オープンスクール
剣道部を引退してから僕は、急に暇になってしまった。宿題は計画を立てていたから余裕を持って取り組めるし、買い物以外に外出する用もなかった。
そのため、同じような生活の繰り返しになっていた。楽しみといえば、志望校のオープンスクールくらいだった。
最初に参加したオープンスクールは、工業高校だった。想像はしていたが、それの参加者も、在校生もほとんどが男子生徒。漫画やドラマで描かれているような不良っぽさはないが、なんだか男臭い。自分の中学校からの参加者もいたが、学科が多いのでばらけていた。
僕が希望した電気科はというと、定員が40人ということもあり、参加者はあまり多くなかった。そして女子の参加者はいない。同じ中学校の生徒もいたが、よく知らない生徒ばかりで話にくかった。シロちゃんを見かけたが、他の学科のところにいた。
高校の中を、一部ではあるが案内してもらい、模擬授業にも参加した。この模擬授業は、とても面白かった。このあと参加する、商業高校のオープンスクールはどうだろう?
学校の説明があった際にはメモを取り、学校案内にも目を通した。学校のことをよく知って、見比べて選んでいきたいから。
昼休みの後は部活見学があり、それに参加しない人は勝手に帰ってもいいことになっていた。見学がある部活は、野球部・サッカー部・陸上部・バレー部・吹奏楽部。高校でも何か部活を続けようとは思っているが、何にしようかまよっている。しかし、見学できるこれらの部活に興味がなかったので、僕は弁当だけ食べて帰った。
帰宅してから、工業高校についてのメモに改めて目を通した。就職内定率は高いし、校風もとても良かった。
ただ、小さなことすぎるので、他人には恥ずかしくて言えないが、案内してくれた生徒が骨っぽい男ばかりだったので、僕みたいな男は弱々しく見られるのではないかと心配になった。それとも、工業高校に入ると僕でも男らしくなれる…わけないか。まあ、工業高校にも僕みたいな生徒はいるだろうけど。
男子ばかりの中で勉強することに抵抗はないが、男臭くて賑やかかもしれない。そして、部活動一覧にも改めて目を通した。剣道部や弓道部もある。さらに、工業高校ならではの文化部もあった。きっと、この高校に入学したら、楽しく過ごせるだろう。遠藤さんと同じ商業高校に入学したいけど、この工業高校に入学することも、不本意ではない。
工業高校のオープンスクールの数日後、商業高校のオープンスクールがあった。
「おはようもりさと君、久しぶりだね」
高校に到着して、整列するときに遠藤さんに会った。
「おはよう。もしかして、遠藤さんも情報科?」
「そうだよ。でも他に同じ中学校の人を見かけないね。私達だけ?」
どうやらそのようだ。最初の挨拶が始まったときにも、情報科の列に並んでいる、僕等の中学校の生徒は他にいなかったから。この学科も定員が40人だから、そんなものだろうか。
まさか、遠藤さんも僕と同じ学科を希望していたなんて。もしかしたら、高校では3年間遠藤さんと同じクラスになれるかもしれない。それだけで迷わずにこの学科を受験しようと思えてしまうから恐ろしい。いや、勉強の内容や卒業後の進路もしっかり見ておかないと。
学校について説明されていたときに、最初に紹介していたのが制服だった。そのときに、さすが女子の多い高校と思った。女子中学生達は、この話題にとても食いき、「制服が可愛い」と言っていた。そういえば、制服のデザインで高校を選ぶ女子もいるらしい。この高校も、そんな女子に選ばれる学校なのかもしれない。
確かにこの高校の女子の制服は可愛い。僕は制服のデザインは特に気にしていないが、この高校は男子の制服もお洒落だった。
他の学科はほとんどが女子だったが、情報科だけは男子が半分近くいた。この学科だったら、クラスの男女比は半々に近くなるのかもしれない。
模擬授業のパソコン作業は、とても面白かった。やっぱり迷う必要はない。この学科にしよう。最終的に、遠藤さんがこの学科を選ばなくても。
卒業後の進路は工業高校と同じく就職内定率が高かった。さらに、昨年度の情報科の3年生は、卒業前に全員進路が決まっていて、就職や進学の未定者はいなかったという。その年によっても違いはあるだろうけど、頼もしいと思えた。
そして、情報科も、情報や商業に関する多くの資格を取得できる。その中には、工業高校の電気科との共通する資格もあったけど。
帰宅してから、僕はもう1度学校案内を見た。商業科も悪くないが、やっぱり情報科のほうがいい。悪いが、国際科は論外だ。
ちなみに、部活動として、剣道部もあった。バスケ部もあるから、遠藤さんはバスケを続けることができるだろう。そんなどうでもいいことまで考えてしまった。
一応、試験が終わるまで学校案内は全て残しておくけど、第1希望は商業高校の情報科を貫こう。きっと、僕の今の成績なら無理ではないだろう。そう思えたから、気になっていた高校のオープンスクールに参加できて本当に良かった。