おかしいと思ったことはないかい? 魔王学校 1年目(4月18日。放課後)
「いやぁ〜。
本当に、薫君達の仲間になってよかったよ」
と、フミは生徒会室の椅子に座って話している。
「よかったじゃ、ないですよ。
こんな力仕事ばかりやらされて、大変なんですから」
と、生徒会室の本棚を薫が一人で移動させている。
「がんばってください」
ユイが薫の応援を楽しそうにしている。
今、生徒会室にいるのは、薫、ユイ、フミの3人。
他の生徒会役員は、みんな炎の鳥によって負傷したりして休んでいる。
放課後、薫達が教室から出ようとした時に、フミにつかまり、「仲間は助け合うもの」って言って、強引に生徒会室へ連れてこられたのであった。
「薫君はいまいちやる気が足らんなっ。
ちゃんと頑張れば、おねいさんがご褒美をあげるからなっ」
「いらないですよ。
なんかご褒美を要求したら、どんな仕事を要求されるか考えただけで恐ろしいですよ」
「そうです。
フミさん、薫には、『私をご褒美にあげます』から、フミさんのご褒美はいらないです」
「ユイがそういうのなら、『私も薫にあげよう』」
「いやいや、どちらもいらなですよ」
「薫は、そういいながら私に手を出してくるんですよねぇ〜」
「ユイはともかく。
学校の美少女ランキングで1位を争う私をいらないだなんて……。
他の男子が聞いたら、闇討ちを食らうぞ」
「あぁ〜。もういい加減にしてください。
そうやってからかうんだったら、もう手伝いませんよ」
「そうですね、薫。
手伝いをやめて、私とどっかに行きましょう」
「おい、おい。
ユイはどっかに行ってもいいが、薫君にいなくなられたら困る。
私がお金を出して、ユイにジュースを買ってきてもらうから、もう少し手伝ってくれ」
「えっ、フミさんは、薫と2人きりになって、エッチなことをする気ではないですよね?」
「自動販売機はすぐ近くだからそんなことができるわけないだろう?」
「わかりました。
薫が頑張ってるので、買ってきます」
と、ユイは言って、ジュースを買いに行った。
「それにしても、薫君が使っている剣は、ボロボロだなぁ〜。
次に何かを切ったら、折れるんじゃないか?」
フミが薫の剣を持って、軽く振りながら言う。
「コツがあるんですよ。
まだもう少しは使えると思います」
「そうか?
買いかえた方がいいような気がするが……。
ところで、ナナの体はどうだった?」
「いきなりですね。
何もないですよ」
「ヘタレだな」
「……。
ところで、ユイを部屋からいなくしたのは、なんか理由があるのですよね?」
「特に理由はないが、2人で話しをしてみたくなってね。
薫君は、この世界がおかしいと思ったことはないかい?」
「おかしいとですか?」
「そうだ。
だって人間より強い魔物が、人間より環境の悪い魔界で生活しなければいけないなんて、普通、おかしいと思うだろう?」
「……、……」
薫は、考えたことがない話だったので、答えられなかった。
元勇者ということもあり、どこか人間側の視点で考えてきてしまったのだろう。
だが、魔界の住人の立場だったらどうか?
当然、おかしいと感じるはずである。
薫がそう考えていると、フミが
「ちっ。
もう、戻ってきたのか」
と、つまらなそうにつぶやき、薫に抱きついてきた。
「なっ、何をするのですか?」
と、薫はあわてていると、生徒会室のドアが開いた。
「いったい私がいない間に何をしてたのですか?」
ユイの声だった。
ユイは、笑顔を作っていたが、顔は引きつっており、怒りのオーラを漂わせていた。




