表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/33

第十八話

 第十八話


 翌朝、鐘の音に目を覚ましたレンはラトを起こした後、食事を済ませてから食後のお茶を飲んでアッシュを待つ事にした。暫くするとアッシュが宿に入って来た。


「お、もう起きてたのか?それじゃあ、早速ギルドに向かうか?」

「いや、まずはアッシュに話しておかなきゃいけない事もあるから、まずはそこに座ってくれ。」


 宿に入って来たアッシュはレンに気付き直ぐにギルドへ向かうか聞いてきたが、レンは話しがあるとアッシュを椅子に座るように促した。


「んで?話って何だ?……まさかだとは思うが、何かトラブルでも起きたのか?」

「いや、そんな大した事じゃないんだが……昨日ギルドに行った時にまたゴブリンの森の調査に向かって欲しいと言われてな?流石にこのパーティーは俺とラトだけじゃないから保留にして来たんだが、アッシュはどうする?」


 席に着いたアッシュがレンにトラブルでも起きたのかと聞くと、レンは首を振り昨日ギルドで言われた事を話し出した。


「ん?俺は別に構わないぞ?」

「そうか……、一度あの森で死にかけたんだからどうかと思ったんだが……アッシュが大丈夫ならこの依頼を受けようかと思う。」


 レンから話を聞いたアッシュは気にも留めないように二つ返事で承諾した。レンとしては気にし過ぎだったのかとも思ったが、一度あの森で置き去りにされて死にかけたのだから一言くらいは聞いておくべきだとも思っていた。


「まあ、アッシュが平気なら早速ギルドへ行って依頼を受けて来ようか。」

「しかし、何だってそんな話になったんだ?森の異常調査だって本来ならもう少しランクが上の依頼だろう?」

「実は、アッシュ様と出会う前……ラトがご主人様に助けられた時にご主人様が倒した魔物が話の発端になったのです。」


 アッシュから承諾を受けたレンは椅子から立ち上がると、何故そんな依頼を受ける事になったのかとアッシュが聞いてくると、ラトが椅子から立ち上がりつつアッシュの質問に答えた。


「はあっ!?レッドキャップと一人で戦ったぁ!?……あれは、ランクDの魔物と言ってもDランクのパーティーで戦う相手なんだが……。」


 道中、ラトから事の経緯を聞いたアッシュは驚いた後に呆れたように呟いていた。


「そんな事を言われてもなぁ……ただのゴブリンリーダーだと思ってたしな……まあ、そのおかげでラトを助ける事が出来た。」

「はいなのです。ラトはご主人様に助けて頂いて貰って良かったのです。」


 アッシュから呆れの視線を受けたレンは頭を掻いてそんな風に話していた。実際あのまま襲われた馬車を見捨てていればラトはここにはいなかっただろう。そこまで話したところでレン達はギルドへ到着した。レンが扉に手を掛けたところで、何やら中から怒声が聞こえてきた。


「なんでよ!私達がまた行ってあげるって言ってるじゃない!何が不満なのよっ!」

「ですから、先程も申し上げました通りです。それにこの件は他の方に依頼致しましたのでお引き取りください。」


 何事かと思いギルドの中へ入ってみるとルナに詰め寄るようにに怒鳴っている女冒険者の姿があった。その後ろには女冒険者のパーティーメンバーであろう者達もいる。


「……何があったんだ?」

「あー……レン君このタイミングで来ちゃったんだ……あのね、この前レン君にお願いしたゴブリンの森の調査なんだけど、その前に調査に向かったのがあのパーティーなのよ。それであのパーティーが他の依頼を受けに来た時にルナの近くにまた調査依頼の依頼票があったのを見て『自分達の調査報告に何の不満があるの?それならまた自分達がまた調査に行くからその依頼を受ける』ってなったのよ。」


 レンは怒鳴っている女冒険者を横目にマリーの元へ向かい何があったのかを聞くと気まずそうにヒソヒソと状況を教えてくれた。するとマリーの声が聞こえたのか女冒険者はレンの方を睨み、ツカツカと掴み掛かるかと思うような勢いでやって来る。


「アンタが私達の仕事にイチャモンつけてる奴ね⁉︎」

「何を言ってるんだ?俺は森であった事を話しただけだ。」


 レンは若干苛々した態度で返す。それもそのはず、森の調査の前任者と言えばアッシュを殺そうと目論んだ奴らだと言うことになる。


「それじゃあ、なに⁉︎アンタは私達が嘘の報告をしたとでも言いたいの⁉︎」

「そもそもそんな事をして俺に何のメリットがある?今回の依頼も別に俺が報告した事で回って来た訳でもないしな。」


 更に食ってかかる女冒険者に、レンは呆れた様に返す。そもそも今回の依頼はレッドキャップの魔石から始まっているのだ。女冒険者達のパーティーの報告が如何であろうとも恐らくこの依頼はされただろう。


「はあ⁉︎じゃあ、何でアンタなんかに依頼なんてするのよ⁉︎それにアンタ見た事無いけどランクは?」

「まだ登録したばかりだからな、Fランクだがアンタには関係ないだろう?」

「Fランク?……くっくくく、それじゃあこの依頼も受けられないじゃない!笑わせてくれるわ!」


 レンのランクを聞いた女冒険者は笑うのを抑えることもせず、見下す様な態度を見せていた。


「落ち着いて下さいキーリスさん、それにレンさんも……。今回はレンさんにお願いするのでランクは不問とさせて頂いております。だから、レンさんもこの依頼を受けて頂くことは出来るんです。」

「なによ、それ⁉︎」

「とりあえず依頼を受けたいんだがいいか?メンバーも問題無いみたいだからな。」


 見兼ねたルナが仲裁をする様に女冒険者〔キーリス〕とレンに説明をすると、キーリスは納得がいかないと言った様子で怒鳴るが、レンはそんなキーリスを無視してルナに説明をする様にラトとアッシュを指差し、依頼を受ける事にする。


「アッ……シュ?そんな、アイツ何で生きてるのよ……?」


 レンが指差した先を見たキーリスが微かな声でそう呟いたのをレンは聞き逃さなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ