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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇青年期編~第三章~◇
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バラスチカ攻略戦~その十~


 リーンらは黄竜の話を聞いていた……

黄竜曰く……自分は、元々このバラスチカを含む草原地域を縄張りにしていて、

そこに帝国軍が、無理やり都市を作ったとの事だ。

その際、この地域にいた、通常の地竜も相当数狩られたとの話だった。

黄竜は当初、このバラスチカにはあまり関心が無かったが、

あまりに横暴な帝国軍に憤り、戦いを挑んだが、

異世界人によるエーテルクォーツ同士の共鳴を使った支配に抗えず、

戦闘の手駒とされていたとの話だった。


そして、主に帝国内の紛争に借り出されていたらしい。

黄竜は、意識はあるが、体が言う事を利かなかったらしい。

その為、自尊心は踏みにじられ、屈辱に満ちた日々を送らされていたとの事だ。


同胞の仇も討てず、自身も良いように操られ、

殺戮を繰り返す日々は高い知性を持った黄竜としてはどんなに絶えがたかった事だろう……

そして、今日、やっとエーテルクォーツの一つが砕ける事で、自我を取り戻し、

一矢報いる事が出来たという訳だ。


「……そこで、礼と言っては何だが、御主等に協力したい」


「どうだろう……我も御主らに同行させてはくれまいか?

どうしてもアヤツの最後を見届けたいのだ。

我がいれば、先ほど飲み込んだクォーツの効果で、アヤツのクォーツを無効化出来るぞ?」


「それは、助かります。

古代竜のエーテルクォーツを無効化できれば、こちらにかなり有利です。

それでも、恐らく、敵は異世界製の武器で対抗してくるでしょうが、

脅威が一つ減るだけでも助かります」


「そうか?

では、我も同行して構わぬのだな?」


「はい、よろしくお願いします」


「我こそよろしく頼む。

我が名は、『ザッハーク』ヌシの名は何というのだ?」


「申し送れました、僕の名は『リーン・ウォーター・ペンドラゴン』です。

『リーン』と呼んでください」


「分かった、『リーン』よろしく頼む」


僕らは協力して、ダニエルを追うため、連絡のあった、都市の中央部の倉庫に向かうのだった。


◇◇◇◇◇


 バラスチカの都市中央部には、司令塔に隣接した倉庫が幾つか存在していた。

僕らが駆けつけた時にはこちらの主力の兵が100名ほど集まっていた。

この地区を占拠する人員も合流しているのが分かる。


 僕らが駆けつけると、伝令が駆け寄って来たが、後ろに追随する『黄竜』を見て、

近づくのを躊躇った。


僕は苦笑し、黄竜が仲間だと軽く説明する。

それでもおっかなびっくりな様子で、黄竜を気にしながら、状況を報告する。


「敵、司令官は現在、あちらに見える倉庫に逃げ込んでおります。

敵司令官がこちらに来る前にこの一帯は我らが部隊により制圧済みでしたので、

敵司令官に付く兵は現状居ない状態です。

何度か、突撃を試みましたが、敵の魔法障壁により、近づく事ができません。

目下、部隊を各出入り口に配置し、様子を窺っている状態であります」


僕は、報告を聞き、黄竜に振り返る。


「『ザッハーク』聞いての通りだ。

敵の障壁を無効化出来るかい?」


「分かった、やってみよう……

まだ、追加したクォーツを連動させるのに慣れていないので、少し時間をくれ……」


「了解だ。

よろしく頼む」


そう言うと、黄竜のザッハークは目を瞑り集中する……

その体が淡い光を放ち明滅する。


すると、敵将が立てこもっている倉庫に張り巡らされた黒い膜状の障壁が

黄竜の光の明滅に合わせ瞬き、暫くすると掻き消えた。


倉庫を包囲していた兵達から感嘆の声が上がる。


「よし!

敵の障壁は無効化された!

全部隊、突入出来そうな箇所に配置に付け!

号令と共に突入だ!」


兵達は、頷き、小隊ごとに倉庫の窓や扉に突入する為、

配置に付く。


 僕は全員が配置に付いたのを確認し、号令を出した。

「突入!」

ここに集まる25名の兵士が一斉に倉庫に突入する。


僕も先頭きって、正面入り口からルールスペースを展開しながら突入した。

僕に同行したのは、ベアトリス、ロドリゲス、キース、ティファの四人。


倉庫に突入すると、広い空間の中央に大きな丸い鉄の塊が一つ……

高さは160cm……横幅は3mほどだろうか…楕円形の球体が台座に乗っていた。

それ以外何も無かった……


そして、その鉄の塊に凭れ掛かるように座り込んでいる人物が一人……

敵将のダニエルだ。

それ以外の敵影は見当たらない。


僕らは注意深く包囲を縮めながらダニエルに地近づく……


ダニエルは、俯いていた顔を上げ僕を虚ろな目で見て、呟くように話始めた。

「……意外と早く来たな……だがもう手遅れだ……」


僕は怪訝な顔で、言葉を返す。

「……遅い?……とは何が遅いんだ?」


僕は嫌な予感で冷や汗を流す……

どうにも、ダニエルが凭れ掛かっている物体が気にか掛かる。


『いや……まさか……ハザードシンボル(放射能を示すマーク)も無いようだし……

いや、ハザードシンボルは1946年頃からだから……まだ無いのか?』


僕が、鉄の塊に注視していると、不意にダニエルが笑い出す。

「はははは……もう、全て遅いんだよ!!」


そして、背後の鉄の塊をバンバンとと叩く。

「もう、コイツの時限装置を押したからな!!

最早誰にも『コレ』を止めることは出来ない!!」


「まさか!!さっき話しに出ていた新型爆弾!!」


「そうだ!

コイツは、ニューメキシコ州で実験されたプルトニウム型原子爆弾ガジェットの改良型だ!!

22ktのTNT以上の爆発と破壊力を持つ!!

我々はコイツを輸送する部隊っだったのだよ!

こんな所で、試す事になるとは思わなかったがな!!」


僕は、ダニエルに駆け寄り、その襟首を掴み頭上まで締め上げながら持ち上げる。


「すぐ起爆装置を解除しろ!!」


ダニエルは呻きながらも口と端を吊り上げ笑いながら答えた。


「無駄だ!もう誰にも止められん!」


僕は、ダニエルを荒く突き飛ばし、原子爆弾に駆け寄る。

爆弾を見ると起爆装置のタイマーと思われるデジタル数字のカウントが目に留まる。

後……20分!!

僕は、ダメ元で、ルールスペースで、起爆装置を凍結させようとしたが、

やはり、操作部分も異世界製なのか、凍結も分解も出来なかった。


僕は、即座に兵達に叫ぶ。


「全部隊!即時退避!!

ここから……いや、バラスチカから出来るだけ離れろ!!

この爆弾はこの都市を消し去る威力がある!!」


戸惑う兵達に僕は更に続ける。

「後、20分しかない!!

他の部隊にも通信して、何処からでもいい、バラスチカから退避するんだ!!

急げ!!」


兵達は慌てて走り出す、そんな中、僕は、爆弾に手を当て、ある事を決意した。


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