アイの状況。魔王学校 1年目(4月22日。時間、不明)
「うっ、う、ぅううっ」
捕まったアイは気を失っていたが、意識が戻り、あたりを見渡した。
あたり一面は、荒野になっている。建物らしきものは見えない。
見慣れない風景。
だが、雰囲気からして魔界のどこかなのだろうが、少し天界の空気を感じるため、魔界の外れの方だと思った。
アイの体の状態は、椅子に座っているが、手と足が縛られ動かない。
どうしてこういう状態になってしまっているのかアイは思い出す。
朝、薫と一緒に出かけて、昼食を食べている時に氷の攻撃を受けて相手を撃退し、その瞬間、黒い羽の相手襲われ黒い狼型の使い魔にやられ気を失い、起きたらこの場にいるのだということだった。
アイは、状況から、人質に取られているのだろうと考えた。
だから、必然的に見張りの誰かがいるはず。
それで、
「誰かいないの?」
と、何度も呼びかけたが、返事は一切なかった。
そして、今度は、感覚も研ぎ澄まし、魔法も使い、近くに誰かいないか探る。
だが、誰もいない。
アイは、なにかの理由で見張りがいなくなっているのであれば、逃げるチャンスだと思い、手足を縛っている縄を魔法で切り、走り出した。
が、その行動は、罠だった。
アイが数歩走り出したところで地面が青く光る。
その瞬間、アイは青い光に包まれて、再び動けなくなってしまった。
「こんな簡単な罠に引っかかるなんて……」
アイは自分の失敗を悔しがった。
そして、何度も罠の魔法を解除しようとしたが、無駄だった。
しばらくして、アイの前で白い光ができた。
するとその中から、黒い羽を持つ相手がやってきて、アイに話しかける。
「あはっ。
じっとして待っていられないなんて、とんだおてんばさんね。
せっかく椅子も用意して、座らせておいてあげたのに……。
親切を無駄にしてしまうなんて、いけない子だわ」
アイは微笑しながら皮肉たっぷりに、
「こんな意地悪な罠を作る誰かさんよりはましよ」
と返す。
「あはっ。
そうよろこんでくれて嬉しいわ。
今、これよりも強力ものをしかけてきたわ。
昔、試作段階の時に、元魔王であるあなたのおじいさんに使ったら、1週間縛られたままで、解除した後も傷だらけで1週間は動けなかったと聞いているわ。
いちお、つかまったまんまじゃかわいそうだと思って、薫君に迎えにくるよう地図を渡しておいたから。
きっと助けに来た時に、罠を堪能してくれるでしょう。
しかも、彼に失礼が内容に元魔王に使った時よりも何倍に強力にしておいたわ」
楽しそうに黒い羽を持つ相手は話す。まるで、新しいおもちゃが届くのを待つように……。
「えっ……。
……、……。
薫とは、まだ知り合ったばかりだし、危険をおかしてまでこないわよ」
アイはうつむいて、悲しそうに話す。
「そしたら、あなたが死ぬだけだわ。
今日中に、彼がこないと、あなたを殺すって伝えてしまっているのですもの……」
「どうしてこんなことをするの?」
「あなたが、元魔王から託されたものを知りたくて……」
「えっ……?」
「あなたは、何か託されているのでしょう?」
「知らないわ」
と、アイは、横を向いて無表情で言う。
「ふぅ〜ん。
まあいいわ。
後で、そのうち私達に協力してもらうことがあるかもしれないから、ここで強引にやって嫌われたくないわ。
だから、そういうことにしておきましょう」
「私は、もう十分あなたのことが、大嫌いだわ」
アイは、黒い羽を持つ相手の目を見ながら言う。
「そう言わずに、仲良くしましょう」
と、黒い羽を持つ相手は、しゃがみ込み、アイの頬を、手でゆっくりと撫でたのであった。




