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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇青年期編~第三章~◇
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バラスチカ攻略戦~その八~

 T・レックスことティラノサウルス……地球の白亜紀の肉食恐竜で、史上最大と言われていたもの…

T・レックスは最大で13mと言う話だったが、目の前の『地の古代竜』はもう一回り大きいだろう。

恐らく、15m以上……僕達など一飲みだ。

皮膚はまるでワニのようにうろこ状で、硬そうだ。

そして、その皮膚は黄土色…まるで砂漠のトカゲを彷彿とさせた。

もっとも、大きさは桁違いではあるが……


 リーンは、その『地竜』の出現を確認するやいなや仲間の三人をルール・スペースで包み、

50m後退していたが、相手の大きさを考えると数歩で距離を詰められそうで、

生きた心地がしない……


 僕は黄竜の様子を窺う……

古代竜はどの撞も知性的と云われているが、目の前の黄竜はとても知性があるとは思えない。

すると、ティファが何かに気が付いたようだ。


「リーンさん、あの黄竜……目が赤いです……何かで操られているんじゃないでしょうか?」


僕も黄竜の目を確認する。

確かに目の瞳が真っ赤だ。

水竜のカリーニは青目だったのを考えると、古代竜も魔法属性によって瞳の色が違うのだろう。

黄竜ならば、黄色と言うか体の色と同じ黄土色だろう。

やはり通常の状態では無いと思われた。

そんな事を考えていると、黄竜が雄たけびを上げた。

凄まじい大音量で吼える。


「グウォォォォォオオォォォ」


何か苦しそうな雄たけびだ。

その雄たけびと混ざって、耳障りな共鳴音が「ビィィィィィイン」と響く。

良く見ると、黄竜の後方上空に浮かんでいる参謀長から聞こえてくる。

僕は、光の屈折率を変えて、遠視し、参謀長を注視する。

……どうやら参謀長の両腕のエーテルクォーツが音を出しているようだ。


 ここからは推測だが、古代竜のエーテルクォーツは共鳴するのではないだろうか?

共鳴させる事で、意識を共有するのでは?

さらに、黒竜の『感情』を操作する魔法で思考を制御されていると考えるのが妥当だと思えた。

そして、魔法石がわりに黄竜を魔力の供給源にしている……


どちらにしても参謀長か、黄竜のどちらかを倒さないといけないだろう。

出来れば黄竜は相手にしたく無いが……そうも行かないだろう……


 黄竜は、吼え終わると、勢い良くこちらに凶悪な口を大きく開きながら迫ってくる。

アスファルトをふみ砕きながらドスン、ドスンとその巨体に見合わない速さで走りだした。


「キース!ティファ!路地に入れ!

ここは僕が引き受けた!

本隊との合流地点に向かうんだ!」


「でも!リーンさん!あんな怪物を一人じゃどうしようもないです!

一緒に退避してください!」


「だめだ!逃げ切れるものじゃない!」


言っている間に黄竜が眼前に迫る。

僕はルールスペースの結界を強化し、三人の前に出て身構える。

黄竜はその結界ごと噛み砕くべく、その顎を大きく開いて襲い掛かってきた。


◇◇◇◇◇


 ティファは、迫りくる黄竜の恐ろしい姿に身動きが取れずにいた。

その私をキースが抱え、路地に飛び込む。

それに続いてもう一人の兵も飛び込んだ。


黄竜は物凄い勢いで通路を駆け抜けていく。

辺りは、踏み砕かれたアスファルトで煙っていた。

私は、その光景に我に返り、キースの腕を解いて、通路に飛び出る。


黄竜は、少し先で上空に顎を向けて何回も口を開閉をしていた。

その口にはリーンさんの姿が……

リーンさんは結界を張って、黄竜の噛み付き攻撃を防いでいるようだが、

その表情は苦しそうだ。


私は、思わず駆けだそうとしたが、キースが私の手を掴む。


「キース!放して!リーンさんが死んじゃう!」


「ティファ落ち着け!リーンなら大丈夫だ!

今の装備の俺達が行っても足手まといだ!」


「……で、でも……」


「さっき、武装解除してしまって、咄嗟に拾えた装備は剣ぐらいだ。

この装備じゃあの黄竜にはダメージは与えられない!

他の部隊と合流して、装備を整えるんだ。

本体と合流すれば、ダイナマイトや簡易レーザー砲がある!」


私は歯を食いしばり、顔を上げ、キースを睨んだ後、踵を返す。


「わかったわ……急いで本隊に合流しましょう……」


私の勢いに少しキースは驚いたが、頷き、私達は合流地点に向けて走り出した。


『リーンさん!まっててください!必ず援護に戻ります!』


私は、断腸の思いで合流地点へと向かった。


◇◇◇◇◇


 リーンは、一瞬で黄竜に噛み付かれていた。

最もルールスペースによる結界で黄竜の牙は、寸前で止まっていたが、

黄竜はそれでも、何度も結界ごと噛み砕こうと顎を開閉させる。

その圧力はそうとうなものだ。

僕は結界の範囲を最大値の半分にして結界を強化して耐える。

少しでも気を抜くと、結界が破られかねない圧力だ。


そして、何回目かの開閉の隙を突いて、そのアギトから、圧縮空気の噴射で逃れる。


 僕は、10mほど離れたところで、両手に持っていた2丁の銃に電磁レールを付与して発射した。

銃は7連装なので、先ほど6発づつ使用済みだが、まだ、弾は一発づつまだ余っている。

黄竜の皮膚はかなり硬そうだが、どのくらいの強度なのかた試す為、取り合えず、撃ってみた。


 弾は、黄竜の鼻面に連続して当たったが、速度があっても、重量に欠けるのか、

簡単に弾かれて弾はあさっての方向に飛んでいった。


僕は、苦々しく黄竜を見据えた後、銃を腰のホルスターに閉う。

『……やはり、相当硬い……高周波ブレードならば切り裂けるだろうが……』


僕は、一旦地上に降りる。

空中でもある程度動けるが、空中では俊敏な動作はし辛い。

圧縮空気を使って急加速は掛けられなくもないが、地上で戦うほど細かくは動けない。

何より、重力操作は能力消費が激しい。

この戦いが直ぐには終わりそうにない現状を考えると多用は禁物だった。


黄竜は、先ほどの攻撃を毛とも感じていない様子で、再度僕に突進してきた。

僕は、寸でで圧縮空気を噴射して、後方に飛びのき、胸の帯に装備していた杭を引き抜く。

そして、電磁レールを付与し、レールガンを連続で2発放つ。

音速を超えたソニックブームの轟音が「ガァガァァァァン」と鳴り響いた。


杭は、拳銃の弾丸より数百倍重量があり、しかもタングステン使用の特別製だ。


ダガーでは無く杭を使用しているのは、杭の方が制作しやすく、

弾丸として使用するにはこちらの方が適しているからだ。


杭は今度は黄竜の体に穴を穿つのに成功していた。


僕が狙いをつけたのは両足の腿に当たる部分。


直径、10cmほどは有るだろう風穴が両足に穿がたれ、

黄竜は体を維持出来ず、前のめりに轟音を立てながら倒れる。


僕は、油断なく、タングステン製の片手剣を鞘から引き抜く。

僕が、追撃を掛けようと一歩踏み出した時、黄竜は、即座に立ち上がり、噛み付き攻撃を再開しだした。

僕は、咄嗟に横に避けて、その攻撃をかわす。


杭を当てた箇所を見てみると、既に傷は塞がっていた。


『何て再生力だ』


すると、上空から高笑いが聞こえてきた。


「ふははははは、エーテルクォーツ3個分の魔法制御は伊達では無い。

黄竜は通常でも再生力は他の古代竜より優れているが、今のソイツは通常の数倍の再生力を持っている。

如何に貴様が攻撃しようと、直ぐ再生するぞ!」


僕は、舌打ちし、黄竜から距離を取る。


『……相当な攻撃か、連続した攻撃で切り刻む……か?

もしくは、ダニエルを狙うか?

もっとも、素直に狙わせてはくれそうに無いが……』


僕は、距離を開けながら、散発的にダガーのレールガンを放つ。

その度に一瞬、黄竜は倒れるが直ぐに立ち上がって、追いかけてくる。

しかも周りの建物などお構いなしで破壊しながら、一直線に進んでくる。


『これじゃ、いたちごっこだ。

こっちの能力や杭の本数にもは限りがある。

長引けば、やられるのは僕の方だ……』


◇◇◇◇◇


 僕は、いつの間にか、城壁間際まで、追い込まれていた。

目の前には、黄竜と上空に浮かぶダニエルが僕を見据えている。


「リーン・ウォーター・ペンドラゴン!観念してもらうぞ!」


「……それはどうかな?!」


僕がダニエルに言い返したと同時に町中から爆発音が鳴り響いた。

作戦開始時間だ!

斥候部隊の仕掛けた爆弾がバラスチカ各所で炸裂していた。


ダニエルがその爆発音に驚く。


「な!何!」


 僕は、ダニエルが爆発で気を逸らした隙に黄竜の股下に一気に駆けよる。

そして、腰に巻いていた金属ベルトの一本を引き抜く。


 このベルトにはチタンとニッケルで作られた形状記憶合金製だ。

形状記憶合金は、ある温度(変態点)以下で変形しても、

その温度以上に加熱すると、元の形状に回復する性質をもっている。

僕はベルトを加熱し、元の薄い剣へ戻し、左手に持った。


僕は、心の中で自分を鼓舞する為に叫ぶ。


『いっけぇぇぇぇぇーーーー!!!!』


 両手に剣を携えた僕は、黄竜の真下で自身を無重力状態にし、

体をコマの様に回転させ、さらに圧縮空気で回転を加速さる。

そして、両手の剣に高周波を発生させ、高周波ブレード化して黄竜の両足を高速で切り刻んだ。


「ブゥゥゥゥゥンンンン」

と高周波の耳障りな音が響き渡った。


黄竜の両足は無残に切り刻まれ、膝から下が消失する。

黄竜は堪らず、その場に「グガアァァァァァ」と叫びながら崩れ落ちる。


両足をズタズタ切り刻んだのだ、暫くは再生も追いつかないだろう。


 僕は、そのまま、黄竜の股下を駆け抜け、「ズッシャャャャーー」と靴底を擦りながら急停止する。

停止すると、左手の形状記憶合金製の剣が「ハキィィィィン」と音を立てて砕けた。

高周波と過剰な使用により、合金が耐えられなかったのだろう。


 僕は、その剣だったものを投げ捨て、即座に圧縮空気を噴出させ、飛び上がる。

そして、右手の剣を構えなおし、空中のダニエルに肉迫する。


しかし、こちらに振り向いたダニエルの手には拳銃が握られていた……


 僕はアイルゼン砦での司令官『メイソン』が使っていた異世界製の弾丸を思い出し、

体をひねって銃弾をかわそうとする。

かわしながら右手の剣を振り抜く……


 剣は僅かにダニエルの頬を切り裂く程度に留まっていた……

拳銃から発射された弾丸を僕はかわしきれず、弾は左肩口に当った。


……僕は痛みで顔を顰める。


 僕は、それ以上攻めきれずに、地上に落ちた……

落ち際に重力を制御し、片膝を付く形で息をつく。


『……やはり、異世界製の弾丸だ……持っているだろうとは思っていたが……』


僕は、左肩を抑えながら上空を見据える。


ダニエルは、僕を睨み銃口をこちらに向けていた。

そして、徐にバラスチカを見渡す。


バラスチカの各所では、爆発がおき、火の手が上がってる。

そして、東門から、エルウィン王国軍が攻めてくるのが確認できた。


「……やってくれたな……」


「……ああ、まんまと引っかかってくれて助かる……

あんたの目を僕に引き付けるのが僕の作戦だったからね……出来れば捕らえるか、

倒してしまいたい所だったけど、バラスチカが落ちれば問題ない」


最早、バラスチカ陥落は回避不可能だろう。


ダニエルは苦々しく僕を睨むのだった。

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