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第ニ十一話

 

 森に入ったレン達は何か違和感を感じていた。


「レン……これは、どう言う事だ……?」

「魔物がこの間より少ないのです……。それになんだか強くなってるのです。」


 アッシュやラトが言うように何故かこの間より極端に魔物の数が少なく、更には強くなっているのである。これは【RoE】で幾度となく感じていた感覚だとレンは気付く。


「ラト、アッシュ……二人とも俺の近くに来てくれ……。これは少しマズい事になってるかもしれない……。」


 レンは小声で二人を呼び寄せると【隠密】のスキルが二人にも掛かる様にする。


「どうしたんだ……?レンは何か知っているのか?」

「ああ……これはもしかしたら魔物達の狂宴(モンスターパーティー)が始まるかも知れない……。」

魔物達の狂宴(モンスターパーティー)……なのです?」


 以前【RoE】で魔物達の狂宴(モンスターパーティー)と呼ばれるものがあった。これは一定のエリア内に魔物が大量発生すると言うもので、広範囲エリア型モンスターハウスと言えば分かりやすいだろう。通常現れるモンスターよりも強く、尚且つその上位種の出現率もかなり高いと言った現象である。

 そして、大きな特徴として発生前の前兆が挙げられるのだが、それが今の森の状況と酷似していたのだ。


「嘘だろ……。そ、そんな事になったら王都が……どうするんだよ、レン⁉︎」


 レンから魔物達の狂宴(モンスターパーティー)について聞かされたアッシュは、切羽詰まった声でレンに迫る。


「落ち着け、アッシュ。こうなってしまったら俺達では手に負えないだろう……、一旦ギルドに戻って……。」


 アッシュに一旦ギルドに戻り報告をして応援を呼ぼうと言おうとした時、レン達の周りに魔力が集まり魔物の形を作り出していた。


「くそッ、始まったか……ラト、アッシュこうなったら俺から離れない様にしろ。」

「ギルドには戻らないのです?」


 苦虫を噛み潰したような顔をしたレンに、ラトは聞いてくる。何故ギルドに戻らないのか?……いや、正確に言うと戻れなくなったのか?

 この場に居るのがレン一人ならば撤退する事に特に何も問題は無かっただろう、だがこの場にはラトとアッシュが居る。レンは正直なところこの二人では魔物達の狂宴(モンスターパーティー)を乗り切る事は出来ないだろうと思っていた。その為ギルドに戻ろうと思っていたのだが、魔物達が現れ出してしまった為二人を連れて戻る事が出来なくなってしまったのだ。


(何か……何か手はないか……?このままじゃ……)


 レンは考える、二人を……特にラトを守るにはどうすれば良いのかを。これは別にラトがレンの所有奴隷だからということでは無く、ラトが女である事とこの森にいるのがゴブリンという事が理由である。

 もとよりゴブリンとはオークと比肩する程繁殖力の高い魔物である。それも他種族の……それも人族や亜人族の女をを使ってその数を増やしていくのである。ラトを助けたあの時、馬車の周りや中に女奴隷の死体が少なかったのはそういう事だろう。ラトは意識を失っていて倒れた馬車の中に……それも多くの死体の下にいた。そのおかげもあってレンが来るまでゴブリン達に気付かれずに無事でいられたのだろう。


「ぎゃあぁぁ……た、助けてくれぇぇ……。」


 レンが考えていると、微かに……だが、確かに誰かの悲鳴が聞こえて来た。


「ご、ご主人様。ラト達の後にこの森に入った人が魔物に襲われているのです。」


 レンは魔力索敵により、そしてラトは気配で誰かがゴブリン達によって襲撃を受けた事に気づいていた。レンは恐らくキーリスのパーティーにいた狩人風〔クタール〕が襲われているのだろうと考えていた。アッシュから聞いた話ではレンと出会う前、朝食を摂っていたところ偵察に出ていた狩人風の男が沢山のゴブリンに襲われて野営地に戻って来た為に逸れたと言っていたが、レンはそれが引き連れ行為(トレイン)だと考えていた。だとするならば今回もそれをする為に狩人風の男がゴブリンを集める為に一人になっていたところで魔物達の狂宴(モンスターパーティー)に遭遇したのだろう。


「レン!早く助けに行かないと!」


 ラトの言葉を聞いたアッシュがレンに迫る。


「いや……駄目だ。キーリス達には悪いがこのまま助けに行くと俺達も危ないかも知れない。」

「どうしてだよ!……ん?何でキーリス達って分かるんだ?」


 レンが見捨てるといった発言をしたのに対して更に迫るアッシュだったのだがレンがキーリス達の事を説明すると少し冷静さを取り戻したのでキーリス達が後を追って来ていたのを説明する。


「……と言うわけで、恐らくは俺かアッシュを殺す為に追って来たんだとは思う。……まあ、アッシュに至っては前回のこともあるしほぼ確実だとは思うが……って、マズい‼︎気付かれた‼︎」


 ある程度アッシュに説明を終えようとした時、レン達の前に数本の矢が突き刺さる。運悪く側に出現(ポップ)したゴブリンアーチャーに姿を見られて気付かれてしまったのだ。隠密というスキルで出来る事は気配を消す事であり、姿を消すというものではない。ともすれば姿を見られれば気付かれるのは当然である。


「くそッ……こうなったら強行突破するぞ‼︎ついて来いッ‼︎」

「わ、分かった……けど、キーリス達はどうするんだ?」

「さっき襲われた奴ならもう死んだ‼︎」

「なっ……そんな……」


 レンは眼前に迫る矢を斬り落とし、二人を連れて走り出すとレン達の背後でゴブリンアーチャーが仲間を呼ぶ声を聞こえて来た。

 アッシュは先程聞こえた悲鳴が気になったのかレンにキーリス達の事を聞いてみるが悲鳴の主が死んだと聞かされた。


「しかし……このままだとジリ貧だぞ?どうするんだレン?」

「はあ……仕方ないか……アッシュ、お前はこのローブを着てそのまま森から抜けろ。……ラトはすまないが俺と共に来てくれ。」

「ラトはいつだってご主人様と一緒にいるのです。」


 このまま逃げているだけではジリ貧だという事はレンにも分かってはいた。ならばとレンは溜息を一つついた後にアッシュに森を抜けギルドに事の顛末を報告してくる様に頼む。

 その間、レンとラトはこの場に残りゴブリン達の追撃がアッシュに向かない様にしなければならない。


「でも……それじゃあ、レン達が危ないんじゃ……。」

「ああ、そうだな。だから早めに帰ってきてくれると助かるよ。」

「大丈夫なのです。たとえご主人様が怪我をしてもラトが治すのです。」

「……わかった、でも……二人共死ぬんじゃないぞ。」


 覚悟を決め、足を止めたレンとラトにアッシュは心配そうにして振り返った。そんなアッシュにレンは冗談を言う様に肩を竦めると、ラトもいつものようにフンスッ‼︎と気合いを入れていた。

 そんなレンとラトを見て、アッシュも覚悟を決めたのか一つ頷くと、森の外を目指して走って行ったのだった。

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