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スカルさん、強制指示をされる

 「ほんとに、魔王なんだな」


 「雇われだけどね」


 現在イリシア関連の問題や、北大陸に本部から派遣されている魔族のゴタゴタを一気に解決するために、面倒なことを全てすっ飛ばして元凶であり原因のテロリスト組織をぶっ潰そう作戦を遂行中である。

 とは言っても、樹里の仕事は舞台のお膳立てをするだけだ。

 果たし状代わりの矢文は無事届けてきたし、討伐隊というか軍の手配はミルが行っている。

 現状、お飾りと言われても仕方がないのだが、その討伐隊を編成するには樹里の判子が必要なのだ。


 「あ、しまった。どうせなら矢文の内容、有名な書き出しにすれば良かった」


 残念そうに言う樹里にスカルが訊ねる。


 「どんな書き出しだ?」


 「日出づる処の魔王、書を、日没する処のテロリストリーダーに致す、つつがなきや」


 日本史を習ったときに何故か暗記させられて、覚えていた文の一つをアレンジしたものだ。

 

 「ずいぶん古臭い文章だな」


 「ただの馬鹿かそうじゃないか、こっちの文の方が判断できたかなって思って」


 「?」


 「これって、読む人が読んだら、下に見やがって馬鹿にすんなこんにゃろーっって怒る文章らしいから」


 「そうなのか」


 「まぁ、怒らせるには十分なことはしたはずだし。

 あとは、生き残った人達が頑張って向こうさんを倒してくれたら、言うこと無いんだけどねー」


 「エステルみたいにか?」


 イリシアの実家が任されている領地。

 その中心地である領都に攻撃をしていたテロリスト達を、一騎当千の働きで壊滅させたのだ。

 ちなみにイリシアは実家に戻し、その時にミルが掴んでいたテロリスト達とエルミスト家の黒い繋がりの証拠を渡したので家同士の問題はそちらで解決してもらうことにした。

 

 「そうそう。って言いたいところだけど無理だと思うから、サポートは任せた」


 「は?」


 「味方に死人をださせないようにサポートしろっていってんの」


 「いやいやいや」


 「大丈夫。出来るって!」


 人外ピンクゴリラと一緒にしないでほしい。

 そう言おうとしたスカルよりも先に、樹里が続けた。


 「君のスキル、ステータス、経歴。

 私に隠し事はできない。

 だから、命令する。【やれ】」


 声音を落とし、樹里はスキル【強制指示】を発動させた。


 「はぁ、わかったよ。どうやら逆らえないみたいだしな。

 それと、スキルをわざわざ使うなよ」


 「グズグズ言うからだよ」


 「そっちじゃない。勝手に個人情報を覗くなって言ってるんだ」


 「魔王に対して言うね」


 「お前は人間の雇われなんだろ?」


 「それでも、与えられた道具を最大限使う権利と責任が私にはあるから」


 「めんどくさいな」


 「働くってのはそういうめんどくさいものなんだよ」


 「ジュリの部下も大変だな」


 「ほんとにね。ここの魔王みたいに暗殺でもしてくれれば話は早いんだけど。あの人達、無駄に優しいからさ」


 苦笑するジュリを、スカルは見つめる。

 どこか泣きそうな顔に見えたのだ。


 「優しくされるのは苦手か?」


 「まぁ、得意ではないかな。

 家族にも、病気になったとき気にも止められなかったし。治った時は自分でなんとかするって思われてたし。

 だから、気づかいはわかるんだけど、気持ち悪いっていうか居心地が悪いんだよねー。

 あのお嬢様女神は使えないし」


 最後の呟きの後に、樹里は盛大にため息を吐き出した。


 「色々大変なんだな」


 「ほんと、いろいろ大変なんだよ。働くって」


 「とりあえず、勝算はあるんだよな?」


 「ま、一応ね。あ、そうだ。その時は絶対に手を出さないように」


 「どういう意味だ?」


 「その時になればわかるよ」

 

 

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