決闘。魔王学校 1年目(4月27日。10時ごろ)
決闘の場所は、草原。
身を隠すところは何もなく、障害物もない。
基本的に、真っ向勝負向きの場所になる。
集まってきた観客は、軽く数えても100人以上いた。
人の集まり具合は、薫の予想以上だった。
会議に出席していた武人の他に、文官など様々な立場の者が集まってきていた。
この観客の集まり具合は、きっと誰かが面白がって、人を集めまくったのだろうと薫は思った。
アイは集まってきた者達の面々を見て、目を輝かせ喜んでいた。ここで勝てば薫の名前が売れると。
薫の決闘相手が到着した。
薫は、決闘相手を観察する。
相手は、身長が2mあり、全身筋肉質で大男だ。
武器は、剣を持っている。
相手を見た薫は、見たことある相手だと思って考える。
そして、思い出す。勇者の時代に戦い、弱かったから見逃した相手だと。
薫は、思い出せたことが嬉しくなり、アイの耳元に口を近づけて、誰にも聞かれないように、
「勝てる」
とつぶやいた。
アイは当然勝てるとは思っている。
その上、戦う前に、薫から『勝てる』と自信のある言葉を聞いたので、さらに気持ちが舞い上がり、喜ぶ。
ヒロが、審判を務める。
薫と決闘相手を集め、ルールを説明し出した。
①相手が死んだ場合は、生きている方が勝ち。
②途中で負けを宣言することは可能。また、付添人が負けを認めることも可能。
③審判が技量に明らかに差があると思った場合は、その時点で中止する。
観客は、ルールを聞いて話し出す。
②と③は、アイのことを考えて作ったものだと……。
そして、お互い向かい合い、ヒロの合図によって、決闘が始まる。
相手が薫を見て、自分より身長が低く、細いので弱い相手だと思ったのだろう。
「かかってこい。チビ」
と言って、薫が決闘相手に向けて構えている剣を『カン、カン』と叩いて挑発してきた。
薫はかかって行ったら、それで決闘は終わってしまうと思って、薫が逆に挑発することにした。
決闘相手が持っている剣を、薫が剣で払いあげ、決闘相手の剣を弾き飛ばしたのだ。
通常であれば、薫が剣を弾き飛ばした時にそのまま斬りかかるべきなのに、薫は斬りかからなかった。
相手はバカにされたと思い、怒りながら剣を拾い、薫に斬りかかる。
決闘相手は怒りで周りが見えなくなっている。
そして、力任せに薫に斬りかかる。
決闘相手は、作戦なしで斬りかかっても、勝てると思っているのだろう。
だが、薫にとって決闘相手のスピードも力も、話にならないくらい弱い。
薫は、決闘相手が斬りかかてきた剣を、かわしたり、受け流したり、払ったりした。
すでにこの決闘は、薫の勝ちであることが誰の目にも明らかだった。
薫は、もうそろそろルール③を適用して終わらせて欲しいと思った。
そして、ヒロの方を見たが、楽しそうに笑ってて、まだとめる気はなさそうだ。
さっき会議室でルール①はやるなと言ってたから、やはりルール③でヒロに薫の勝ちを宣言させなければいけない。
薫は仕方が無いと思い、決闘相手が薫の右肩に斬りかかってきたときに、右肩を引いてかわし、剣を持っていない左手を握り、相手の顔を殴り、気絶させた。
それで、ようやくヒロは薫の勝ちを宣言したのだった。
アイの方を見ると跳ねてものすごく喜んでいた。
一方、観客は驚き、ざわついていた。




