着替え。魔王学校 1年目(4月26日。昼ごろ)
薫とアイは、雑談をしながら魔王城についた。
薫は、前回一緒に馬車に乗った時よりも、話が弾んでよかったと思った。物理的な距離も近づいたような気もするが……。
魔王城に着く前の馬車の中。
「薫。
魔王城に着く前に、変身の魔法をかけてあげるわ」
「頼む」
アイが、変身の魔法を使った。
薫の見た目がみるみる変わっていく。
身長も高くなり、狼男の様相になった。
「あら、体が大きくなって、服がちぎれてしまったわね」
と、アイが自分で変身させておいて、笑いながら、楽しそうに言う。
「おまえ、わかっててやっただろう……」
「そうに決まってるじゃない。
ちゃんと、服も用意しておいてあげたんだから感謝しなさい。
その服に合うように変身させてあげたんんだからね」
と、アイは座ったまま、差し指を立てて、言ってきた。
アイが用意していてくれた服は燕尾服だった。
馬車から、薫とアイはおり、アイは、
「これから私の部屋に行くのよ」
と言って、薫の手を引っ張って行ったのであった。
アイの部屋は広かった。
部屋の中で何室か分かれているらしく、薫はそのうちの一室に案内されて、イスに座って待っているように言われた。
そして、アイは、
「これから着替えてくるわ。
期待して待ってなさいよ」
と言って、違う部屋に行った。
薫は落ち着かなかった。
女の子の部屋にいるというのもある。
が、それ以上に、薫が勇者だった時に、攻め込んだ場所にいる。
自分をよく思っていない人が、大勢いるはずの場所だ。
だが、薫はここにきてしまった以上、この状況を受け入れるしかないと思った。
そう考えてながら、アイが好意を持ってくれている理由を考えることにした。
アイは、元魔王が死んでいないことを知っていた。
それに、いろんな事情を薫以上に知っているようだ。
すると、アイと同じ事情や情報を持っている者は、アイと同じように薫に好意を持ってくれるかもしれない……。
でも、アイと同じような者が一体どのくらいいるのだろうか……。
薫があれこれ考えていると、アイが着替えて終わって部屋に入ってきた。
青紫色のワンピースのドレス。
胸元も少し空いており、ダイヤなどの宝石が付いたネックレスを身につけている。
薫は、とても綺麗だと思った。
「薫。
見とれてないで、思ったことを口にしていいのよ」
「うっ」
薫は、綺麗だと気持ちを読まれていると思い、言葉にできない。
もちろん、綺麗と言うのが恥ずかしいのもある。
だが、アイは、薫の気持ちをちゃんと読んでいなかったらしい。
「薫は、今、私を抱きたいって思ったのでしょ」
と、アイは言ったのであった。




