パーティ。魔王学校 1年目(4月26日。夜)
「薫。
時間だから行くわよ」
と、アイは言いながら薫と腕を組んだ。
とても嬉しそうな表情をしている。
「行くか。
っつ〜か、この変身って体丈夫なの?」
「大丈夫よ。
明日くらいまでは持つわ。
あと、私のボディーガードということで、魔法のチェックはされないように手続きは済ませてあるわ。
安心して、私とくっついていて大丈夫よ」
「わかった。
信じるよ」
そうして、薫とアイは、部屋を出たのであった。
パーティ会場に着くと、薫は昔見たことのある者がいたので、あまりそっちの方にいかないようにしなければと思った。
すると、すぐに後ろから声がかかった。
「それが、アイのボディーガードか……」
話しかけてきた方を薫が見ると、身長が高く、体が鍛えられている男が立っていた。
声に威厳があり、後ろに何人か部下を引き連れていることから高い身分であることが伺えた。
笑顔であり、お酒が入っているのか気分が良さそうだ。
「そうですわ。
ヒロお兄様が会いたいと言っていた者ですわ」
そうアイが話すと、ヒロが、薫の腕を掴んできた。
「変身魔法を使っているな……。
変身魔法を使わなければいけない事情があるのか……」
薫は、『ドキッ』とした。
いきなり変身をしていることがばれている。
それに、今すぐ変身魔法を解けと言われてしまうんでわないかと心配になり、薫はアイの方を見る。
すると、アイは、
「秘密ですわ。
話せるときになったら、いずれご報告いたします」
と言ったのであった。
「そうか……。
今、この場で魔法を解くというのは簡単だが……。
アイなりに何か考えての行動だろう。
そのままにしておいてやる」
「ありがとうございます。
お兄様」
「そういえば、アキお兄様は軍で働かれてるのですか?」
「そうだ苦戦しているらしい。
長期戦になりそうだ。
そんな事情があるから、強い奴が増えるのは歓迎する」
とヒロは言いながら、握手を求めてきた。
薫は警戒しながらも、握手をする。
すると、一瞬、手から体に魔力が流れる気が薫はした。薫が警戒していたにもかかわらず……。
ヒロの顔が一瞬、笑顔から、真剣な表情に変わる。
薫はばれたかと思った。
が、ヒロは何も言わず別の者のところに行ってしまった。
「あの、よろしければお飲み物はいかがでしょうか……」
と、後ろから薫は声をかけられたので、そっちを見た。
すると知っている天使の顔があった。
年齢を聞いたことはないが、見た目は薫とあまり変わらない年齢に見える。
胸はさほど大きくないが、顔が整っており、天界に一緒に行った仲間がかわいいと言っていた天使だった。
薫が、その天使の顔を驚いて見ていると、天使が、
「あの……。
私は失礼なことをしたでしょうか?」
と言った。
それに対して、アイが、
「なんか失礼なことをしたにきまっているでしょ」
と言いながら、その天使の顔を平手ではたいた。
『パリン』
その音は、天使が持っていたお盆ごとたおれ、グラスがわれた音だった。
薫が、天使の腕や足を見ると所々にあざができていることに気がつく。
「申し訳ございません。
すぐにかたずけますから……」
と、天使は言いながら片付けだした。
天使は下を向いていて表情はわからないが、肩が震えていて、手に涙が数回落ちたように見えた。
そう薫が見ていたら、貴族の格好をした者が「早くかたずけろ」と言いならら、天使の頭にお酒をかけて、グラスを天使の体に投げつけた。また、グラスは割れる。
薫は手を握り、何か言いだそうとした瞬間、アイに手を握られ、
「さっ。
行くわよ。
つかまった奴隷の天使なんてあんなもんよ。
それに、魔王城務めの奴隷の扱いは、まだいい方よ。
もっとひどいこと……、それこそ拷問に近いことを他ではやってるって聞いたことあるから……」
とアイは言い、薫は違う場所に連れて行かれたのであった。




