表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇青年期編~第三章~◇
56/66

バラスチカ攻略戦~その五~

 ジェイコブ・スミスは、後方部隊の被害を無視し、全軍を前進させていた…

敵がこちらより遥かに遠い距離から狙い撃ちが出来るのであれば、その距離を潰し、

尚且つ動く事で狙いをつけさせない為、前進して、接近戦に持ち込むしかなかったのだが…


 どうやら、被害を出しながらだが、軍は徐々に前進しているようだった。

敵の雷撃も当初の精密さを欠き、兵糧や砲台を狙い撃ちできていないようだった。

だが、初撃の被害は甚大で、長期戦は最早不可能な状態となっているのも事実だ。


 左翼から『レーザー砲』を撃破すべく、装甲車部隊が遊撃を掛けている…

今のところ、順調に敵砲台に近づきつつある事が報告された。

どうやらあの砲台は次射に時間を要するようだ。

速度の速い装甲車であれば、接近して破壊する事も可能な筈だ。

動きも早いので、砲台では対応出来ないだろう…

私は、双眼鏡で、遠くで土煙を上げながら敵砲台に徐々に近づく遊撃部隊を確認する。


 もう直ぐ砲台に肉薄する…と思ったとき!

装甲車が『消えた』…私は慌てて、近くの通信兵に確認する。


「通信兵!装甲車部隊との連絡は取れるか!」


「はっ…はい只今!」


「し…司令官殿!装甲車部隊との連絡が取れません!」


「くっ!同行している装甲騎兵の連絡は取れるか!」


「は…はいっ…あちらも状況を掴みかねているようです…突然、装甲車が消え、

同行していた装甲騎兵部隊も敵陣で孤立して、最早脱出不可能!

防衛部隊の武運を祈るとの事です…」


私は、『レーザー砲』を睨みつける…どうやったかは知らないが敵が装甲車を撃退したことは明らかだった。

最早…全軍突撃の上、活路を開くしかない……

この突撃は最終手段だった……出来れば取りたく無かったが仕方が無い……

例の策略が上手く行けば…戦況も覆せる可能性があるだろう……


◇◇◇◇◇


エクス・カリバーンは、レーザー砲の眼前まで迫る装甲車部隊を見据えていた。

装甲車5台とその後に装甲騎兵が30騎ほど追随しているようだ。

装甲車からは絶え間無く機関銃が火を噴き、周りに少なくない被害を与えていた。

装甲騎兵も突撃用の銃を撃っているようだたが、それに対する被害は大して出ていない。

味方には防御に徹して、下手に攻撃しないように厳命していたお陰といえた。


 装甲車に恐れをなしたように味方の兵が装甲車を避ける…

倉庫車はその勢いのまま、レーザー砲に肉迫しようとした瞬間!

装甲車が消えた!

いや、正確には『落ちた』のだ。

予めレーザー砲の周りに仕掛けて置いた円形の穴に落ちたのだ。

地魔法で掘られた穴は高さ5m、幅5mのものだった…

小さなお堀といった感じだ。

この穴を光魔法で通常の地面を映し出し、一見、掘が無いように見せていたのだ。


 装甲車はその『堀』にものの見事にダイブしたのだ。

穴の壁にぶつかり、5台の装甲車は殆ど大破し、爆発を起こしている。

追随していた装甲騎兵の何騎かも勢いあまって堀に落ちていた。


 私は『装甲車』が堀に落ちたのを確認すると、指示を出した。

「ダイナマイト投下!

『装甲車』を完全に破壊するのだ!」


 私の指示で、兵達が火を付けたダイナマイトを堀の中に放り込む。

間を置かずに爆音と火柱が立ち上がった。

『装甲車』と言えど無傷では済まないだろう。


 私は続けて指示を出す。

「地魔法で堀を埋めよ!」


 私の指示で、レーザー砲の補助要員だった地属性魔法を使える者が堀をどんどん埋めていく…

これでは、生きていたら正に生き埋めだが…

これは戦争だ……不遇な死も仕方ないだろう……


 私は生き残った装甲騎兵を取り囲んで殲滅するように支持を出し、

レーザー砲の次射準備を再開した。


◇◇◇◇◇


 ユーリ・アルベールは、左翼の装甲車部隊の撃退の報告を受けていた。

ウルク帝国軍は、後援の部隊を撃破され、頼みの綱の遊撃部隊を失った。

最早、打てる手も無く、背水の陣で突撃を敢行しているように見える。


私は接近しつつある前線を見据えて後列の魔法攻撃部隊に指示を出す。

「広域魔法『ファイアー・ウォール』並びに『トルネード』発動!」


すると後列の魔法師部隊から火魔法と風魔法の複合魔法が発生する。

複合魔法『ファイアー・トルネード』だ。

一部隊火魔法師5名、風魔法師5名で行う、広域殲滅魔法が数十本敵前線に襲いかかる。


だが、敵からも対消魔法『ブリザード・トルネード』が放たれ、

火の竜巻と吹雪の竜巻は、共に掻き消えていた。


私は、その魔法の消滅を確認すると、今度は、弓矢部隊に攻撃の指示をだす。


「弓部隊!ダイナマイトに点火の上、攻撃開始!」


広域魔法が対消滅をした空間は一時的にエーテルが消え、魔法発動不可能な状態に陥る為、

物理攻撃しか使用出来なくなる。


ただ、空間外部から放たれた魔法は届くが、その威力は著しく減衰する。


私達はこの無魔法状態を利用したのだ。

矢にダイナマイトを付け、射れるようにして……


そして、今まさに魔法発動無効の空間に接敵しそうな敵前線部隊に向けてそのダイナマイト付き矢の雨が放たれた。


敵の前線部隊は斜めに盾を構えて降り注ぐ矢の雨を凌ぐ。

矢での死傷者は殆どいなかったことだろう……

しかし、足元に落ちた矢に付いていたダイナマイトが間を置かずに次々に爆発し始めた。

辺りに爆発の轟音と土煙、人や人だった物の部位が撒き散らされる……

連鎖する爆発の後には死屍累々たる光景が広がっていた……


しかし、さすが帝国兵、その装備は頑強で、一見すると前線の兵は全滅したかの様だったが、

倒れていた兵は、7割方は吹き飛ばされはしたものの再度立ち上がっていた。

そして、再突撃を開始しようとする……

その間に後続の部隊が倒れた兵を乗り越えて連合軍の前線に辿りつき、無理やり接近戦に突入する。


私はそのウルク兵の鬼気迫る突撃に寒気を感じた……

不意に斜め前で連絡係を務めるエリザを見ると彼女も同じ様子だ。


だけれど、私は指揮官をリーンに任されたのだ。

こんな事で怖気づいてはいられない!


私は混戦状態に突入した前線に指示をだす。


「前線に通達!無理をせず、防御主体で、攻撃せよ!

敵は疲弊している!持久戦に持ち込め!」


 予想より早い接近戦の突入に私は歯噛みをする。

予定では、接敵前にダイナマイトの爆発で怯んだ前線に対し、レーザー砲を打ち込む予定だった……

それが、思いの他、帝国兵の装備が頑強で、予想を下回る被害の上、敵の前進が止まらなかったのだ。

こうなっては、レーザー砲を打ち込む訳にも行かない。

私は、戦況の動向に注視し、次の行動を考えるのだった……


 しかし、そんな私の思案を遮るように、私のいる中央指令場の近くに爆発が起きる!

私は爆風で吹き飛ばされた。

爆発は指令場の右側で起こったようだった。

私は即座に起き上がり確認する。


煙がもうもうと立ち上がる中、私は信じられないような光景を目にした。


連合国軍の一角……右翼を守っていた『コートラッド王国』軍からダイナマイト付きの矢の雨が降り注ぐ光景を……

お読み頂きありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ