剣探し。魔王学校 1年目(4月23日。放課後)
魔王学校の教室。
授業が終わり、隣の席にいるアイが薫に話しかけた。
「薫、放課後どっかに行かない?
2人きりで……」
「わかったよ。
でも、どこに行くんだよ」
「もちろん内緒よ。
ご主人様に黙ってついてきなさい」
と、アイが言い、一緒にクラスから出たのであった。
薫は、クラスから出て行く途中、ナナと目があった。
ナナも放課後、薫を誘う予定だったのだろうか……。
薫とアイは学校から外に出た。
「外に出ても、大丈夫なのかよ。
また、襲われたらどうする気なんだ?」
と、薫が聞く。
「大丈夫よ。
薫が、守ってくれるでしょ?」
「こないだのような黒色の羽を持つ相手が出てきたら無理。
聖剣は魔界では使いづらいしい、代わりとなる剣はこないだ折れて持ってないし」
「ふぅ〜ん。
聖剣はユイに預けてるのかな?
あの娘、魔界の住人って感じがしないものね。
天界の関係者ってところかしら……。
もし、天界の関係者だったら、歓迎できないわね。
って、あなたに聞いても、正直に答えてくれねいだろうから、ほおっとくわ。
力も弱そうだしね。
そしたら、これから武器屋にも行って、剣を探しに行きましょう」
「おいおい、俺はお金を全然持ってないぞ」
薫は、アイがユイの正体を見破っていることに驚いた。
が、アイ自身で話題を打ち切ったから触れないことにした。
「そう、貧乏なのね」
「働いてないんだから仕方が無いだろ。
貧乏っていうか、野宿して、食べ物は適当に山で取ればいいのだから、お金なんて必要ないだろ」
「まぁ、そうね。
でも、剣がなくても薫は十分強いだろうけど、いざって時に不安よね。
じゃぁ……」
と、アイがなぜか、『じゃぁ』の後をすぐに言わず、間を空けた。少し考えているようだ。
薫は、当然、『買ってあげるわ』と言ってくれることを期待してしまった。だが、薫の考えは甘かった。
ユイの口から出てきた言葉は、
「私のボディーガードになったんだから、いちお、給料が出るようにしておいたわ。
その給料を前借りさせてあげる」
とのことだった。
薫は自分が甘かったと気がついた。
街に行き、武器屋に着いた。
薫は、自分にあった剣がないかと、いくつか持ったものの、なかなかこれだっていうものがなかった。
しかも、せっかく買うくらいなら妥協したくないと思って探していた。
「あぁ〜もう。
男らしくさっさと決めちゃいなよ」
薫が、気に入った剣が見つからず、武器屋をまわって5件目を出た時に、アイから出た言葉だ。
「仕方が無いだろ。
なかなかないんだから。
アイを守るために剣を探してるんだから」
アイは、自分を『守るために』と言われて嬉しくなった。
だが、5件まわって見つからない疲労感はそれでは消えなかった。
「ふぅ〜んだ。
そんなかっこいいこと言ったってダメなんだからね。
さっさと見つけてよ。
というか、聖剣と比較しているんじゃないでしょうね?
あんなのと同等なものって売っているわけないんだから……」
と、横を向きながら、やや顔を赤らめて言ったのであった。
「あと、もう一件行って無かったら、今日は諦めるか……。
そういえば、アイはどこへ行くつもりだったんだよ?」
「別に行き先は決めてなかったんだ。
今日は、一緒に剣を探してあげたんだから、感謝しなさいよ。
で、誘った理由は、今度の土曜日に一緒にパーティに出て欲しいの。
いやとは、言わせないわ」
と、アイは照れ臭そうに誘ってきた。
薫は、特に予定がなかったので、
「わかった」
と、答えたのであった。
剣は結局、最後に行った武器屋で購入をした。
薫が妥協できる範囲で購入したものの、薫の給料の5年分の価格だった。
アイは帰る時に満足そうに、
「これで薫は、借金を返し終わるまでは、私の奴隷ね」
と言ったのであった。




