第九章
仕事が忙しすぎて時間が取れず気づけば更新が一ヶ月以上も遅れる始末。
一応次回は明日中に投稿したいと思います。
ティルキアを燃やした後地震が起こった。風も吹いた。
地震は地上にあるものすべてを薙ぎ払い、風は瓦礫を巻き上げて天高く運び地上へ落とした。
地震により死亡した人数数万名瓦礫の飛来によって死亡した人数数千名。いずれにしても地獄の連中を外に出すにはもってこいの供物となってしまった。そう、地獄から…奴らがやってくるのであろう。
「リン、これって…」
『ティルキアめ…これが目的だったとはな…。」
「まずくない?」
『まずいな…このままでは…。』
薙ぎ払われ、何もなくなってしまった地上に禍々しい門が音もなく出現した。そこから聞こえてくる亡者たちの声…。まるで脱走兵のごとく。
「生きてるか~鬼。」
ふと隣を見るとシュレディンガー少年が何事もなさげに立っていた。というかそれどころではない。
『ミネルヴァはどうした?』
「ん~さっきまで一緒にいたんだけどな。」
『シュレディンガーよお主はもう少し周りに配慮しろ。さもなくばいらぬ犠牲が出る。』
「……わかった。」
しばらく亡者の群れと戯れているとリルと真神と烏が一羽飛んできた。
「お嬢。無事だったか。」
「無事とは言わないけど何とかね。で?この始末どうする気なの?リン。」
『うむ…。そのことなのだが…。既に地獄の門は開かれた。あれを閉じねばこの世も破滅じゃろう。』
『あの門まで行けばいいんだね?』
「主よ確かに我の異能を使えばあそこまで最短で向かうことは可能だ。だがあそこに強力な反応があるのもまた事実。鬼と烏が出向いたところで大して変わらないぞ。」
『うーん』
「鬼いうな犬。第一この世の理をいじれるんでしょ?リン。」
『ん?あぁ可能じゃよ。だから何だと?』
「さっき思いついたんだけどさ、時の理もいじれるよね?というか止められるよね。」
『…まぁ…出来ぬわけではないが…。』
「あとあの門も魔素だっけマナだっけ?そんな感じの物でできてるんでしょ?なら簡単。時間を止めて接近して弄ればいい。」
『…悠香…お主…なんという名案…。』
「お嬢、それだとお嬢しか近づくことはできないぞ?」
「…真神も同じことできるんじゃないの?あとミネルヴァ、力を隠すのはこの局面には不利だと思うのだけれど?」
指摘した瞬間、ミネルヴァは萎れたように目を瞑ってやれやれといった風に答えた。
「…さすがは鬼姫ですね。ええそうですとも。私は今まで力を隠してきました…。ですが…。なりふり構ってられませんよね?いいでしょう。これでも知恵の代表格。今まで解析した情報を与えて差し上げましょう。」
やはり隠していたのか。鎌をかけて正解だった。ミネルヴァはしばし瞑目し私たちの脳内に直接その知識を与えた。
「なるほど、なるほど。あの門は地獄とこの世をつなぐもので生成にはマナを、存在には魔素を使用しているわけか。つまり鬼の力をもってすれば破壊可能というわけだ。」
『裏付けができたな。では悠香儂に主動権を寄越せ。』
「OKくれぐれも体を傷つけないでね鬼姫さん。」
私とリンが切り替わる。額からは角が伸び出し右目が赤く染まり全てを見ているような感覚になる。
「さてと…。取り敢えずこの目障りな亡者共を一掃しようかの。」
「お嬢…。いったい何をするおつもりで?」
『リン…?私たちはどうすればいい?』
「とりあえず広域で儂の力をふるうから貴様ら全員門まで走れ。真神は時間を止めろ。そしてミネルヴァと小僧と小娘を守る結界を全力で張れ。」
「えっと…。お嬢俺は?」
「空でも飛んでいればそうそう当たらんよ。気を引き締めて逃げろ。」
「むちゃくちゃだこの鬼」
『真神…守ってね。』
「主よ。それは愚問というもの。ミネルヴァよ小僧とともについてこい。」
「では散開!」
号令とともに真神は理に干渉し門まで瞬時に移動する。シュレディンガーとミネルヴァも時同じくして門の裏側に到着した。その様子を心眼を用いて確認し終えたリン/悠香はマナを練り上げ一つのわざを開放する。
「悠香よこれが鬼の力だ。括目するがよい。」
『何言ってんのさ寄生型のくせに。こないだ言ってた焔の鬼姫とかいうものの力を開放する気でしょう?』
「よくわかったな。今から見せるのは煉獄じゃ。肉を得たくそったれ亡者どもをさっさと地獄に強制送還しなくてはいけないからな。ではいくぞ。」
『さて、どうなることやら。』
「大地に広がる魑魅魍魎。城下の焔にて貴公らをあるべき地へと送還する。顕現せよ原始の焔!!」
それは圧倒的だった。門からあふれ出た名状し難い亡者たちを瞬く間に炎が包み込み次から次へと灰燼と変えていく。炎の海はすべてを包み込み、すべてを奪っていった。そんな燎原のごとき地を平然と歩く鬼の顔には薄い笑みがたたえられ異質な空間となっていた。
一方そのころ地獄では…。
「くははは!ついに!ついに地上へ出る機会が与えられたぞ!」
と感無量な閻魔大王もはや我らを止める者はいないと豪語し泰山王の制止も振り切って地上へ姿を現した。そこで目撃してしまったのだ。地上にて荒れ狂う炎を。その炎にて灰燼と帰す亡者どもを。そして…その地獄のような燎原を笑みをたたえながら歩く鬼を…。
「なっ何事…このようなことがあってたまるものか!おい文官!説明しろ!」
「ぐぁぁぁ閻魔大王様…もはや…。」
閻魔大王の懐刀であった文官もこの焔に抱かれ消えていった。ふと周りを見渡せば門から出た亡者はことごとく燃え尽きてもはや閻魔大王しか生き残ってはいなかった。
もはや色々ご都合主義になりつつありそうですが次回にて一応完結します!たぶん!