元勇者は炎の鳥をたおす。魔王学校 1年目(4月17日。5時ごろ。続き)
生徒会長がたおれた今、炎の鳥と戦えるものは薫しかいない。
薫は剣をかまえ、炎の鳥に斬りかかる。だが、はずれる。
炎の鳥は飛び上がり、薫との間合いをとっている。
炎の鳥は薫と戦った時に痛い目にあっているため、対策を練ってきているようだった。
薫は、さっき斬りかかり、炎の鳥の動きを見て、自分の間違いに気がついた。
薫からすると、思っていたより炎の鳥はそんなに強くない。いや、弱い。
薫が間違えた理由は、魔王学校の生徒の力を過大評価してしまっていたことと、前回炎の鳥と戦ったときはいきなりだったことになるだろう。
薫は、炎の鳥までテレポートして一瞬で間合いを詰め、剣で一刀両断した。
そして、炎の鳥は、消えて行った。
薫が地上におりて周りを見渡すと、学校の生徒は薫とユイ以外は誰も立っていない。
悲惨な状況になっていた。
「やりましたね」
ユイは薫に近づき、話しかける。
「だが、周りを見渡してもナナはいない。
どうなっているのだろうか?
負傷した生徒達の手当てをしたいのだけど、ここまで数が多いとどうしたらいいか困ってしまうね。
全員に回復魔法をかけるのもしんどいし、負傷したまま動かすと余計悪化してしまう可能性がある。
まずは、すでに回復魔法をかけてある生徒会長から保健室に運び、誰かがいたら助けをお願いするか?」
「そのようにしますか」
ユイは薫の意見に賛同した。
薫が生徒会長の近くに行き、背中にかついでいると、フミと他の生徒達が校舎から出てきた。
そしてフミが声をかけてくる。
「炎の鳥を簡単にたおしてしまうなんて、やっぱりすごいね。
負傷した者達は、今出てきた生徒に看病をさせる。
話したいことがあるから、ちょっと一緒に生徒会室に来てくれないかな?
生徒会長もそこにおいといてくれれば他の者がやるから大丈夫だよ」
「わかりました」
と薫はそう答えた。
するとユイが話に加わってきた。
「こんな非常事態の時に、生徒会室でいったいどのような話があるのでしょうか?」
「んっ、なんだ知りたいか?」
「当然です。
私は、薫の妻なんですから」
「俺は、お前の夫じゃないからな」
「当然、愛を語り合うに決まっているだろう?」
「な、な、なっ。
何を言っているんですかっ」
「フミさんがいってるのは、冗談に決まってるからな。
ユイ、信じるなよ」
「まあ、冗談だ。
この事件真相がわかったので、いろいろと話したいと思っているのだ。
ユイも一緒にくるとよい」
「私も同席するのなら、いいですけど……」
薫は、フミを見るとどこにも傷はないことを不審に思った。
そして、今まで何をやってたのか不思議だった。
が、そのことについて、生徒会室で聞こうと思ったのだった。




