第三十一話
とりあえず料理が冷めぬうちにと食べ終えたレン達は、食事の後片付けに再度厨房へと向かって行ったショコラを待ちつつ食堂で食後のお茶を飲みながら話をしていた。
「しかし、些か食べ過ぎてしまったな。」
「アタシもよ……、それにしてもアンタ達いつもあんないい物食べてたの?」
そこには、ミリオーネ侯爵とキーリスは、用意されたオーク肉を凡そ4皿程度食べたせいで苦しいといった状態になっている。尚、ラトも3皿程食べていた筈なのだが、こちらはケロリとしていた。
「そんなわけ無いのです。ここ王都に来てからずっと屋台や宿での食事なのです。……いえ、それが不満とかでは無いのですけど、たまにはラトもこのお肉が食べたいのです。」
「まぁな……ただ、宿暮らしだとメシも大体宿任せになるからなぁ……。」
キーリスに羨ましいといった視線を向けられたラトは直ぐに否定していた。確かにレン達が王都に来てからは食事は宿で摂るか、外にある屋台などで済ますかしていたからだ。
そんな話しを暫くしていると、漸く後片付けが終わったショコラが食堂へと姿を見せる。
「お待たせしました〜。後、他の子に頼んでウィルさんに地図を持って来てもらいました。」
食堂へとやって来たショコラの右手には、丸められた羊皮紙を2枚程持ってきていた。広げてみると、どうやらウォルター王国の物とその周辺諸国の地図といった物のようだ。
「ふむ、中々気がきくな。……では、レン。お主が知っている事を教えてもらってもいいだろうか?」
「ええ、まずはお聞きしたいのですが、この辺り……そうですね、神殿のような建築物はあったりしますか?」
レンはそう言ってウォルター王国の地図の端の方を指差してミリオーネ侯爵に尋ねる。というのも教えるとは言ったものの、地形などはレンが知っている【RoE】とほぼ同じではあったが、位置など同一では無いかもしれなかった為だ。
「ふむ、どれどれ?……確か、この辺りには遺跡があったな……。そこがお主の言う場所なのか?」
「そうです。そして、その遺跡の地下に迷宮が広がっているのもご存知ですか?」
レンが指差した地点を覗き込んだミリオーネ侯爵は、少し考えた後、その場所についてレンに伝える。
それを聞いたレンは、どうやら場所は同じかと表情には出さずとも一安心して、次に話しを進める。
「なっ……!?迷宮だと!?確かにあの遺跡は未だに調査が進まずにいたが……。いや、それよりも、あの周辺には幾らか村や集落があった筈だ。もし、その迷宮から魔物が溢れ出したとしたら……。」
「あの〜……先程から気になっているんですけど、レンさんはそこへ行った事があるんですよね?……なんか先程から確認しつつ話しているような感じがするのですが……。」
レンから迷宮が有ると聞かされたミリオーネ侯爵が驚きを隠せずにいた所、おずおずとショコラがさっきからレンの言い回しについて気になったと聞いてくる。
それを聞いたミリオーネ侯爵がレンの顔を窺うと、レンもミリオーネ侯爵に対して首を縦に振る。この話をするにあたって自分が迷い人だということは話さなければいけなかった為だ。
「そうさな……ショコラよ、迷い人というのは知っておるか?」
「え?ええ、お伽噺によく出てくる人物なんかの事ですよね?それがどうかしたんですか?」
ミリオーネ侯爵から迷い人について聞かれたショコラは不思議そうな顔をして答える。
「ふむ……それは、此奴がその迷い人というやつだからだ。……しかし、言っておいてなんだが、そうペラペラと他人に喋っていいものなのか?」
「まぁ……良くはないでしょうね、ですが、この話をするにはどうしても話す必要がありましたしね。」
ショコラの問いに、ミリオーネ侯爵はレンがその迷い人だという事を打ち明けるのだが、レンに対してそれほどまでに簡単に秘密を喋っても良いものか、と問いかける。
レンとしてもあまりいい事ではないと、分かってはいたのだが、ここまで話をしてショコラなら大丈夫だろう、という想いもあった。
「ちょ、ちょっと待って下さい。そんな大事な話、私が聞いちゃって良かったんですか?」
「そもそも、お主がしつこく聞いたんだろうに……。まぁ、それはさておき……話す必要があったと言ったな?どういう意味か聞いても良いか?」
急な話に、もはや情報過多気味なショコラを置いておいて、ミリオーネ侯爵は、先程レンが言った話す必要があるという言葉の意味をレンに聞く。
「……そうですね。まず、その件の迷宮にいる魔物に関してです。そこにいる魔物は大半が『エルダー』という名を持ちます。その強さはオークで例えますとハイオークキングを軽く上回るんです。その為、今の自分では太刀打ち出来ないというのが理由になります。」
この迷宮は蓮が以前プレイしていた高難易度ダンジョンの前身ともなるダンジョンなのだが、そこにいる魔物は軒並み高レベルとなっている。この迷宮の魔物からは質の高い錬金素材などが取れる為、よく蓮もここへと通いつめていたのだ。
「なるほど……それを言っておかないと、もし、取って来てくれと言われても断れないからか。」
レンの説明を受けたミリオーネ侯爵は、あっさりとレンの意図を汲み取ってくれた。
「そうです。後は細かい事なのですが、自分が知っている名前と違う為、確認しながら話さなければいけなかった為というのもあります。」
「ちなみに……ちなみにレンさんは、そのエルダーオークとやらの肉以外にも、何かお持ち何ですか?」
レンが話さなければいけないと思った理由をミリオーネ侯爵に伝えていると、ショコラが他にも何か食材となる物を持っているのかと聞いてきた。ただ、まだ情報整理が追いついていないみたいではあったが。
「ふむ、それは私も気になるな……、それ程にあの肉は美味かった。いや、待て……ちょっと、私からも良いか?」
ミリオーネ侯爵も他の食材に興味を示していたのだが、途中で何かを思い出したかのようにレンに手招きをする。
(先程のオークの素材の中に、睾丸などはあるのだろうか?……いや、なに、アレは良い薬の素材になるからな。)
ミリオーネ侯爵から耳打ちされたレンは、初め何を言っているのか分からなかった。
なにせ、ゲームの世界ではそのような素材は無かった筈だったからだ。
ただ、一応念の為とインベントリを見たレンは意外な物を見る事になった。
(いつの間にこんなん手に入れてたんだ?いや……そういえば……。)
インベントリの1枠に『オークの睾丸』という素材があった事に驚いていたが、1つだけ思い当たる節もあったら。
それは『オークのxx』というアイテムだ。これはスタミナ回復薬に使われる錬金素材である。
「ありましたね……。これですよね?」
「待て待て!出さんで良い!」
「「……へぇ〜?」」
「……?」
レンがインベントリから素材を取り出すと、慌ててミリオーネ侯爵がそれを止めようとする。しかし、それも叶わずミリオーネ侯爵はキーリスとショコラから冷やかな眼差しで見られる事になっていた。ラトだけは理由が分からず、首を傾げていた。
「いい、ラトちゃん?アレから作られる薬って言うのは……。」
「……。そそそ、そうなのです!?な、なら、ご主人様!是非作って貰いましょう!」
「ん?どういう事だ?」
キーリスから何が作られるか聞いたラトは、顔を赤くしつつも、その薬を作る事を強く勧めてくる。ただ、レンとしてはスタミナ回復薬などは今は必要としてはいなかった為、何故ラトがそんな事を言い出したのかと疑問を抱いていたのだ。
「いや、きっとミリオーネ侯爵もお疲れなのでしょう。コレは良い疲労回復薬になりますからね。」
1人だけ外れた事を言っているレンに、ラトを含めた女性陣は呆れた顔を向けるのであった。
最近、仕事の方が忙しく中々書けずに遅くなりました。今年も、もう数日。飽きずに読んでくれている方、途中で飽きてしまった、又はつまらないといった方でも、私の作品を読んで下さってありがとうございます。来年も頑張って更新して行きたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、良いお年を。




