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第十一話

 

 宿から出たレン達は、街の門まで来ていた。


「あ?こんな時間から依頼か?もう少ししたら門は閉じちまうぞ?」

「いや、依頼じゃなくて、ラトと一緒に少し訓練をしようと思ってな。それに門が閉じる前に戻るよ。」


 レン達を見た門番は、もう少ししたら門が閉じる事を心配する様にレン達に話しかけるが、レンは問題無いとギルドカードを見せながら、会話を続ける。因みに、話しかけてきたこの門番は王都に来た時にアッシュをアシュレイと呼んだ門番だったと言うこともあり、レンも少し気軽に話す事が出来た。


「へえ……王都に来たばかりだってのに真面目だな。……ったく、この街の冒険者にも見習って欲しいもんだよ。だが、訓練っていうんならギルドの訓練場に行けば良いんじゃないか?」

「ん?ギルドに訓練場があるのか?……まあ、少しばかり試したい事があるからな、何かあったらヤバイだろ?」


 門番は会話を続けながら、レンのギルドカードを受け取ると、サラサラと記帳して、レンにギルドカードを返す。


「何かあったらって何だよ、騒ぎは起こさないでくれよ?」

「……保証は出来ないな。」

「おいおい、そこはせめて保証してくれよ……。」


 門番はレンにギルドカードを渡しつつそんな風に言うと、レンは少し気まずそうに目をそらしてボソリと呟いた。それを見た門番は呆れた様に言う。


「ご主人様、早くしないと暗くなっちゃうのです。」


 門番とレンがそんな会話を続けていると、ラトがレンの袖を控え目に引っ張って言う。


「おっと、悪いなラト。と言うわけで、そろそろ俺達は行くよ。」

「ああ、引き止めて悪かったな。アンタらも冒険者として早く一人前になれる様に頑張れよ。」


 レン達は門番と別れて、そのまま街道を歩いて行く。少し離れたところで街道から外れた林を見つけたレン達は、その林の中へ向かって歩いて行く。すると林に入ってから数分程度で少し開けた場所に出た。


「よしっ、ここなら丁度良いか。ラト、俺が合図したらそこら辺にある木の枝を俺の方に投げてくれ。思いっきりやってくれよ?」

「はいなのです。じゃあ、ラトは木の枝を集めて来るのです。」


 ラトが木の枝を集めに行くと、レンは剣を構えて魔力索敵で周囲を警戒もしながら、自身の集中を高めていく。


「さあ、このスキルは使えるのかな?これで使えなかったら正直、完全に死にスキルだぞ?」


 レンが試したい事とは、以前レンが自身を鑑定で見た時にあった、【魔法付与】の事だった。アッシュとの話で、魔法適性があれば大半の魔術師は魔法が使えると言う。それは適性を持つまで修行した魔術師なら、当然【魔術】を持っている筈だから、とレンは思っていた。だが、もしかしたら、本当にもしかしたらなのだが、魔法を使うのに大事なのが適性の方だったら発動は出来ないまでもレンにも魔法が使えるのではないか?と考えていた。そうこうしている内に、ラトが木の枝を集めて戻って来た。


「ご主人様、集めて来たのです。」

「よしっ、じゃあ始めようか。……頼むから使えてくれよ?【魔法付与(エンチャントマジック)】〔ストームジャベリン〕」


 そう言ってレンが使用したのは、風の初級魔法ウィンドアローより上位である風の中級魔法ストームジャベリン。剣を見た限りではあまり変わってはいない様に思えるが、自身の魔力が抜ける感覚を覚えたレンはラトに合図を出す。


「良いぞ、ラト。こっちに思いっきり投げてくれ。」

「はいなのです。じゃあいくのですよ〜。えいっ!」


 合図を出すと、ラトは剣を構えたレンに向かって勢い良く木の枝を投げる。


「ふっ!」

「ぴぃっ⁉︎」


 レンが木の枝に向かって剣を振り抜くと、ラトから変な声が出る。何故ラトがそんな声を出したかと言うと、レンが剣を振り抜くと共に、飛ぶ斬撃、つまり風の魔法剣がラトの真横を通り過ぎ、後ろの木をなぎ倒していたからだった。


「大丈夫か、ラト⁉︎」

「あ、危ないのです!あと少しズレてたら真っ二つだったのです。」


 レンが声を掛けると、ラトは声を荒げてレンに怒っているが、よく見るとラトの耳がペタンとして尻尾も巻いていた。


「悪かったな、ラト。まさか、斬撃が飛ぶとは思ってなかったんだ。どこも怪我はしていないか?」

「大丈夫なのです。ところで、ご主人様が試したかったのは、その魔剣なのです?凄い剣なのです。」


 ラトの頭をレンが撫でてやると、落ち着いたみたいで、魔剣の能力を確かめに来たのかを聞いて来た。


「ん?……いや、この剣は俺がここに来るまでに使ってた物だ。ラトも知ってるだろ?俺が確かめに来たのは、俺自身のスキルでな、どうやらこのスキルは武器なんかに魔法を与えることが出来るみたいだな。」


 レンはラトに自身のスキル、魔法付与について説明する。レンがこのスキルを確認した時、魔法が使えないレンにとって、死にスキルと断定して詳細まで確認はしていなかった、だがアッシュと話をして魔法は属性の適性があれば発動はしないまでも使えるのでは?と思い、魔法付与について鑑定してみていた。


【魔法付与】

 自身が習得している【魔法】を物へと付与する事が出来る。


解放(ブラスト)

 対象に付与された魔法を解き放つ。解放された魔法は通常の魔法と同様の効果を持つが、解放された魔法は効果を失う。


消去(デリート)

 対象に付与された魔法を消し去る。消去された魔法は効果を失う。


 レンは魔法付与の詳細から解放と消去と言うスキルを見つけていた。これは例えるなら火属性魔法のファイアボールの様な物である。

 そしてこのスキルはどちらも魔法付与の効果を失くす物であった。

 その後、レンは【消去(デリート)】を使って、剣に付与された魔法を消して、他の魔法も試していく。時折、魔物が現れるがレンは魔法剣の試し斬りをするかの様に斬り伏せていく。もちろん魔物の死体はインベントリに放り込んでいる。


「ふぅ、こんなもんかな。とりあえず、ラトは俺の近くに来てくれ。最後にもう一つ試しておきたい事があるんだけど、そこにいると危ないかもしれない。」

「は、はいなのです。」


 ラトはそう言ってレンの近くまで歩いて来る。


「じゃあ、行くぞ。【解放(ブラスト)】」


 レンが【解放(ブラスト)】を使うと、精霊の剣から最後に付与された魔法が放たれ、レンの視線の先にある木々を貫いていった。


「はわわ、凄い魔法なのです、流石ご主人様なのです。」

「よしっ!これで魔法が使える様になるな!……って⁉︎な、何だ、剣が溶けたぞ⁉︎まさか、魔法に剣が耐えられなかったのか⁉︎」


 レンが持つ精霊の剣が、今やその原形が剣とは思えない程に溶けてしまっていた。辛うじて柄が残っている位だった。

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