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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇青年期編~第三章~◇
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バラスチカ攻略戦~その六~

 ユーリ達が激戦を繰り広げていたその頃……

キースは、斥候部隊3百人での『バラスチカ』への潜入に成功していた。


潜入の一班の構成は三人一組で構成している。

光学迷彩担当1名、通信及び音消し担当1名、リーダー1名だ。

光学迷彩の魔法は光属性、通信及び音消しは風属性の兵士がそれぞれ担当していた。

ちなみにリーダーの属性は不問で比較的斥候任務に長けたものが担っていた。


1200人の潜入兵は400班に分かれて行動していた。


バラスチカの城壁内は、前線への補給の用意や爆撃機の発進準備に追われ、

どこも大忙しだった。


 俺達、斥候部隊の任務は、バラスチカの主要な場所に爆弾を仕掛ける事が任務だ。

俺達、潜入部隊は、『光学迷彩』を駆使し、順調に爆弾を仕掛けていく……


 俺達は忙しく戦闘準備を行っているウルク帝国兵を横目に爆弾を仕掛けた倉庫の入り口を後し、

次の爆弾の設置場所に急ぐ…

そしてすれ違うように資材を搬入するウルク兵に小声で囁く。


「……はっご苦労様!

ここには爆弾設置済みなんでどんどん運び込んでくれよ♪」


「ちょっとキース!

私達の声が聞こえないからって油断しないでよ!」


軽口を叩いた俺にティファが注意する。


「硬い事言うなよ。

どうせヤツラには聞こえないんだろ?」


「…そりゃそうだけど……敵地なんだから、慎重に行動してよ!

仮にもこの班の班長なんだから!」


俺は肩を竦めて了解の意を示す。


「はい、はい、了解、了解」


その俺の対応にティファは俺を睨みつけるが、急に真剣な顔になり、倉庫郡の物陰を凝視しだす。


俺は、その行動を怪訝に感じ、ティファの凝視する先を注視したが、俺には何も見えなかった。


「……どうしたんだ?ティファ?」


「……しっ!あそこに何か居るわ!」


「な……何?俺には何も……」


「『魔法レーダー』に反応が有るの!あの隠匿術……多分敵の隠密部隊……」


すると、俺達が注視している倉庫の影から一人の男が影からにじみ出るように姿を現した。

真っ黒な衣装に口元も黒い布で覆った長身の男だ。

体の線はかなり細身で、腕が異常に長かった。


男はこちらを睨んで声を発した。

「……こんな所まで、敵に潜入されているとは……

衛兵は何をしているのか……

おい!そこの貴様ら……目に見えないようにする術を使用しているようだが、

俺には無駄だぞ……

俺の闇魔法は生体感受に長けている……

おとなしく投降した方が身の為だぞ……」


俺はティファに小声で確認する。

「ティファ…ヤツの他にこの辺に敵は居るのか?」


俺達は今、倉庫裏の路地を抜けている。

俺が一見した限りではヤツの他に人影は確認出来ていなかった。


「……ここいら辺には、敵はいないわ……アイツ…よっぽど腕に自信があるのね……

こっちは三人だって言うのに……」


俺は油断無く相手を見据えて、光学迷彩を解いた。


「……ふっ…潔いな……だが、その面構え……戦う気満々か……」


「そっちこそ!

三対一で勝てると思ってるのかよ?!」


「……まあな……貴様らのようなひよっ子どもなら造作も無い……」


「はっ!舐められたもんだな!」


俺はそう言うながら腰の剣を引き抜きながら近づく。

相手も半身に構え、両手に短剣を持った。

隙が無い熟練者の構えに見える…


俺は内心冷や汗を掻きながら術の構成を行う……

後ろには、援護しようとレーザー銃を構える隊員と、風魔法練っているティファの気配を感じた。

仲間のレーザー銃が戦闘開始とばかりに放たれる。


敵はそれを難なくかわす!


「はっレーザーをかわすって!

どんだけだよ!」


俺は悪態をつきながら距離を縮める。

俺の剣はすんでの所で、敵の双短剣に阻まれ、つばぜり合いとなった。

敵は、不適に笑う。


「如何に威力がある武器でも狙っている所が分かれば避けるのは造作もないな…」


「はっ!相手の心でも読めるのかよ!」


「…ふっ…心を読むまでもないな…機先を読めばいいこと…」


『機先…攻撃の動作の始まりを読むって事か?

厄介だな……』


 俺は舌打ちしながら、両手で剣を押し込む。

敵は双短剣でそれを余裕で受け止めているようだ。

どうも、地力では相手の方が上のようだ。

俺は、このままだと、不利だと悟り、一度後方に飛んで、剣を構え直す。


 敵は悠々と短剣を構え直していた……

不意に敵の体が揺らめいたと感じると、いきなり間の前に短剣が現れていた。

俺は、咄嗟に剣でその短剣を払ったが、続く双短剣の連続攻撃を防ぎきれず、

腕や太股などを浅く切り裂かれていた。


致命傷では無いが、十数か所を切り裂かれ、かなり血まみれとなっている。

このまま戦い続ければ失血死しかねない…

早く決着をつけて、止血しないと……


だが、敵はそんな猶予を与えまいと、連続して攻撃を繰り出す。

仲間の兵士やティファは何とか援護しようとするが、それ程狭く無い路地とはいえ、

3人が並んで歩ける程度の幅だが、戦っている俺達を廻りこめる程は、広くは無い。


 二人は回りこむ事も出来ず、後方からレーザーや風魔法をで攻撃しようとしても

俺が邪魔でそれが出来ずにいた。


 俺は今一度、相手から距離を取り、ある魔法を発動する……

『ミラージュ・ボディ!』

すると、俺の体が三体現れる。


「……幻体か……見ない技だが……俺に通用するかな?」


「はっ!言ってろ!行くぞ!」


俺は叫び、三人の俺が敵を切りつける……

俺は勝ちを確信し、剣を切り下ろそうとし……

逆に左の肩口に相手の右の短剣が食い込んだ。


俺は思わず片膝を付いてしまう。

それと同時に3体の幻体は霧散し、俺の体が虚空から現れる。


そんな俺を敵は悠々と見下ろしていた。


「どうして、俺の位置が分かった?

俺自身は光学迷彩で見えなかったはず……」


そう、俺は幻体3体を作り出し、先行させて、

自分はその後ろから光学迷彩で身を隠しながら攻撃したのだ。


「……俺の闇魔法は感知能力に優れている……

貴様の本体の位置など丸分かりだ。

一般の兵なら倒せただろうが相手が悪かったな……」


俺は悔しさで、奥歯を噛締める……だが、ここで敵に捕まる訳には行かない、

俺は、腰のポーチに手を突っ込むと中に入っていた10個ほどの玉を敵に投げつけ、

自分は、その後、剣を取り直して、相手に肉迫する。


敵は、俺の投げつけた玉を難なくかわし、俺の一撃を右の短剣で弾き飛ばした。

弾き飛ばされた剣が、アスファルトの道に乾いた金属音をキンキンキンと鳴らして、転がった。


敵は、そのまま俺の首に短剣を突きつける。


「そんな、子供だましの目くらましが俺に通用すると思ってるのか?」


俺は、敵を睨みつけながら悪態をつく。


「……ああ……思ってるさ」


敵は俺の目線に何か気づいたらしく、後ろを振り返った……

その時、幾もの閃光が敵の体を貫いた!


敵は、幾つの穴を穿たれ、前のめりに倒れる。


何か硬いものがアスファルトに落ちる音が「コン、コン、コン」と10個程鳴り響いた。


こちらに転がって来た、直径1,5cm程の『玉』を俺が摘み上げる。

ビー球と同じサイズだ。


「これは、俺の奥の手『遠隔魔法石』だ

リーンは『ビット』だ!『ファンネル』だ!だとか言っていたが……」


「な……何?」

敵は、体にいたる所に黒く焦げた穴を穿たれ、血を吐き出しながら質問する。


「この『玉』は魔法石を球状に加工して、中に圧縮した風魔法と光魔法を付与してある。

風魔法は玉を浮遊させ、光魔法は、圧縮したレーザーを一回だけ撃てる。

最も、一回使用したら、風魔法も光魔法も使いきってしまうけどな。

操作出来るのも3分程度で、範囲は使用者の半径3m以内だから使い所が限られるが……

今回はドンピシャだったな!」


「くっ……只の悪あがきの目くらましなどと……俺の判断ミスか……」


そう言うと、敵の黒装束は、体から力が抜け、息を引き取った。


俺は、それを確認して、息を大きく吐き、その場で胡坐をかいて、座り込んだ。

ティファ達が駆よってくる。


「キース!大丈夫?!

まったく一人で無茶して!」


ティファは呆れながら素早く、俺の傷を止血し、治療していく。

もう一人の兵もティファが治療している以外の箇所を治療し始める。


俺は全身ボロボロだ。

だが、敵陣の中で悠長にもしていられない。

ある程度止血してもらった所で、俺は立ち上がる。


「すまんな、二人とも、もう大丈……夫…」

と言いかけた時、ティファが真剣な顔で前方を見据えていた。


「どうした?ティファ?」


その答えは、ティファからでは無く、前方から歩いてくる異世界人から発せられた。


「……君らは、連合軍の斥候部隊だな……おとなしくして貰うぞ……」


そうその異世界人が言うと、辺りの物陰や倉庫の屋根の上から続々と黒装束の敵兵が滲み出てきた。

その数、12、3人ほど…

すべて突撃銃を構え、銃口を俺達に向けている。

俺達は完全に囲まれていたのだ。


異世界人はゆっくりと言葉を続ける。


「私は、ダニエル・ノートン……ウルク帝国軍参謀長にして黒竜将軍だ」


俺は、息を呑んで、敵将を睨み返す事しか出来なかった。

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