部屋を覗き込みながら不思議そうな顔をしていた。


「だからこれから用意するんだよ。えぇとインベントリの中にはっと・・・これでいいかな?」


 そう言ってレンはインベントリから人一人は余裕で入れそうな木で出来た風呂桶を置いた。


「これならいいだろ?じゃあ風呂を沸かしたらそのままラトが先に入ってくれ。」

「ラトは後で良いのです。ご主人様の方が先なのです。」

「駄目だ、と言うかラト・・・女の子にこう言っちゃ悪いけど少し臭うぞ?」


 そんなやりとりをしていると最終的にレンにそう言われてラトは顔を赤く染めていた。


「はぅぅ・・・そんなにラトは臭わないのです、嘘は言っちゃダメなのです。・・・でも先に入らせて頂くのです。・・・なんなら一緒に入るのです?」


 ラトは自分の臭いが気になりだしたのか、くんくんと自分の身体を嗅いでいたので素直に先に入るかと思っていたが、急にとんでも無いことを言い出した。


「な、な、なな、何を言ってるんだよ!そ、そんな事より早く風呂行って身体洗ってこい!」


 レンは声が上擦っているのを知りつつも理性を働かせてラトに早く風呂へ入るように言って着替えも渡しておく。当のラトはと言えば「ご主人様は初心なのです。」等とブツクサと言いながら風呂のある部屋へ入って行った。


「はぁ、この世界には羞恥心と言うものは無いのか?・・・まぁいい、今の内にさっき確認してなかったスキルを見てみるか。」


 と椅子をインベントリから出し、座りながら【魔法付与】とついでに【段階解放】を【鑑定】を使って調べてみるに事にした。


【魔法付与】

 自身が習得している【魔法】を物へと付与する事が出来る。


【段階解放】

 スキルLVが上がる毎に一つスキルを解放する事が出来る。尚、解放するスキルはランダムで選ばれる。


【魔法付与】に関しては「【魔術】が無いから使えなくね?」と凹んでいたが、【段階解放】に関してはチート能力とも言える程の能力を持っていた。


(なるほどこのスキルのLVが上がったから【魔法付与】を覚えていたのか。まぁこっちは魔法が使えなくちゃ意味ないスキルっぽいから、俺にとっちゃ死にスキルっぽいけどな。)


 レンが自身のスキルについて考え込んでいた所にラトが風呂から上がってきた。


「ご主人様、上がりましたのです。どうしたのです?ご主人様、何か考え事なのです?」


 と、ラトはそう言いながらレンの所にやってくる。ちゃんと渡した着替えも着ていたようで、レンは胸を撫で下ろした。


「あぁ、ちょっとスキルに関して・・・な。新しくスキルを覚えたんだが、よく分からなかったんで確認していたんだ。」


 レンはそう言いながら自分も立ち上がり風呂のある部屋へ向かって行った。

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