元勇者は魔王学校の生徒会副会長を仲間にする。魔王学校 1年目(4月17日。6時ごろ)
「まあ、立ち話もなんだから、そこらへんにあるイスに座って大丈夫だよ」
とフミは言う。
生徒会室には誰もいなかった。
「「ありがとうございます」」
と、薫とユイは伝えた。
そして、フミの正面になるように、机からイスをひいて座った。
「今回は、本当にありがとう。
炎の鳥退治が一番大変なことだと思ってたからね。
薫君が入学する前は、生徒会長が一番強かったんだ。
だから、会長がやられてしまった時は、実はハラハラしてたよ。
だが、会長がたおせなかった鳥をいとも簡単に薫君はたおしてしまった。
恐れ入ったよ。
さすがは、勇者といったいところか」
フミは、笑なが、人の悪そうな表情を作り話す。
薫は一瞬、驚いたが表情を隠し、
「いいえ、勇者ではありませんが……、……」
と答えた。
元勇者とバレるのはまずい。それに、何の意図を持ってこんな話をしてくるのだろうか?
「そうか」
「そうです」
「確か、勇者だったものは、人間界で犯罪者にされているから、犯罪者と呼ぶべきか?
確かに魔界にいる方がふさわしいのかもしれないな」
「うっ」
薫は、もういいのがれはできないと思い、剣に手をかけた。
「まあ、待って欲しい。
このことを知っているのは、おそらく私だけだ。
元魔王の孫である会長にもさりげなく聞いて見たが、知らなかった。
もし、誰か知っていれば、会長に伝えているだろうからな。
どうして、元勇者がこの学校に入ったのだい?」
「教えられないな」
「では、一方的に推測を話そう。
元勇者である薫君は、魔王になるために、この学校に入ったのではないかい?
ユイちゃんは、それを手助けする天界の天使だね?」
「自分は、元勇者でなければ、ユイは天界の天使ではありません。
いったいどこでそのようなデマを?」
フミが言っていることは全部正しかったので内心驚いたが、もう何を言われてもポーカーフェースでいようと思い、表情は崩れない。さすがは、元勇者だけはある。
「情報の仕入れ方は教えられないな。
まあ、いい。
元勇者ではないとしよう。
では、質問を変えよう。
私を2人の仲間にしてくれないか?」
「お断りします」
「私を仲間にしておくと得だぞ。
生徒副会長という立場にもある程度の権限がある。
監視も得意だ。保健室の監視は薫君も、ユイちゃんも気づかなかったのでは?
そうそう、監視で思い出したが、私は薫君に貸しがあったな」
「そんなの、言葉だけであれば、証拠がないので知らないとしらをきります。
それに、仲間ってどのようなことなのでしょうか?」
薫は、フミが録画をしている可能性も考えていたが、録画してない可能性も考え、そう言ったのであった。
だが、フミはちゃんと録画をしていたらしい。
「仲間とは、そうだな、今後、今回のようなことが起きた時、助け合ったり、相談したりする間柄かな。
それにだ、実は、薫君が保健室に入った時からずっと録画をしていたのだよ。
この録画があれ」
と、フミが話している途中で、今まで話に加わっていなかったユイが急にあわてて話出した。
「薫様、フミさんに仲間になっていただきましょう?」
真剣な眼差しで、薫を見てくる。
そして、ユイが今度はフミを見て、続けて話す。
「フミさん、盗撮テープを返してください」
「わかった。
だが、ユイちゃんが、薫君を説得してくれるのであればな」
薫は、フミに裏があるようで仲間にしたくなかった。
だが、ユイの説得活動は必死であった。
ユイがあんなに必死になっているということは、盗撮テープを学校に提出したら、退学になってしまうほどやばいものなのだろう。ユイが保健室でそんなにヤバイことをしていたのであれば、ちゃっんと聞いておけばよかったと思った(ちゃんと聞いておいても何もできないが……)。
薫はなんとしても学校を卒業しなければいけない。
それなので、仕方がなく、フミを仲間にすることにした。




