第三章
鬼の体について説明を受けている最中…。新たな刺客が放たれた…。
まず、鬼の体について分かったことがいくつかあった。
一つ目、鬼の力には空気中の魔力が必要だということ。その時に必要なのが角なのだという。鬼という生き物?は空気中に漂っているらしい魔力を角で判別できるということだ。人間にも微弱な魔力が備わっているが魔法などの大きな技を使うほどには力不足とのこと。
二つ目、鬼の細胞は人の細胞に比べ壊れにくく、壊れたとしてもすぐに再生するということ。さらに細胞が老化しないらしい。不老の体で超速再生が可能な体というわけだ。ただし再生時にも魔力を消費しているので角が折れた鬼は再生できずに死ぬらしい。
三つ目、すでに半分以上鬼の体になってしまった私には第三の目なるものが備わっているとのこと。これ自体は鬼の中でも自覚できるものと自覚できないものがいるとのこと。
つまり、私の体は知らず知らずのうちに文字通り魔改造されてしまっていたのだ。某バイク乗りヒーローが涙を流すのもうなずける。
朝になり、角がどういう原理か不明だが消えると目もいつの間にか元通りに戻っていた。結城の話を総合すると妖怪事情の一部が見えてきた。
かつて人と綾香氏の類の世界は全く別の代物だったらしい。それが地獄と現世という言葉で現代に伝わっているらしく地獄から妖は一歩たりとも出ることができなかったらしい。それが千年前の話。今から約600年ほど昔、時の天皇が地獄すら自分の領土にすべく呪術師たちに無理やり地獄へ通じる門を作った。門ができた途端、妖が出るわ出るわ一大事になったそうな。即座に妖たちは封印されるか地獄に帰されたらしいが無理やり作った門は消えず、仕方なく呪術による封印で手を打ったのだという。妖共はこちら側の世界を侵略するために現在、閻魔大王を筆頭に戦争の支度を着々と整えており、その封印とやらはあと何年も持たないらしい。
地獄には瘴気が充満していて、並の人間がそれを浴びると妖になるか狂人になるか死んでしまうらしい。しかもその呪術、いい加減なものですでに少し妖がこちらの世界に侵入してきているらしい。大々的な戦争を始める前に力あるものを駆逐しているそうだ。私もすでにその対象に含まれているそうなのでどのみち遅かれ早かれ妖に襲われる運命だったのだ。
そんなことを半人半天狗の結城と私をこんな姿にした張本人である鬼のリンが偉そうに説明してくれた。
「要するに…私らがやる時間稼ぎっていうのは妖怪バスターって認識でいいのかな?」
「…妖怪バスター…プッまっまぁ間違ってはいないけど…。ぷぷぷ…」
会話の最中にリンがいきなり角を出した。
「ちょっリン、今は昼間なんだから勝手に鬼にしないでよ。ほかの人が見たらどうするの!?」
『大丈夫…じゃ…。ほかの人は…というか生きておるもんは一人もおらんようじゃしな。』
「それってどういう意味だよ。」
『わからんのか天狗。儂ら以外はもう死に絶えておるぞ。』
「・・・状況を説明して」
『状況は簡単じゃ。襲撃を受けておる。即死級のな。』
「つまり、話の腰を折りに来た糞野郎がこの病院内にいた人間すべての首を折ったと?」
『首かどうかはわからんが殺したのは間違いない。外に出んほうがいいぞ。連中に居場所が悟られる。』
「ちなみに聞くけどなんでそんなことわかるの?」
『お主…。さっき説明したではないか。儂にとっての角はな、空気中の魔力をさとる…なんじゃったかな…。えーとレ、レ』
「レーダー?」
『そうじゃ、それじゃ。』
「空気中の魔力で妖がわかるのか?」
『主みたく巧妙に隠しておっては見分けがつかんが大抵の奴はただ漏れじゃからの』
「もはやイッカクだよ…」
「んでその便利な角で奴さんの現在地がわかるんだろ場所は?」
『…ちょっと待て…これは…まずいなもうすでにこの建物内は非常にまずいことになっておるわい』
「この気配…ゾンビか?」
『遅いわ。この建物の中にいた人間は残らずゾンビになってしまっておるな。奴らは音と熱で生者を識別するから厄介じゃぞ?』
すでに置いてけぼりにされているが私と私を取り巻く状況が刻一刻と変化してきている…ということは理解できた。割られるガラス、破壊される扉…。音がすさまじく近くから聞こえ、近づいてきている。話の中で出てきたゾンビとやらに攻撃されるとどうなってしまうのか…。不意に風が吹き、窓のほうに視線を向けると今にも降り出しそうな雨雲がこちらのほうに迫ってきているのだった。
今回…。どうもきりが悪いので身近くなってしまいました。
それではまた次回。続く!