第三話
「ふぅ、なんとか倒せたか・・・。とりあえずゴブリン達とゴブリンリーダーの魔石を取り出しておくか。」
レンはそう呟きながら、ナイフを取り出しゴブリン達を解体していく。
魔石とは、モンスターの核の様な物でギルド等で買い取ってもらえる。【RoE】の冒険者達はこの様な魔物の素材と依頼の報酬で稼いで装備やアイテムを買い揃えていた。
(しっかし痛みや感覚もあるって・・・信じられないけど現実なのか?ラノベやアニメなんかである召喚?転生?みたいな、そんな感じか?しかし、それだったら、なんで【RoE】の装備が使えるんだ?)
レンは解体しつつゴブリン達との戦闘中に思った事を考えていた。これは現実なのか?何故ゲームの世界に似ているのか?どうしてこの世界に自分が来てしまったのか?
しかし、いくら考えても自身が置かれている状況が痛みや感覚からコレが現実だろう、と位しか分かる筈も無く、とりあえず情報が必要だと考えていた。
「よし、コレで終わりだな?とりあえず魔石はインベントリに入れておくか。」
解体を終えたレンは、次に自身の身体について考える。
(多分、俺の身体はあの時設定したアバターって事だよな?)
身体を動かしながら自身の身体を見る。
(だったらなんであの時魔法が使えなかったんだろう?ってそうだステータスをチェックして見ればなんか分かるかも!)
そう考えたレンは早速、自身のステータスを見てみる。
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名前 【レン】
職業 【付与術師】
種族 【ヒューマン】【男】
年齢 【16】
LV 4
HP 160
MP 430
STR 72 VIT 67
INT 102 MND 94
AGL 141 DEX 73
LUK 150
SKILL
【付与魔法LV3】【剣術LV4】【魔法適正(火・風・光)LV5】【全属性魔法耐性】【詠唱破棄】【段階解放LV2】【生活魔法】【調理】【建築】【鍛治】【鑑定】【取得経験値ブースト】【取得スキル経験値ブースト】【スキル習得率UP】【魔法付与】
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レンはステータスを見て膝を地面につけて項垂れていた。
「適正だけ取って【魔術】取ってねぇよ・・・。そりゃ魔法が撃てないわけだよ。」
本来、【魔術師】なんかだと【魔術】は最初から習得している、現在レンが習得している【付与魔法】がそれに当たる。
その為、もしレンが魔法を使うなら【魔術】を習得しておかなければ使える筈がなかった。
「はぁ、コレが現実なら魔法とか使って見たかったのになぁ・・・、んん?なんだこの【魔法付与】って?」
レンはステータスに自身が習得した覚えがないスキルがある事に気付いた。とりあえずそのスキルを鑑定で調べて見ようとした時、倒れた馬車の方から人の呻き声が聞こえた気がした。この状況で生きてる人間がいないと思っていたレンは、急いで馬車に駆け寄る。
「おい!生きてる奴がいるのか⁉︎」
レンが声を掛けるも未だ気絶しているのか反応は無かった。仕方無く、レンは倒れた馬車の中を確認してみる。この馬車の持ち主であろう商人と思われる死体は外にあった為、中身は商品位だろうと思っていたレンだったが中を見て唖然とする。馬車の中にあったのはボロ布と言っていい程の服を着た女性や少女達が倒れていたからだ。
(あの商人は奴隷商って奴か?この世界じゃ奴隷制度があるのか?いや、そもそもこの世界では奴隷って普通なのか?)
レンはそんな事を考えながら生存者を探し始める。すると倒れている女性の下敷きになっていたボロ布の様な服を纏い頭に包帯の様な物を巻いた少女が息をしているのに気付いた。
(どうやら馬車が倒れた衝撃で気絶しているだけみたいだな。とりあえず最初の小屋に連れて行って寝かせてやるか。)
他の奴隷達も確認してみたが、他には居なかった事と辺りが既に暗くなっていって事に気付いた為、この少女を最初の小屋に運んで行った。
奴隷の少女を最初の小屋に運んで、レンはまずはベッドに寝かせてやる。
(見た感じでは、そこまで酷くなさそうだな、まぁ俺は医者じゃないから大した事は分からないけど。とりあえずポーションがあった筈だから、それを飲ませておけば良いか?)
レンはインベントリからポーションを取り出して、奴隷の少女に飲ませる。少女は少し咽せていたがしっかりとポーションを飲み込んだ。
(これで大丈夫だろう。後はこの格好じゃ流石に可哀相だし、とりあえず新しい服でも置いておけば良いか・・・そういえばこの世界で目覚ましてから結構時間も経ってるし、なんか腹減ったな・・・なんか作るか?)
インベントリから更に少女用の服を取り出しベッドの側に置いた後、レンは腹が減っている事に気付き、食べる物を作る為に小屋の外に出る。
(まぁ、料理とかあんまりしないしスキルあってもよく分からないんだよなぁ。)
レンは木を組み、それに火を付けながらそんな事を思う。焚き火の周りにある程度の石を並べてその上に鉄板を置いてインベントリから肉を出して焼く。
肉はファンタジーお馴染みオーク肉だ。それに塩をふって焼いていく。まあ、オークと言っても、蓮達が全滅する前までいたダンジョンなんかで、倒した高LVのオークだ。
(素材として倉庫に入れてて良かったな、まさか自分が食べる為に使うとは思わなかったけど。)
じゅうじゅうと焼ける音を聞きながら考えていたら、背後から扉が開く音が聞こえてきた。レンはその音に気付き振り返ると、直ぐにまた前を向いた。
「おっ、起きたか?何処か具合が悪い・・・って、なんで用意した服を着てないんだよ!」
何故か少女は用意しておいた服を着ておらず、未だボロ布と言っていい様な服を着ていた。所々破けていて少し動くと未発達な身体でも色々と見えてしまう為、レンの顔は赤くなっていた。
しかし少女はそんな事を気にした様子は無く
「良い匂いがするのです。ここは死の世界なのです?」
「ち、違う、死んでない!それよりもいいから早く用意した服を着て来てくれ!」
少女の言葉に被せる様にレンは怒鳴る。
「は、はい、分かりましたのです。」
少女は少し呆気に取られながら小屋に戻って行った。
(吃驚したぁ、色々と見えてたよ⁉︎てか見ちゃったよ⁉︎)
レンは自身の心臓が早くなっているのを感じていた。それから暫く経ってから少女が用意しておいた服を身に付けて扉から出て来たのに気付きレンは振り返り再び止まる。
「お、おま、何だ?その頭の上の・・・、それもしかして耳か?」
そう、少女の頭にはぴょこんと狐の耳の様な物が生えていた。それに背後には尻尾みたいな物も見える。
「ひぅ、隠しててごめんなさいなのです。お願いしますのです、叩かないで欲しいのです・・・。」
少女は怯えて狐耳をペタンと倒して、サッと頭を庇うように蹲み込んでしまった。
「ごめん!違うんだ!俺は獣人が嫌いとかそういう事じゃないんだ。ただ獣人って奴を初めて見たから少し吃驚しただけなんだ、すまない。」
レンは少女にそう謝る。すると少女は少し顔を上げ今度は不思議そうに傾ける。
「そうなのです?でもでも獣人の方は街に行けばいっぱい居るのですよ?」
「あ〜まぁ、その辺は飯でも喰いながら話すとするよ。とりあえずそこら辺に座ってくれ、もうすぐ肉も焼けるから。」
レンは少し気まずそうに頬を掻きながら、座る事を促すと少女は
「奴隷はご主人様と同じ所で食べちゃ駄目なのです。」
と何故かレンを〈ご主人様〉と呼び出した。
「ちょっと待ってくれ、ご主人様って誰の事を言ってる?」
レンは手を前に出して【待った】のポーズを取りつつ少女に聞いた。
「ん?ご主人様はご主人様なのですよ?ハッ‼︎もしかしてやっぱり獣人の奴隷は嫌いなのです?」
少女はレンを手で示しながらそう言ったが、直ぐに悲しそうな顔をした。
「違う、違う!そうじゃない!俺は君を奴隷にした覚えが無いぞ?」
その様子を見たレンは慌てて訂正していた。すると少女はキョトンとして告げる。
「え?前のご主人様が亡くなった所をご主人様に助けられたのでご主人様がご主人様なのです!常識なのですよ?」
少女はエヘンッ!と無い胸を張る様な仕草をした後、コテンと首を傾げてこちらを見ていた。