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拝啓、厨二テロリスト団団長様へ

 【初めまして。

 私は、北大陸で魔王の役職を務めさせて頂いている人間の小娘ーーと言いたいところですが、これでももうすぐ三十路です。

 三十路の婆と口性のない者達からは言われるようになる程度には人間としては年を経た女です。

 えー、この度は我らが仲間である北大陸の魔王を暗殺しやがりまして、大変腹を立てております。

 私だけではなく、彼の部下達も復讐に燃えております。

 えー、何が言いたいのかというと、首を洗って待ってやがれこの社会に迷惑をかけるしかできないウジ虫筋肉バカ団長殿。

 そうそう、そちらが差し向けた刺客は丁重に保護しています。

 彼の扱いについては、下記アドレスにアクセスしていただければ動画にて確認できるので。

 まぁ、それとは別の報告がそちらにも入っていることでしょう。

 馬車を襲った者達の身ぐるみを剥いで辱しめたのは、他ならない私であることをここに記しておきます。

 

 さて、本題ですが、近日中にそちらへ総攻撃をかける予定です。

 

 追伸。降服をおすすめします。

 出なければ貴方は、人間でお飾りだと信じて疑わない、ただの女にデコピンで負けるという醜態を晒すことでしょう。

 これは絶対であり、予定の流れとなります。無駄なことはーー】


 とりあえず、最後の直前まで読んでダヴィはその手紙を破り捨てた。

 矢文である。

 このアジトに、窓を突き破って届いた矢文だ。

 それも、他ならない南大陸の悪鬼王自ら射たものだ。


 「ふざけやがって」


 破り捨てられた文の、その紙片をつまみ上げ参謀が呟く。


 「自信過剰なのか、それともただの考えなしなのか、あるいは」


 「あるいは?」


 「初歩的な手だな、と思いまして。

 相手ーーこの場合はこちらですが、我々を挑発しているのでしょう。

 手紙の内容はあまりにも幼稚ですが」


 「たかが、人間の女だぞ」


 「種族を問わず、女というのは強かな生き物です。

 この挑発に乗って部隊を動かせば、手痛い目にあう可能性があります」


 「それだけ自信があるのなら、何故ここにすぐに乗り込んでこない?」


 「おそらく、北大陸の魔王の部下達の顔を立てたのではないでしょうか?」


 指揮は取るが、まずは部下達に攻撃させるつもりなのだろう。

 とにかく、すぐに、迎え撃つ準備をしなければならない。

 そこに、構成員の一人が駆け込んできたのと、さらに追加の矢文が飛んできたのは同時だった。

 内容はどちらも同じで、北大陸の魔王の暗殺をするために契約を交わしたとある貴族の頼みで、攻撃をしていた隣の領、その領都に派遣していた部隊が全滅したという内容だった。

 南大陸の悪鬼王からの矢文は、さらに挑発的な内容だった。


 【お前ら、弱いよw

 ざまぁwww】


 矢文が飛んできた方を、二人は睨む。

 このアジトは廃村を利用して作られている。

 村の周囲は畑だった荒れ地が広がっている。

 二人がいる建物の近くには丘がある。

 その丘に、その短い黒髪の女が立っていた。

 冒険者が使っている、無駄にゴテゴテした弓を下ろして、中指を立てたかと思うとその手を崩し、今度は人差し指でダヴィ達を指し示したかと思うと次に親指を立てて首を切る動作をして挑発してきた。


 ダヴィはさすがに理性よりも怒りが勝ったようだ。

 止める参謀の声も聴かずに、悪鬼王へと突っ込んでいく。

 ほぼ一瞬で、悪鬼王の前まで距離を詰める。

 そして、殴りかかった。

 しかし、その拳が悪鬼王ーー樹里に届くことはなかった。

 届く前に旧式の転移術式が発動して、その姿が消失したのだった。

 消える直前、とても三十代には見えない、少女のように幼い無邪気な勝ち誇った笑みを向けてきた。



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