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第十三話

 

「新人狩り……ですか?」


 レンの言葉に、少し戸惑いの表情を見せる、マリー、ルナ、ソフィア。まさかこの街で、ましてや王国騎士団がいる場所で、その様な愚かな行いをする者がいるとは思っていなかったのだろう。ただ、レンには、思い当たる節があり、三人から聞いた話で、ほぼ確実に新人を潰している者がいると、思っていた。


「そうだ、この街に高ランクの冒険者が少なく、更に王国騎士団がいる。そんな所に新人の冒険者が現れれば自分達の稼ぎが減るだろ?それを良しとしない連中が、新人を育てるフリとかして依頼に連れて行って無茶な指示を出したり、酷い所だと、直接その手にかける、なんて事もあり得るだろうな。」

「えっと……レンさん、どうしてその様な考えに至ったか、聞いてもよろしいですか?」


 レンがどうしてそんな事を言い出したのか、未だに騎士団がいるこの街でその様な者がいるとは信じられないのかルナは、レンに対して懐疑の目を向けている。


「俺がそう思う理由は、アッシュだよ。あいつはパーティーを組んで、ゴブリンの森の調査依頼を受けていたらしいけど、初めて出会った時には一人でゴブリンの群れと戦っていたよ。……どう言う意味だか分かるか?」

「まさか……、逃げる為の囮にされたのですか⁉︎」

「いや、俺も最初はそう思っていたんだけどな、この話を聞いた時に囮ではなく、もしかしたらわざとアッシュを一人にして、殺すつもりだったのかもしれない。」


 レンが新人狩りと言う思いに至った理由とは、アッシュと出会った時、一人でゴブリンの群れと戦っていた事。それがもし、最初に思った様に囮に使われたのでは無かったら、それはEランクと言えど、未だ新人の域から出てないアッシュを嵌める為でしかない。


「なるほど、分かりました。その件は、こちらで確認させて頂きます。レンさんも森の調査の件、何卒よろしくお願いします。」


 暫く考え込んだルナは、そう言ってお辞儀をした後、書類を持ってカウンターの奥へと消えて行った。


「そうだ、レッドキャップの事なんだけど、コレが討伐と魔石のお金ね。えーと、討伐の方が一万ジールに、魔石が今日支払った分を引いて千五百ジールね?」

「んん?随分と討伐の褒賞金が高いんだな、コレも冒険者不足が原因か?」

「それもそうなんだけど、ランクDのレッドキャップってその強さも厄介な上に、その指揮力もゴブリンリーダーより高くて、周りのゴブリン達の連携も取れてて強い、だから討伐金も高いんだ。」


 マリーがお金をカウンターの上に置くと、レンは褒賞金の高さに驚いていた。そんなレンを見て、ソフィアがその理由を教えてくれた。


「へえ、なるほどな。確かに周りのゴブリン達は厄介だったな。……っと、悪いけど、そろそろ俺達は宿に戻る事にするよ。ほら、行くぞ、ラト。」

「……はいなのです。ふみゅぅ。」


 レンがレッドキャップの討伐金の理由に納得していると、視線の端に眠そうにしているラトに気付く。と言うか、ほぼ寝ている。その為、レンは話もそこそこに切り上げて、宿に戻る事にしてギルドを出た。宿に戻ったレン達は受付で自分達の部屋の鍵を受け取ってから、部屋へと戻った。ラトがレンのベッドに潜り込んで来たが、『昨夜は、お楽しみでしたね』的なイベントも無く眠りについた。


 翌日、レン達は宿で朝食を済ませると、ギルドの裏手にある図書館へと向かう。


「おお、これが王立図書館か、流石と言うか凄い本の量だな。」

「いらっしゃいませ。本日は図書の閲覧で宜しいでしょうか?そうしましたら、入館料として千ジール頂きます。また、本の破損などが有りました場合、賠償金一万ジール頂く事になっておりますので、ご注意下さい。」

「あ〜、大銀貨で良いか?ちょっと手持ちに銀貨が無いんだ。」


 レン達が図書館の中に入ると、目の前に広がるのは、千を、いや、万を超える程の本の数々。それにレン達は圧倒されていると、受付にいる司書の女性からそう告げられる。やはり、と言うか、例に漏れずこの世界でも、本は貴重な物の様で維持費としてか入館料が必要らしい。レンは前日のレッドキャップの討伐金から大銀貨を司書に渡した。


「はい、構いませんよ。銀貨八枚、8000ジールのお返しですね。ではこちらが入館証となりますのでお受け取り下さい。あと、もしお探しの本など有りましたらお声掛け下さい。」

「ああ、じゃあすまないが、歴史に関する本と迷い人に関する本を頼んでも良いか?」

「ラトは魔法書があれば、お願いしたいのです。」

「畏まりました。ではお持ち致しますので、コチラのテーブルで少々お待ちください。」


 司書から銀貨と入館証を受け取ると、レンとラトはそれぞれに探している本を司書に頼む。レン達が司書に言われたテーブルで待っていると、気を利かせてくれたのか、紅茶の様な物を、別の司書が持って来てくれたのでそれを飲みながら待つ事にする。


「お待たせ致しました。コチラがお探しになっていた歴史に関する本、迷い人に関する本、それと魔法書になります。コチラの本は全て状態保存の魔法が掛けられておりますので、そのままお飲み物を飲みながらお読み頂いて結構です。」


 そう言って、司書がカートの様な物に大量の本を積んでレン達の机にやって来た。


「ああ、すまない、助かったよ。しかし、凄い量だな、流石、王立図書館と言うべきか。よくこれだけの量をこの短時間で持って来れたな。」

「いえ、これが私の仕事ですから。それでは、ごゆっくりどうぞ。また、何か御座いましたら、お声掛け下さい。」


 レンが司書に礼を言うと、司書は一礼して去っていった。それを見送った後、レンは一冊本を取って、読み始めた。その本は、この世界について書かれていた。この世界【アストライア】は大小様々な国があるが、主に大国と呼ばれる五つの大国がある。それが、冒険者の国ウォルター王国、商人の国イース公国、軍事国グラート帝国、職人の国カルミア王国、魔法国エフェドラ王国の五つの国で、迷宮と呼ばれるダンジョンなんかも色々な所にあるらしい。そして人間、獣人はレンとラトでわかる様に、他にもエルフ、ドワーフ、魔族等、様々な種族がこの世界に存在する様だ。


「へえ、エルフやドワーフなんかもこの世界じゃ当たり前なんだな。いや、異世界なんだから当然か?」


 レンは読み終えた本を、横に置きながら呟くと、もう一冊違う本に手を伸ばし、読み出した。この本には、この世界の生活の歴史について書かれていた。レンは【RoE】で知っていたが、まず金銭について鉄貨、銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、そして白金貨と七種の硬貨がある、鉄貨十枚で銅貨一枚となる様に、十枚でその上の硬貨一枚と同じ値段になる。そして次に職人や商人等は当然の様にその生活について分かるが、そこには冒険者についても書かれていた。冒険者は以前にも聞いたように、依頼、素材の売買等が基本だが、迷宮に挑むと言ったものもある様だ。コチラは基本的にその迷宮で手に入れた魔物の素材の売買が基本になるのだが、他にも迷宮で見つかる宝物等があるらしい。例えばレンのインベントリとは違い、有限ではあるが色々な物を入れておけるマジックバッグ、様々な効果を齎す魔剣等がその筆頭とも言えるだろう。


「随分と熱心に本をお読みになっているのですね。宜しければ本はこのままに、お昼に行かれては如何ですか?」


 レンが読み終えた本を置こうとした時、司書からそう声を掛けられる。集中していたせいか、気付けばもう昼になっていた。

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