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第二話 「ただの転生ではない、異世界転生だ」

今日の更新はこれがラスト

転生してから早くも一年が経った。

 この一年間は大変だった。

名前がエドワードに変わったことには、思いの外早く慣れることができたが、色々と慣れないことも多かった。

 まず、この世界が俺の知っている地球とは違う世界なんだという事実に気づかされた。

 なぜそれがわかったのかといえば単純で、月が二つあったのだ。


 さすがに初めて月が二つあるという事実に気が付いてしまったときは動揺した。俺を抱きかかえる母さんの腕の中で暴れに暴れてしまった。

 まぁ、普段あまり泣いたり暴れたりしない俺の様子を密かに心配そうにしていたようで、その時は逆に安心されたのだが…。


 そして、自分が知っている限りの地球の歴史に照らし合わせてみると、今俺がいる世界の技術レベルは、地球でいうところの15~17世紀ころのヨーロッパくらいらしいということもわかった。

 まぁ、正直高校にも行ってない俺の知識だと限界があるんだけれどな…。


 さて、異世界転生というからには期待されるのが魔法の存在なのだが、実は今のところそれっぽいものには出会えていない。


 もしかしたら魔法はない世界なのかもしれない。少し寂しいかな…。


 とはいえ、前世の意識がある俺は赤ん坊にしてはずいぶんと出来がいい奴だ、という認識を持たれたらしい。

 というのも、あんまりにもしゃべれないというのが不便すぎて、しゃべる練習をしていたところ、生後6か月ほどでしゃべることができてしまったのだ。


 あの時のサラさんの驚き様は面白かった。


サラさんを指さしながら

「さぁら」

としゃべっただけで。


「お、王妃様!殿下が、殿下が天才でございますー!」


 なんて叫びながら部屋を飛び出していったのだから、思わず笑ってしまった。

 一応、あんまりにも普通にしゃべりすぎると気持ち悪がられると思い、部屋に戻ってきたサラさんと、手を引かれてきた母親に対して。

「さぁら。かぁしゃん」

と赤ちゃん言葉っぽく話してみたのだが、それだけで二人とも跳び上がって喜んでしまい、家庭教師をつけるだの、勉強机がどうだのと始まったため、さすがに焦った。

 一応、冷静になってくれたようで、あれから家庭教師の話は出てこないが、やりすぎ注意かなと反省させられた。


 気が付いたことは他にもある。自分の肉体は思っている以上にハイスペックらしい。まず、おそらくだが運動神経が良い。

 しゃべる練習と同時進行で、立つ練習もしていたのだが、言葉がしゃべれるようになった次の日に、つかまり立ちどころか普通に立つことができてしまった。

 これが早いのか遅いのかわからなかった俺は、結果的に前日の反省が全く生かせていないことに気づかされることになった。

 

 何となく立ててしまった俺はゆりかごの上で仁王立ちしていた。そんな俺の姿を見たサラは。


「お、お、王妃様!殿下は、殿下はやっぱり大天才でございますー!」


と叫びながら部屋を飛び出していったのだ。

 ちなみに、一般的には何もつかまずに立てるようになるまでに、一年ほどかかるらしい。

 サラの娘のアーシャは、生まれてから一年と二か月らしいが、まだ完全には立てていないそうだ。


 そう考えると、確かに俺の立てるようになる速さは異常だった。

 一応、早く一人で移動できるようになりたいと思って、筋トレっぽいことをしていたのがよかったのかもしれない。


 不思議なことに、言葉は通じるのだが、部屋においてあった本を見た限りでは、文字は全く違うものを使っているようだった。イメージとしては、漢字よりもアルファベットに近い文字のようだ。同じ形が文章中に何度も登場していたし、文字の種類はそれほど多くなかった。しっかりと数えてみたわけではないため、確実なことは言えないが、そんなに外れてもいないと思う。


 あと、これは少しだけショックだったのだが、どうやら俺は国王陛下、つまり父親からあまりよく思われていないようなのだ。


 母親であるリディア王妃とは政略結婚だったらしく、国王の務めとして世継ぎを作るという責任から逃れることもできず仕方なく作った子どもが俺というわけだ。

 俺を身ごもってからの母には興味を失ったらしい。あんなにもキレイな人に興味ないとか、俺の父親は美醜感覚がおかしいのかと思ったが、そんなわけでもないらしい。第二王妃とやらに一度だけ会う機会があったのだが、それはそれはキレイな人だった。

 どうやら、単純に本命の人である現第二王妃の方が好きというだけの話らしい。

 

 ちなみに、なぜこんな話を知っているかといえば、筋トレがてらにメイドさんたちの話を立ち聞きしたりしたからだ。いつの時代も有名人のゴシップは話題の種らしい。


 普通の子どもなら、こんな話を聞かされれば嫌な気持ちになるだろうが、俺は精神年齢21歳なので、大して気にならない。

 

 それに正直、父親に同情できる部分もある。自分が一番好きな人と一番に結婚することはできず、子どもも政治的な理由から自由に作らせてもらえない。おまけに、自分の跡継ぎまで一番好きな人との子どもに任せられなさそうってことだ。


 でも、やっぱり俺にしてみればほんの少しだけどショックだった。


 とはいえ、母親はその分俺を全力で愛してくれているみたいだ。とにかく時間を作っては俺に会いに来る。本来、王族の子育てってのは乳母に丸投げする人が多いらしいのだが、母親は公務の合間を縫って授乳に来たり、顔を見に来たり、一緒に昼寝したりと、とにかくかわいがってくれている。

 

 これだけで転生できて幸せだった。


 

 乳母のサラさんは17歳らしい。思った以上に年が若くて驚いたのだが、これぐらいの年齢で子供を産むのはそう珍しいことではない世界らしい。ちなみに、母親のリディアさんは19歳だとか。これは少し遅い結婚だったらしい。ちなみにちなみに、父親のリア王はなんと34歳だった。わしとか言ってたから、もっと年上なのかと思ったが、それほどでもなかった。

 男のほうは結婚年齢がバラバラなんだそうで、それでもリディアさんと結婚したのが33歳の時だというので、結構遅い方だったのだそうだ。


 サラさんの旦那さんは未だに会っていない。というか、サラさんの生活はほとんど一日中俺と一緒にいるようなものなので、旦那さんと会う時間があるのかどうか心配になってしまう。

 いくら愛しのサラさんを独占できて嬉しいとはいえ、旦那さんとずっと会えないのはさすがに可哀相だ。

 一度旦那さんについてそれとなく訪ねたことがある。


「さらは、おとうさんいないの?」

「おとうさんでございますか?おとうさんは、田舎で元気にしておりますが…。」

「そっちじゃなくて!」

「?あぁ、だんなさまですか!」

「それー!」

「殿下は気になさらなくてよろしいのですよ。」

「えー…。」


 なんて感じで、笑顔で子ども扱いされてしまってはさすがに聞き出すこともできなかった。


 サラさんの娘のアーシャには何度か会うことができた。とはいえ、向こうは本当にただの赤ん坊だ。

俺が話しかけてもちゃんとした返答は返ってこなかったし、そもそも向こうはまだ立つことさえできていない。

 ただまぁ、かわいらしい赤ちゃんではあった。

 赤ちゃんの俺がいうのも変な話だが…。


 とにかく、そんな風に自分の身の周りの世界を少しずつ理解するようにしているのだが、いかんせんメイドたちの噂話だけではこの世界の大切な知識が入ってこない。


 俺は地理がどうなっているとか、政治がどうなっているとか、そういった知識が欲しいのだ。

 本で勉強できれば問題ないのだが、いかんせん文字がわからない。

 

 文字の勉強ができれば一番なのだが、さすがに1歳で文字の勉強をしたがる子どもというのが異常なことぐらい俺にもわかる。

 

 どうしたものかと俺は頭を悩ませた。


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