表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇青年期編~第三章~◇
60/66

バラスチカ攻略戦~その九~

 ダニエル・ノートンは眼下の敵将リーンに注意を払いながら、

各所で火の手が上がるバラスチカの光景を見渡した。

この都市の主要箇所……石油精製所、指令所、航空機の格納庫、各種兵糧倉庫……

この都市の重要な場所は全て破壊されたようだった。


最早、この都市は放棄するしかない……

特に石油精製所と隣接した石油タンクからの火の手を消すすべが無い。

石油タンク火災の消火には、燃焼表面を泡で覆って空気を遮断する「泡消火剤」で行うが、

その大量の泡がこの被害では用意出来ないのだ。

石油精製所とタンクの延焼は致命的と言えた。


 ダニエルは、再度、リーンを睨みすえる。


「……よくも私のバラスチカを!

この都市を作り上げるのにどれほど苦労した事か、

貴様には分かるまい?!」


「……いや……僕にも分かりますよ。

これだけの都市を『この世界』に再現するのにどんなに苦労することか……

なぜあなた方は、この素晴らしい技術を平和の為に使わないんですか?」


ダニエルはリーンの言葉に訝しむ。


「やはり……貴様……姿形は『この世界』の者のようだが……

どういったカラクリかは分からないが、その知識や考え方はこの世界の者ではないな?!

貴様……いったい何者だ?!」


「……僕は……あなた方も知っている通り、

エルウィン王国王弟リーン・ウォーター・ペンドラゴンですよ。

……ただ、僕には前世の記憶があるだけです……」


ダニエルはその言葉に今まで足りなかったパズルのピースが見つかった思いがした。


「……そうか!

貴様の前世が異世界人!

我々と同じ世界なのだな?!」


「……そうですね……年代は貴方方の時代より幾分、未来のようですが……」


「何?!未来人だと?!そんなSFな……

いや……この世界自体、ファンタジーなのだからそういう事もあるのか……」


「まあ、それはどうでもいいことです……

貴方方の所属していた、アメリカ合衆国は、世界大戦を終わらせるべく戦っていたはずです!

なぜ、異世界に来てまで戦火を広げるような事をしているんですか?!」


「貴様には分かるまい……

我々がどんな思いでこの『イカレタ世界』を生き抜いてきたか!!」


私は、リーンを睨みつけながら、自らの過去を話す。


「我々の部隊は新型爆撃機と新型爆弾の試験運用中だった……

部隊の移動中、我々は嵐に遭遇し、気が付くと、この世界に飛ばされていたのだ……


我々は見たことの無い草原に不時着した。

最初は、近隣の町で情報収集しようとしたが、

この世界のヤツラは我々を見た途端、有無を言わさず攻撃してきたのだ。


まあ、後になって分かった事だが、

この世界の宗教『聖十字教』が、異世界人を悪魔と定めていたため、

そういった対応だったのだがな……」


私は、一度リーンを見たが、

リーンは私の話をじっと聞いていたので、話を続けた。


「我々は各地でこの世界の軍隊と戦った……

2年間もだ。


補給も援助も得られない戦いが如何に過酷か、お前に分かるか?!


 我々は何時攻撃されるか分からない中、逃げながら抗戦した。

爆撃機で、この地を離れる事も考えたが、燃料の問題と、新型爆弾の破棄が困難な事もあり、

我々は近場の移動しか出来なかったのだ。


幸いにも我々には魔法攻撃が利かず、我々の武器は魔法障壁を無視していた。

だから、兵力に差があっても我々は互角以上に戦えていた。


しかし……何時攻撃さるか分からない状態の心の疲弊と、

物資の不足は如何ともしがたかった。


物資については、最初は、一般市民と交渉して物資を得ようとしたが、

何処も我々との交渉を拒んだのだ。

我々は略奪するしかなかった……


我々はこの世界の獣人を憎んだ!この世界を憎んだ!神を呪った!


そして、何時しか我々はこの大陸で指名手配されていた。


そんな逃走生活の中、我々は当時の皇帝の打倒を試みる一派と手を結ぶことになる……

現皇帝の『アドリアン・アレキサンドル六世』率いる一派にな……

当時、アドリアンは皇帝から疎まれていた……

その高すぎる能力と智謀を恐れていたのだ。


帝国内のアドリアン派は少なく、当時のアドリアンは戦力を渇望していた。


だから、アドリアンは宗教上の迷信より、我々の戦闘能力を高く評価した。

アドリアンは、技術協力を条件に自身の領地に我々を匿まったのだ。


そして、我々の技術提供により、アドリアン派の兵力は強化され、

アドリアンのクーデーターは成功し、ヤツは新皇帝となった……


まあ、アドリアンは兎も角、他の官僚や将軍は我々を良く思っていなかったのだがな」


「……その迫害を受けている時ならまだしも、今は帝国の要職に付いているのでしょう?!

今なら、戦争を止める事ができるんじゃないんですか?!」


「……今の立場は、自ら勝ち取ったものだ!

我々の受けた屈辱は晴らされていない!

この世界の獣人に仲間が何人殺されたと思っているんだ?!

この世界の獣人どもに我々の力を思い知らせてやらなければならない!!」


「……思い知らせるとは……どうするんです?」


「……どちらの存在が上なのかをはっきりと分からせてやる!」


「……それは全ての者の上に立つという事ですか?」


「……そうだ!!」


「……そんな事を力ずくでしても……この世界の人々に支持されませんよ?!」


「支持などされる必要はない……支配するのだからな……

優れた者が世を支配するのは世の理だ。

我々が優れているのはキサマも分かっていよう?!

この世界のヤツラの意見など聞く必要などない!!」


 ダニエルがリーンを睨みつける。

その時、周りから『雷鳳騎士団』の面々が『雷鳳騎士団』の主力の面々が十数人の兵を伴って、

倒れた黄竜とダニエルを包囲するように現れた。


 皆それぞれに、ダイナマイトを付けた矢やレーザー銃を改良した、簡易レーザー砲を構えている。

簡易レーザー砲の形は一見バズーカ砲だ。

その形状は、1m30cmほどの筒状で肩に担ぐ形で構えている。


ベアトリス、ロドリゲス、キース、ティファが叫ぶ。


「殿下!ご無事ですか!!」

「大将大丈夫ですかい?!」

「リーン待たせたな!」

「リーンさん!無事ですか?!」


「ああ……無傷とはいかないが何とか無事だよ」


「リーンさん!怪我を?!

今、手当てします!」


「いや、ティファ、今は良いよ」


僕は、ティファに手当てを断り、右手の剣を構え直し、空中のダニエルを睨みつける。


「あなたの目論見は潰えました!

大人しく投降してください!!」


「まだ、潰えてはいない!!

黄竜!!

立ち上がるのだ!!」


その声に応じるように、治りかけの足をふらつかせながら、

黄竜が立ち上がろうともがく。

あれだけ、切り刻まれたのだ、流石に数分では再生しきれず、立ち上がろうとして、

倒れてしまう。


「何をモタモタしている!!

この化け物!!

化け物なら化け物らしく敵を恐怖させろ!」


ダニエルは再度命令する為、左手を黄竜に翳し、エーテルクウォーツの共鳴をさせる。

その共鳴の音が鳴り響いた時、

左腕の緑色のエーテルクウォーツが「パキィィィィィン」と砕けた。


「な!何?」


その途端、黄竜は両足が傷ついているとは思えない跳躍を見せ、

ダニエルの左腕に噛み付き、左腕の肘の上辺りまでを噛み切った!


「ぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!」


ダニエルの叫び声が響き渡る。


ダニエルは即座に重力攻撃を黄竜にかけ、黄竜を押し倒す。

そして、荒く息をつく。


「ぐぅおおおお……この化け物……何てことしやがる……」


リーンは、その独白に答える。


「さっきの僕の攻撃……あれはあなた自身を狙ったものではありません。

最初から左腕のエーテルクウォーツを狙ったんですよ。

浅く傷つける程度でしたが、あなたが不用意に振動を加えたので砕けたようですね……」


ダニエルは僕を睨みつける

「くそ!くそ!くそ!……許さん!許さんぞ!!

貴様も!この世界も!!」


ダニエルはそう叫ぶと、踵を返し、バラスチカの中央部へと飛び去った。


僕は、その場で、部隊に支持を出す。


「『雷鳳騎士団』は此れより追撃戦に入る!

ここの部隊は敵将を追う!

動ける者は敵将を追え!」


そう叫ぶと、主力の4人を残した他の兵がダニエルを追いかけた。


僕は、膝を付き、左肩を抑える。

直ぐにティファが駆けつけた。


「リーンさん!大丈夫ですか?!

直ぐに手当てします!」


「ああ…ティファありがとう……でもまだ戦闘中だから、

すまないけど、止血だけお願いするよ……」


「ほんと、無茶しやがる!

古代竜を一人で相手するとか……最早人間じゃねえな!」


「あったりめえだ!大将は人ならざる者だからな!」


「二人とも口を慎め!団長に失礼であろう!」


「……みんな……僕を何だと思ってるんだよ?

まあ、人とは違う能力はあるけど、これでも怪我はするし、心もある。

僕はみんなと同じ『人間』だよ」


みんなは顔を見合わせ笑いだす。


「規格外だけどな!」

「……そうそう、かなり規格外ですな!」

「貴様ら!優れていらっしゃると言え!」

「そうですよ!みなさん!」


 そして、応急処置が終わった頃、先行していた兵から魔法石での連絡が入る。

バラスチカ中央部の倉庫に敵将を追い詰めたとの連絡だった。


僕らは立ち上がり、そこを目指そうと動きだす。


その時、低い声が響き渡った……


「小さき者よ……我の話を聞いて欲しい……」


その声は、倒れている、黄竜の声だった。

ご意見・ご感想御持ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ